46章 半壊済みのミラージュ 未来の過去で集うハチゴウセン
Mr.シルバーが与える第一関門の試練をゴーストのヘッドチェンジを使わずに突破してみせた華凛たち。
現在は御頭商店街から強制的に転移されて真っ暗な空間を漂っていた。
「やったね、華凛!この調子でどんどん解明して行っちゃおうよ!」
「そ、そうだね…!」
華凛の横でゴーストが讃えてくれたが、華凛は自分のスカートを抑え隠すので必死だった。
「うむ、一回目の試練でヘッドチェンジを消費せずに自力で解決してみせるとは恐れ入った。これは後に大きな結果をもたらすであろうよ。」
颯が誇らしげに腕を組んであぐらを掻いて漂っていた。
颯はミニスカートがひらひらしているの気にする素振りを全く見せないので素子が慌てて見えないようにガードしていた。
同じくミニスカートのミストは八雲がガードに回っていた。
素子と八雲はロングスカートを履いて来たので問題なかった。
「ま、まぁ、問題やのはMr.シルバーが後何回試練を与えてくるかやね…!」
「後二回だよ。」
素子の疑問にミストが即座に答えた。
「…? 何でわかったの、ミスト?」
「私、あいつと融合仕掛けた時に思考が流れ込んで来たから…。」
「マジか。あれだな、もうテストの答案用紙が手に入ったものではないか!」
颯はミストの言葉を聞いて目を輝かせて喜んだ。
「残念だけど、明確にじゃない…。断片的にあいつの記憶が流れ込んで来ただけ。」
「なるほど、それで二回する気なのはわかったと…。わかった。ありがとう、ミスト。」
それでもMr.シルバーの思惑に関する事が少しでもわかった事は良好だった。
華凛はスカートを左手で抑えながら右手でミストの頭を撫でてあげた。
「せやけど、うちら何時までこうやって漂わせられるんやろ?」
「全くだな。レディを待たせるとは紳士として恥じる行為だぞ、老紳士殿。」
「…何だったら、こっちから仕掛ける?」
ミストは懐から紙を一枚手に取った。
「ミスト、それは…?」
「ふふっ、あいつとの戦闘でね。あいつの身体を構成する紙の一枚をスってたの。」
確かにミストはMr.シルバーとの戦闘の際、懐に何かを入れていたのを華凛は見ていた。
「ミストちゃん、大活躍でしょうや。」
「いや、仲間のスリを頼りにする探偵ってありなの…?」
「斬新ではないか、探偵と窃盗犯のコンビとな。わたしぁっ、それで物語を綴れそうだぞ。」
颯はウキウキしながら笑みを浮かべていた。
「この紙、本人の元に戻りたがってる…。これをコンパス代わりにすればMr.シルバーに対して先手を打てるかもしれないよ?」
「やれやれ、本当に手癖の悪い子だな、君は…。」
「…!? Mr.シルバー!?」
華凛たちは周りを確認するがMr.シルバーの姿は見えず、声しか聞こえてこなかった。
「すまなかったね、待たせて。紳士として恥ずべき事かな、颯君?」
「ぐぬっ、聞いていたのか…。」
颯は顔を少し青ざめて腕を組んでいた手で自分を抱きしめた。
「君たちが今から体験するのは未来の過去。それを見て君たちは一体どんな反応をするのか楽しみだよ。」
「未来の過去…? …!? まさか、オマエ…!?」
「それでは、第二関門のカーテンの幕開けだ…。見た後、君たちの記憶には決して残らない『半壊済みのミラージュ』…。そんな意味なき空間で君たちが見出す在り方を見せてもらうよ。」
「待…!?」
ゴーストが何かを言おうとしたが、ラゴウがいきなり姿を現した。見慣れぬ頭をつけたラゴウが目を光らせると突然光が広がった。
華凛たちは突然の眩しさに襲われて急いで両腕で閃光防御の姿勢を取った。
「うっ…?」
華凛は両腕を下ろし、ゆっくりと目を開く。
「…? 何ここ…?船の中…?」
華凛は気を落ち着かせて周りを確認した。暗くて特に何もない通路だった。
「…!? 宇宙…!?」
右を見ると宇宙が広がっていたので華凛はびっくりした。よく見るとガラス越しで宇宙が見えていた。
「このガラス、大丈夫…?空気漏れたりしない…?」
「大丈夫そうだぞ、華凛。このガラス、割と頑丈そうだ。」
となりに颯が立っていて、右手で軽くガラスに触れようとしたら透けて通り過ぎた。
「おぉっ!?びっくりした…!?どうやら、ここの物には触れられないようだな…。」
颯は続けて壁などにも触れようとしたが同じく透けた。
素子たちも不思議そうにこの通路を見ていた。
「みんな、大丈夫だった!?」
「平気や、華凛ちゃん。全員何ともなしや。せやけど、ここは一体どこなん?」
「どうやらここは何かの宇宙船の中みたいでしょうや…。」
「う、宇宙船?」
「扉がたくさんあるでしょうや。多分、ここは居住区だと思われるでしょうや。」
「どれどれ…。」
ミストが扉に頭を突っ込んだ。華凛は透けるとはわかってはいても驚いた。
「…駄目。室内は見られないみたい。」
ミストは頭を扉から引っこ抜いて華凛の方を向いた。
「しかし、我ら御頭ミステリー研究会も遂にギャラクシーデビューか…。随分遠くまで来たものだ…。」
「呑気やねぇっ、颯ちゃんは…。」
「変わらぬ颯ちゃんらしさでどこか頼もしいけどね。ね、ゴースト?」
華凛はさっきからだんまりなゴーストを気にかけて声を掛けた。
ゴーストは怯えているように見えた。
「まさか、ここは…!?」
「ゴースト、どうしたの…?まさか、この場所を知ってるの…?」
「アルウス~!おつかれぇ~っ!」
ゴーストの本名が急に呼ばれたので華凛は思わず驚いた。声が聞こえた方を振り向くともう一人のゴーストが誰かを連れて歩いて来た。
「えっ!?ゴースト!?でも…?」
もう一人のゴーストは今と見た目が違っていた。どこか将軍のような印象を受ける姿をしていた。
「スランもよく頑張ってたよ。」
「えへへっ、そう?うれしいな。」
もう一人のゴーストと一緒にいるマーメイドのような鎧を纏った人物は無邪気そうな感じでゴーストと仲が良さそうだった。
「二人共、ここにいたのか。そろそろハチゴウセンのゴウ=カイが始まるぞ。」
「あ、ディアス。」
今度はまるでコウモリのような鎧を着た人物が姿を現した。
「えーっ…。わたし、まだアルウスとあそびたいな。ね、アルウス?」
「ねぇ~っ?」
アルウスとスランは互いに向かい合って何度もハイタッチをした。
「やれやれ…。ハチゴウセンの自覚がなさ過ぎるぞ、二人共…。」
「イイジャナイカ。ソコガ、スラントアルウスノイイトコロダ。」
「ラクべス。」
「うおっ!?何だっ!?」
颯の後ろに急にカブトムシのような見た目をした巨体の鎧戦士が姿を見せた。
「…!? まさか、十糸の森の巨大カブトムシ…!?」
華凛たちが十糸の森で初めてMr.シルバーと会った際、元々は銀髪の幽霊少女と忍者、巨大カブトムシの謎を調べるはずだった。
その内の一体である巨大カブトムシの正体がこのラクべスと呼ばれる人物なのかもしれないと華凛は思った。
「とにかく、行くぞ。ダジーラクが待ってる。」
「は~い…。いこっ、アルウス。」
「うん!」
もう一人のゴーストはスランたちと共にしばらく歩き、大きな扉を前に立った。扉が開かれると真っ暗な空間に赤いライトが照らされた部屋が姿を見せた。周りには小さな滝がいくつかあった。
赤いマントの黒騎士が中央で背中を見せて立っていた。
「ダジーラク。スランとアルウス、ラクべスを連れて来た。」
「うむ、ご苦労。ディアス。」
ダジーラクと呼ばれる黒騎士は振り向いてディアスたちを見た。
「それではこれよりゴウ=カイを始める…。集え。今ここにありし、ヴァエンペラのハチゴウセンたちよ。」
ダジーラクがマントをたなびかせ、右手を前に出すとある者は空から、ある者は地面から、ある者は水の中から出現した。
「シユーザー、ただいま到着〜。」
地面の光の輪から出現したはシユーザー。胸の顔にだけ眼鏡をかけた紫の研究戦士だった。
「ダーバラ、待ちくたびれたわ。」
空から出現したはダーバラ。胸に鳥の頭、大きな翼をつけた真紅の女性戦士だった。
「ライガ、とっくに来てるぜ?」
いきなり姿を現したのはライガ。胸に獣の顔、両腕に大きな爪をつけた青き戦士だった。
「レイドルク、推参。」
天井から腕を組んで着地して来たはレイドルク。胸と頭が竜の顔をした闘士だった。
「ヴァエンペラの元へ集いしハチゴウセンたちよ、よくぞ参った。よき、頭を外すがよい。」
もう一人のゴーストたちは頭を外し、それぞれ自分の専用の柱に背をもたれかかった。
「これってまさか…!?ゴーストの過去、なの…!?」
華凛たちは柱に寄っ掛かっているデュラハンたちを見て困惑した様子を見せた。
ゴーストは辛そうにしているのが華凛にもわかった。
ダジーラクはマントをたなびかせ、玉座に座った。
となりには鎧姿ではなく、人間の見た目をした人物が控えていた。
「それではゴウ=カイを始める…。論する題目は他でもない。我らのラックシルベ探しを妨害する邪魔な存在…。『ディサイド・デュラハン』に関してだ…。」




