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32章 銀の気配

 今度こそ、問題を起こしていた怪物は天衣無縫の館から姿を消した。かなえが目を覚ました後、華凛たちは怪物が現れた経緯を紫煙家の皆さんに詳しく話した。


「みんな、ごめんなさい…。私が日頃抱えていた不安がこんな形で迷惑をかけるなんて…。」

「いや、いいんデハナイカ。私たちも仕事や拘りに夢中になってしまって、家族との触れ合いを疎かにしてしまったデハナイカ。」

「母さん、俺の事をそんなに思ってくれてたデスーカ…。ごめんデスーカ…。」


 紫煙家の人たちはかなえ一人を責めるのではなく、家族全員で今までの在り方を反省していた。


「これは式神の暴走によるものだったという事は、同じく陰陽師である私やお婆ちゃんも抱えたストレス次第では似たような騒ぎを起こすかもしれないでしょうや。」

「その通りでノーチラス。今回の件は紫煙家全体の戒めとして、心に刻んでおくノーチラス。」

「そうすれば、式神暴走の再発防止になるチョーヤ。」


 華凛たちは紫煙家のみんなを見て内心、冷や冷やしていたが、険悪なムードにはならなそうで安心した。


「俺、この館に洋風を取り入れようという考えは捨てるデスーカ。母さんに心配を掛けるような提案なら、しないデスーカ。」

「火縄…。」


 火縄は下を向き、その場でしゃがんだ。


「いや、それは違うデハナイカ、火縄。さっきも言ったデハナイカ。我々は拘りに夢中になっていたデハナイカと…。」

「父さんデスーカ…。」


 超影は火縄に近づいてしゃがみ、右肩に手を置いて励ました。


「外国の方は忍者や侍をかなり好むと聞く。日本の伝統を伝えるための本来の和風な忍者もありだと思うが、洋風を取り入れた忍者も外国の方は親しみが湧いていいと私は思うぞ?」

「おぉっ、勇者侍殿の言う通りデハナイカ…!助言ありがとうデハナイカ…!」

「ふっ、勇者侍は常にアフターケアを忘れないのさ…。」


 颯は得意げに右のツインテールを手でパサッと舞わせてみせた。


「そういう事デハナイカ、火縄…。今日からお前とちゃんと話し合い、今後の館の方針を共に決めようデハナイカ。」

「父さんデスーカ…。」


 火縄は立ち上がり、超影と共に頷き合った。


「かなえ、すまなかった…。お前一人に家事を任せっきりにしていた私たちにも落ち度はある…。これからは家族みんなでかなえの家事を手伝おうデハナイカ。」

「あなた…。」

「よぉ~し、ノーチラス!今日から新たな天衣無縫を目指して、みんなで頑張っていくノーチラス!」

「えぇ!」「でしょうや!」「デハナイカ!」「デスーカ!」「チョーヤ!」


 色んな語尾が飛び交いながら、紫煙家の人たちは一致団結し、新たな天衣無縫の館を目指す兆しを華凛たちに見せてくれた。


「今日もめでたい日デハナイカ!晩御飯は豪勢に行こうデハナイカ!」

「みんなで晩御飯を作ろうデスーカ!」

「よぉし、素子ちゃん、颯ちゃん!私たち御頭ミステリー研究会も手伝おう!」

「わかったで!」「承知!」


 かなえを手伝うために火縄と超影は共に晩御飯を作りに行った。紗和は館の入り口に戻り、華凛たちは暴走した式神が荒らした館を片付けるために八雲と抜刀と共に片付けに行った。

 主な戦いの場になった忍者コーナーの片付けを中心にしていく。


「今日もさ、帰りが遅くなる事を家に連絡しないとね。」

「せやね。事件も解決して何だかすっきりしたわ。」

「んだんだ。」


 華凛たちは安心感を抱きながら清掃をしていく。


「だが、まだまだ荒削りで、反省点も多い。まぁ、及第点と言った所だな。」


 聞き覚えのある声が華凛の背後で聞こえた。急いで後ろを振り向くとコートを着た男が立っていた。


「あなた、昨日お土産屋コーナーにいた客…。」

「そう。しかして、その実体は!」


 男はコートを派手に脱ぎ捨て、Mr.シルバーが姿を現した。


「うわっ…老紳士殿だ。」

「ふむ。良い反応だ、颯君。嫌われているようで何よりだよ。」

「何でここにおるん?まさか、この事件の原因は…?」

「…いや、それはないよ、素子ちゃん。だって、私たちがMr.シルバーと会ったのは四日前の事。この怪物騒動は一週間前から起きていた事なんだから。でも、この場にMr.シルバーがいると言う事は関係がなくはないという事でもある…。」


 華凛は真剣な目でMr.シルバーを見つめた。


「…良いね。クールな推理だ、華凛君。今回は私の私用でね。君たちがここに来たのは本当に偶然なのだよ。」

「Ms.ホワイトミストっちゅう奴はMr.シルバーの仲間なん?」


 素子が気になる事をMr.シルバーに聞いてくれた。


「いや、私も今回の騒動の一部始終を見ていたが、彼女は私と全く関係がない。ただの迷い猫だろう。」

「そうなん?」

「私用って何?」


 華凛は続けてMr.シルバーに質問を投げた。


「それは言えないな、華凛君。私にも私の仕事があるのだよ。」

「カラクリ人形でしょ?」


 華凛が即座にそれを言うとMr.シルバーは眉を少し動かした。


「…さて、どうかな?それはさておき…。素子君、おめでとう。君も十糸(といと)姫の糸を覚醒してみせた。後は華凛君だけだな。しかし、残念だったな。君が奇策として私に触れさせたレアフレームだったが、見事に振り回されてしまうとはね。」

「まさか勝手に発動するヘッドカードだとは思わなかったからね…。次はこうは行かない。」

「うむ、初見殺しというやつだな。」


 颯が腕を組んで頷いた。


「良いタフさだ。ならば、サービスにもう一つ、君たちに駄目出しをしてあげよう。ゴーストと組む事で君は人が起こした事件ならば即解決に持っていける程の力を有している…。しかし、君が今後挑んでいくのは超常的な、人ならざる者たちが起こす怪奇事件…。今回もそうだ。暴走する式神が起こした事件だっただろう?」

「何が言いたいん?」


 華凛たちはにやけるMr.シルバーをじっと見た。


「今回は証拠がなくても話が通じる相手だった。しかし…もし、これが悪質で往生際が悪い犯人だとしたら?果たして、華凛君たちは事件解決まで持っていけたかな?君は今回、陰陽師や式神についてわからないまま、犯人のかなえさんに近づいたのだからね。明らかに証拠不足だ。ゴーストのディサイドヘッドがなければ解決まで持ってはいけなかっただろう。」

「何を言う、老紳士殿!じゃあ、何か?私たちに陰陽師や式神の知識を前もって知っておくべきだったと言うのか?」


 颯がMr.シルバーを追求するために指差した。


「君たちが今後手を出していくものにはそういった、幅広いオカルト知識も必要だと言う事だよ、御頭(おがしら)ミステリー研究会。」

「…肝に免じておくよ、Mr.シルバー。じゃないと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「ほう?」


 華凛の真相を求める諦めない眼差しと、Mr.シルバーの冷たい青の眼差しが見つめ合った。

 

「…君は本当に面白い。確か二日後、君たちはデュラハン・パークの遊園地エリアに行くんだったね?いいだろう、そこで私が君たちに試練を与えてあげよう。楽しみにしておきたまえ。」

「華凛さんたち、さっきからどうしたんでしょうや?」


 八雲が華凛たちを気にして近寄って来た。


「…? あなたは…?」

「おっと、長居してしまったな…。もう目当ての物も回収できた。さらばだ、華凛君…。遊園地を楽しみにしていたまえ…。」


 そう言うとMr.シルバーはマントを翻して姿を消した。颯はあっかんべーをする。


「今の人…私、見た事があるでしょうや…。」

「えっ?それは本当ですか、八雲先輩?」

「お母さんと何度か話をしているのを見た事があるんでしょうや…。それと…あの人から、何というか…妙な力を感じるんでしょうや…。」

「妙な力…?詳しく聞かせて下さい、八雲先輩!」


 華凛たちは忍者コーナーの片付けを終えた後、八雲にMr.シルバーの事を詳しく聞いた。Mr.シルバーと会っていたというかなえにも直接話を聞く必要がある。華凛たちは紫煙家の家に向かった。

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