39章 第一関門、開始 遡れ、四年前の事件
「アルジェントルランド…?」
華凛たちは急に変わった周りの風景を確認するために辺りを見渡した。
あまり長く見ていると目が痛くなりそうな赤い大地に赤い空が広がっている。
「おぉっ!?何だ、あれ!?」
「ま、まさか人魂なん…!?肝試し大会でも見た事あらへんよぉ〜っ…!」
颯が指差した方向には三つの人魂が浮遊しており、それを見た素子が怯えて見せた。
「幽霊なら普段からボクを見てるじゃない?」
「ゴーストちゃんは愛嬌あるし、怖くないからお化けとは別や!」
素子はデバイスから声を出したゴーストに突っ込みを入れた。
「Mr.シルバー、一体何なの?ここは…?」
「それは言えないな、華凛君。君たちが御頭ミステリー研究会を今後も名乗っていくのならば、自分たちで体験し、追究して知るべきだ。アリアス君もこの場所は知らないだろうしね。」
華凛はMr.シルバーにこの場所について尋ねてみたが、聞いても答えてくれなそうだった。
「まるであの世に来てしまったみたいでしょうや…。」
「老紳士殿、あの銀の城がアルジェントルランドとやらなのか?」
今度は颯がMr.シルバーに尋ねる。右手でこの赤い世界では浮いている銀の城を指差した。
「そうだ、あそこで君たちには課題を受けてもらう。」
「アルジェントルって何?」
ミストが首を傾げ、続けてMr.シルバーに質問を投げる。
「私が考えた造語だよ。アルジェントはラテン語で銀という意味さ。そこに英語のジェントル、紳士の意味も込めた私の土地。それがアルジェントルランドさ。」
「ほう?ラテン語と英語のミックスか。なかなかの厨二ネーミングセンスではないか、老紳士殿。」
「それは褒められてるのか貶されてるのか…。」
Mr.シルバーは腕を組んで不機嫌そうにした。
「いや、私に言わせればまだまだね!私だったら、もっと長い名前にする!ゴージャスとか、デンジャラスとか、ベリーとか!その方が凄さが伝わるから!」
ミストが目をキラキラさせながらMr.シルバーにネーミングアドバイスをした。
「君のネーミングセンスには勝っていると思いたいな…。」
「もっとシンプルな方がええやん。シルバーランドとか。」
「いや、それだと介護的な意味や、健康ランドみたいになるから避けたかったのだよ…。」
「「「…あーっ…。」」」
華凛たちは息ぴったり納得した。ミストだけは健康ランドの意味がわからないようで?マークを浮かべていた。
「皆さん、ネーミングの話題はここまでにして、本題に入ろうでしょうや。」
「そうだな、つい華凛君たちのペースに乗っかってしまった…。君、語尾は変わってるが、割と常識人なのだな…。連れて来て良かったかもしれない…。」
Mr.シルバーは何故か八雲に対して高評価をして見せた。
「八雲先輩は割と面倒見がええんやよね。年下相手やと責任感が生じて、しっかり者になるっちゅうか。ええ先輩やとうちは思うで?」
「はい、素子様…!お褒めに預かり光栄でしょうや…!」
「素子ちゃん絡むと変になるけどね、八雲先輩…。」
八雲は素子の右腕にしがみついて嬉しそうにしていた。
「個性的な君たちが作り出す緩いノリに付き合ってると話が進まない…。早くシルバーランドに向かおう。」
「強引に話を進めたな、老紳士殿。」
華凛たちはMr.シルバーの後について行き、シルバーランドを目指した。
「そうだ、華凛君。ちょっとしたサービスだ。君にプレゼントをあげよう。」
Mr.シルバーは素早い動きで何かを右手で放り投げた。華凛は慌てて両手でキャッチする。
「これって私が昔、白霊の寺で拾った…。」
色は白で違うが、ゴーストと初めて会った際に撃退した鎧武者が落とした綺麗な石に似ていた。
今は颯のデュエル・デュラハンを実体化させるための石付きのストラップに変わってしまった石に。
「君がそのデュラハン・ハートと前に私が渡した糸を覚醒させ、デュエル・デュラハンの実体化を成功させる。それがこの課題のクリア条件の一つだ。大事にしたまえ。」
「そんなのがあるんなら、初めて会った時に渡せば良かったではないか、老紳士殿。」
「あの時は持ってなかったのだよ。最近見つけてね。」
「最近…。まさか、八雲先輩の家から盗んだカラクリ人形に…?」
「さて、どうだろうね?」
華凛は眉を強め、鞄にデュラハン・ハートを入れた。
「せや、みんな!うち、今日は気合い入れてな!小遣い奮発して救急箱を二つにしてみたんや!これならうちらは無敵やで!」
素子は嬉しそうに鞄から二つ重ねた救急箱を両手で持って見せた。
「ついに二箱になったか…。」
「遊園地で遊ぶ金を削ってまでの献身的な姿…!やはり、素子様は令和のナイチンゲールでしょうや…!」
「何事も備えあれば憂いなしや!」
呆れ気味の颯と感極まる八雲は何だか対照的で華凛は乾いた笑いを上げた。
「あなたたち、さっきはこの世界に怖がってたのに何だか楽しそうね。」
「それ程、我らが冒険向きのパーティという事だよ、ツインテロリよ。」
颯は満足そうに腕を組み、頷いてみせた。
「確かに頼もしき順応力の高さだね…。」
みんなそれぞれ、普段と変わらぬマイペースぶり。この六人なら今後どんな困難が襲い掛かって来ても物怖じせずに何とかできてしまいそうな、そんな自信が不思議と華凛の胸中に湧き上がっていた。
「さて、着いたよ。ようこそ、我がアルジェントルランドへ。」
Mr.シルバーが振り返り、紳士的な挨拶をすると同時にアルジェントルランドの門はライトが派手に照らされた。
まるで地獄のようなこの真っ赤な世界で更にアルジェントルランドは浮いた存在になったように見えた。
「さぁ、御頭ミステリー研究会の諸君!勇気ある一歩を踏み出したまえ!」
「…みんな、行くよ!」
華凛がそう言うとみんな頷いて見せた。門を通り過ぎた途端、視界が歪み、別の場所に移動した。
「…? ここって…?」
「御頭商店街でしょうや…?」
華凛たちは急いで周りを見渡すが、間違いなく御頭商店街だった。
「何だ?もう帰って来たのか?」
「いや、ここは四年前の御頭商店街を再現した場所さ。」
「四年前…?まさか…!?」
「そう、私と君が初めて会った時の事件さ、華凛君。」
四年前、華凛たちが御頭ミステリー研究会として親睦を深めるために遊びに来た商店街。
そこで大事な書類を失くした式地博士と出会い、捜索する事になった。
「華凛君、あの頃の君は私から封筒は取り返してみせたが、私が何故封筒を欲したのかは知らずにこの事件は終わった…。この解決したようでしていない未解決事件を解決させる…。それが君たちに与える第一関門さ。」
「…面白いじゃない。」
「華凛ちゃん?」
武者震いをする華凛を見て素子は心配そうに見た。
「あの事件は私としても何だかもやもやした気持ちが残ったままだった…!Mr.シルバー、ミステリアスなあなたに対してね…!」
「そうだ、華凛君。この事件は私と君にとってのファーストコンタクト…。この事件の真相を解き明かさない限りは…。」
「お話にならないって事ね!それをわざわざすっきりさせてくれるなんて、気が利いてるじゃない、Mr.シルバー!」
華凛は右手でMr.シルバーを指差してみせた。
「いいでしょう!このファーストミッションというミステリー、私たちが受け持ちます!見てなさい、Mr.シルバー!私たちが必ずSolve the caseに導いてみせるからっ!」
華凛は右手を自分の胸に当てて真剣な眼差しで悪どい笑みを浮かべるMr.シルバーを強く見つめて見せた。




