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41章 本屋で探せ、きっかけの論理!

 華凛たちは商店街内を走り、本屋に辿り着いた。

 店内に入ると再現されたに過ぎない本屋のため、電気は点いているのに客どころか店員すらもいないという何だか不思議な光景が広がっていた。


「ここが華凛たちがMr.シルバーと初めて会った場所?」

「そうだよ、ミスト。」

「最初は人の良さそうなご老体であったな…。私が名残で今でも老紳士殿と呼ぶくらいだ。」

「あれは初対面やったし、今思えば猫被ってたんやろうねぇ〜っ…。」


 颯と素子は腕を組んで共に同感という事で頷き合った。


「華凛さん、何か閃くでしょうや?」

「うん。Mr.シルバーはさ、ロボットを造れる科学者ではないんだよ。じゃあ、どうやったらラゴウみたいなデュラハンを造れるのかって話なんだけど…。」

「わかったで、華凛ちゃんが言わんとしとる事が!Mr.シルバーは本屋でロボット工学に関する本を探してたんや!」


 素子が華凛の考えている事がわかったので指を鳴らしてみせた。


「その通り!」

「だが、華凛。ロボットの…それも開発に関する専門的な本なんて本屋にあるのか?」

「ないよね~っ、なかなか…。私さ、Mr.シルバーに封筒を返してもらった際に話したんだ。『目当ての本は見つからなかった、普通の本屋じゃない本かもしれないね』…って。」

「なるほどでしょうや…。しかし、その発言だとMr.シルバーはこの本屋では何も買わなかったって事になるでしょうや?」

「いや、わからんぞ?あの手癖の悪い老紳士殿の事だ。買わないフリをしてこっそり体内に本を取り込んだのかもしれんぞ?」


 颯は眉をしかめて右手の人差し指を立てながら嫌そうに発言した。


「Mr.シルバーの見た目に変化とかはなかったの?紙はそんなでもないけど、本って食べると結構重たいんだよね。すぐにお腹いっぱいになるから。」

「見た目…。」


 華凛はミストに言われて四年前のMr.シルバーの服装を思い出した。


「…! 革靴!そうだ、私、Mr.シルバーに突っ込みを入れた!革靴が黒から茶色になってるって事に!」


 華凛は当時、その事がきっかけでMr.シルバーに興味を持たれ、名を名乗って来た事を思い出した。


「革靴が変わる…でしょうや?」

「確かに、華凛ちゃんは四年前も革靴の事を気にしとったな。せやけど、革靴に何か意味でもあるんやろうか?」


 Mr.シルバーの変化点は思いついたものの、華凛たちはしばらく考えても何故革靴が変わっていたのかはそれらしい答えに導けなかった。


「うーん…?何か、何かないかな…?」


 華凛は腕を組んで右足をぱたぱたして床を何度も踏み、何か閃きに関するものがないかをきょろきょろして懸命に探す。


「気晴らしにテレビでも見るか、華凛?」

「颯ちゃん、今そんな場合やないやろ…。そもそも映るん?」

「テレビ…。」


 華凛はテレビと聞いて何か思い出しそうになった。

 颯はリモコンを手に取り、スイッチを入れると普通に映った。


「おぉっ、映ったぞ!さすが老紳士殿、芸が細かい!」


 颯は嬉々としてリモコンで番組を次々と切り替えていく。


「ほんまや…。しかもちゃんと四年前の番組やし…。」

「当時の再現への力の入りようは彼のプロ意識の高さが感じ取れるでしょうや。」

「そうだ、ニュースだ…!」


 華凛は今のやり取りで完璧に思い出した。喜びで思わず右手の指を鳴らした。


「何だ?ニュースが見たいのか、華凛?」


 颯はリモコンでニュース番組を映した。


「いや…違うよ、颯ちゃん。『羽島大我』博士が行方不明になったニュースは私が家に帰った後に見たニュースだったから…!」


 華凛は四年前にスマホのメモ帳機能に書いた文章を改めて見る。

 四年前、華凛が商店街から家に帰った後の晩御飯を食べている最中にテレビで流れていたニュース。それが羽島大我博士が荷物を置いて博物館から失踪したニュースだった。


「華凛さん、それは一体誰でしょうや?」

「あの日、御頭(おがしら)博物館で起こった行方不明事件…。当時、式地博士は博物館で人と会う約束をしていたと言っていた…。あの後、私たちは式地博士とまた出会えなかったから確認はできてないけど、式地博士が会う約束をしていた知人って言うのは恐らく羽島大我博士の事なんじゃないかな?Mr.シルバーは式地博士の封筒だけじゃない、ラゴウを造るためにはその博士が持っているものも必要だったんだよ。」

「羽島博士を拉致したんはMr.シルバー…。確かに、式地博士がロボットに関する書類を持ってその人に会いに来たんやったら、その羽島博士って人も何かしらのロボットに関する書類を持って会いに来てたかもしれへんな…。」

「いや…書類とは限らないよ、素子ちゃん。それなら、式地博士から封筒を取った手口と同じ方法を取ればいいのにMr.シルバーはそうはしなかった。羽島博士を拉致しないといけない理由があったんだよ、Mr.シルバーには。」


 そう言うと華凛たちは円陣を組んで共に考え合った。こうしていると、不思議と何かアイデアが出そうな気がした。


「うーん、どうしよう?第一試練でヘッドチェンジを使うのは避けたいんだけどなぁ~っ…。切り札みたいなものだし…。」

「…ねぇ、華凛。」


 ゴーストが話し掛けて来た。何だか神妙な面持ちのように見えた。


「どうしたの、ゴースト?何か気づいた事でもあるの?」

「…その博士、もしかしたら『特殊な才能』を与えられた博士の一人なんじゃないかな?」


 ゴーストの言葉を聞いて華凛たちはよくわからなかったのでみんなで?マークを浮かべた。


「特殊な才能…?」

「…正直、今の華凛たちの存在を揺るがす程の真実で…。全部話しても到底理解できないものなんだけど…。」

「そ、そんなにすごい代物なの?」


 華凛たちはゴーストが一体何を話そうとしているのか急に恐ろしくなってきて息を呑んだ。


「だ、大丈夫!一部分だけ伝えるから…。その人はね、とあるきっかけがあったらディサイド・デュラハンに関する知識が開花する人物の一人だったんじゃないかな、って思って…。」

「ディサイド…。ゴースト、それは…。」

「うん、もう無くなってしまった未来…。ボクにとっては過去からの知識だよ。その人が知識を開花できたなら、問題なくデュラハンを造る事ができると思う。」


 華凛たちはゴーストが話してくれた事を取り入れて改めて話し合う事にした。


「Mr.シルバーもゴーストと同じ未来からやって来た人物…。それでMr.シルバーはその人が特殊な才能を持っている人だって知ってたからこっちの世界で拉致したって事?」

「うん、ボクは羽島博士とは会った事がないから確証はないんだけど…。」


 華凛はゴーストの未来の助言を聞いて改めて思考に入った。


「もし、Mr.シルバーがミストと同じ式神だとしたら…。羽島博士から引き出した知識を書いた紙を自分の身体に取り込んで自分の知識のように扱える訳か…。それでラゴウを造った、と…。」

「でしょうや、華凛さん。同じ式神と言っても個性があるでしょうや。Mr.シルバーができる事がミストちゃんにもできるとは限らないでしょうや。」

「そうだよね…。Mr.シルバーはモリアーティ、ミストはジャック・ザ・リッパーを元にしているから能力には差があるかも…。」

「よし、私が聞こう!おい、ツインテロリ。お前は身体を鳩にしてバラバラになれるか?」

「できる訳ないでしょう。」

「顔を変えたりとかは?」

「できません。」

  

 八雲の言う通り、式神の能力にも個人差があるようだ。


「それなら何ができると言うのだ?」

「気配を隠して移動したり、殺…。」

「そ、それ以上は言わなくていいよ、ミスト…!」


 華凛は大慌てでミストが言おうとしている物騒な話を止めた。


「…そうか、Mr.シルバーはモリアーティ教授を元にしていると言ってた…。もしかしたら、モリアーティ教授が得意な事がこの事件に関係しているのかも…。」

「なるほど、式神の出力元の能力を頼っての犯行という事でしょうや。」

「ほなら、モリアーティ教授の得意な事って…?」

「犯罪界のナポレオンと称される程の決して自分の手を汚さない完全犯罪、若干二十一歳で二項定理っていう論文を書いた程の数学教授、変装や演技、相手の心を揺さぶって弱みにつけ込む心理戦…ってところかな?」


 華凛がモリアーティの特徴を述べたら颯と素子が拍手して来た。


「いや、私の知識なんて大した事ないから…!」


 華凛は照れながら両手を左右に振った。


「でも、モリアーティ教授ってシャーロック・ホームズシリーズの最後の方に出て来たキャラクターだから、あまり逸話がないんだよね…。」

「ほなら、式神の元になったとしても具体的な特殊能力はそんなにあらへんって事?」

「逆に少ないからこそ、能力に自由度が高いかもしれないでしょうや。」


 素子が言う事も八雲が言う事も一理あるので華凛は頷いてみせた。


「しかし、完全犯罪か…。現に私らも今推理に大苦戦しているし、それも元のモリアーティの力によるものかもしれんな…。」

「その能力を引き出しているMr.シルバーも大したものでしょうや…。」

「でも、それが逆に弱点かもしれない…。元の人物に引っ張られ過ぎてるとか…。昔の知識が現代でも通用するとは限らないという事もある…。」

「とにかく、他にもモリアーティ教授のやった事を調べてみぃへん?ちょうど、ここ本屋やし。古本屋もあるで?スマホで調べてもええし。」


 確かにモリアーティ教授と言っても中には著者によってアレンジされているものもある。素子の言う通り、調べてみるのも十分ありだと華凛は思った。


「そうだね…。ここが再現された世界とは言え、売り物の本を勝手に読むのはちょっと気が引けるけど…。やってみよう!私たちが今、間違いなくやっちゃいけない事は諦めてしまう事だと思うから!そんな弱気な姿勢じゃ、事件は解決できないし、何より謎は迷宮入りになっちゃうから…!」


 華凛たちはそう言うと一旦解散し、各々で羽島博士やモリアーティ教授に関する事を調べる事にした。

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