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29章 追究、開始

 華凛は夜に八雲から連絡を受けた後、帰った後に現れたというもう一体の怪物の話を八雲にトークアプリで書いてもらった。

 華凛は朝からその八雲が書いた文章を頭に入れながら思考し続けた結果、朝のシャワーも朝ご飯、通学、授業、給食と次々と時間は過ぎていき、あっという間に放課後になった。


「華凛ちゃん、もう放課後やで?」


 素子にそう言われ、華凛はずっと睨めっこしていた自分でももうわからない方程式のような文字をたくさん書いたノートから目を離した。

 素子の言う通り、教室にはもう自分たちしかいない事に気がついた。


「ご、ごめん、素子ちゃん、颯ちゃん…!私、集中し過ぎた…!私、今日付き合い悪かったかな…?」


 華凛は朝教室にやって来た時と給食の時間に素子と颯と会話した覚えがなかった。


「大丈夫や。うちらも気を遣って黙っとったし…。」

「逆に華凛の集中力の高さには驚かされるな。」

「そこまで私の家の心配をしてくれて嬉しいでしょうや。」


 三人共、優しい返答をしてくれて華凛はほっとした。しかし、いくら事件解決のためとは言え、仲間たちに素っ気ない態度を取るのはよくないな、と同時に華凛は反省もした。

 仲間たちとの何気ない会話からでも思わぬヒントは得られるのかもしれないのだから。

 もちろん、それだけではない。素子や颯、八雲と友情を築く事も大事なのだ、とも華凛は更に反省した。


「本当にごめんね?じゃあ、早速館に事件解決に向かおう!」

「「おぉーっ!」」「お、おぉでしょうや…。」


 そう言うと華凛たちは学校を出て、天衣無縫の館へと向かった。


「八雲先輩。私チェックしたんですけど、これがなくなってるカラクリ人形です。」


 華凛は八雲に写真を何枚か手渡した。わかりやすいように色マジックで丸をつけている。


「あ、それとごめんなさい、八雲先輩。施設内は撮影禁止なのに撮ってしまって…。」

「いえ、構わないでしょうや。華凛さんの私の家を守りたいという優しさから来るものでしょうや。気にしなくていいでしょうや。」


 そう言いながら八雲は渡された写真を見ていく。

 昨日の夜、八雲に書いてもらった文章によると、まず夜の九時五十五分に華凛たちを車で家まで送ってくれた超影が自宅に帰って来た。

 最後に颯を送った段階で時刻は九時半。超影はそこから大体二十五分くらいで紫煙家に戻って来た事になる。

 帰って来た超影を迎えたのは八雲と火縄の二人。

 超影と共に家に向かおうとしたところを物音がし、館に向かったら壁が破壊されていたという。

 急いで館内に入った超影と火縄だったが、怪物の姿を発見する事ができなかったという。

 破壊されていたのは陰陽師コーナーの机と忍者コーナーの椅子だった。

 お土産屋コーナーは無傷だったのでやはりMs.ホワイトミストと違って食料目当てではないようだった。


「…わかったでしょうや。なくなっているこのカラクリ人形たちはどれもお兄ちゃんが作った人形でしょうや。」

「火縄さんの…?」

「えぇ、お侍さんと笛吹きのカラクリ人形がなくなっているでしょうや…。お兄ちゃんが小学生の頃に作ってくれて、私に嬉しそうに見せてくれたカラクリ人形でしょうや…。お母さんもその時、喜んでくれたでしょうや。」

「そうなんですか…。この写真は一日前の内容なのでもっとたくさんなくなっているかもしれませんね…。」

「後で確認してみようでしょうや。」


 八雲はそう言うと写真を華凛に返した。


「しかし、一日前の写真とかどうやって撮ったんでしょうや?」

「それはもちろん、華凛にはボクという優秀な相棒がついているからさ!」


 ゴーストがデバイスの中から出てきて姿を見せた。八雲は驚き、華凛は周りに人がいないか確認したが、人通りが少ないので安心した。


「く、首無し幽霊でしょうや…!大人しく成仏するでしょうや…!」

「失礼な!ボクは確かに死んでるかもしれないけど、成仏されるような存在じゃないよ!」


 華凛は改めてゴーストの事を八雲に紹介した。それと同時に周りにはゴーストの事を公言しないという事も約束した。


「そういう事ならよろしくでしょうや、ゴーストちゃん。」

「どうも~!」

「適応早いな、八雲パイセン。」


 ゴーストと八雲は互いに手を振り合った。


「ところで華凛ちゃんは怪物は紫煙一家と関係者であるっちゅう線で調査をするん?」

「うん…。家族を疑って八雲先輩には悪いんですけど…。」

「カラクリ人形がなくなっているのは事実でしょうや。それにMs.ホワイトミストと建物を壊した怪物は別かもしれないという推理は当たっていたでしょうや。だから、気にせずに、華凛さんの思った通りに推理して欲しいでしょうや。」

「ありがとうございます、八雲先輩…。」


 華凛は改めて手元の写真を見る。


「しかし、本来は七時に出没するはずの怪物が十時に現れるとはあれだな。Ms.ホワイトミストと被るのを避けた様子があるな。」

「少なくとも、それくらいの遠慮をする知性がある相手って訳やね。」


 そうこうしている間に天衣無縫の館に着いた。


「とりあえず、昨日と同じ行動をしてみようか。何か新たな発見があるかもしれない。」


 華凛の意見に対し、颯と素子、八雲は頷いてくれた。


「確か昨日は最初に自宅へ案内しようとしたでしょうや。」

「うん、そこで火縄さんがモデルガンで的当ての練習をしていて、超影さんと抜刀さんもそこに現れて予定が変更。カラクリ屋敷に行く事になった…。」


 華凛たちは射的場を見たが、今日は火縄はおらず、誰もいなかった。新たな発見はなさそうなので次に行く事にした。


「それでカラクリ屋敷に行く前にお母さんと会ったでしょうや。」

「うん、それで…。」


 その時、華凛は頭に引っ掛かる事があった。


「…かなえさん、あの時に段ボール持ってたな、そう言えば…。」


 華凛たちがかなえに初めて会った時、かなえは両手で段ボールを持っていた。その後、料理を手伝うと言って火縄が代わりに持って夕飯を作りに行った事を思い出す。


「八雲先輩、かなえさんが段ボールを運んでましたよね?あの段ボールの中身は何かわかりますか?」

「それはお母さんに聞かないとわからないでしょうや。」

「そうですか…。かなえさんはよく荷運びをするんですか?」

「そう言われてみると、あまり見た事はないでしょうや…。」

「何だ、華凛?かなえさんを疑ってるのか?」

「何だか、気になって…。」


 華凛は顎に右手を当てて考え込んだ。


「確かに、カラクリ人形が入りそうなくらいの大きさの段ボールやったけど…。」

「仮にお母さんがカラクリ人形を持ち出してるとしたら、何のためになんでしょうや?」


 八雲は自分の母が疑われているのにも関わらず、動揺せずに華凛と真剣に話してくれた。


「売るとしても年期が入っとって、売値はつかないとちゃうん?埃もついとるし。」

「それに高価なものや大事なものだったら、展示用に屋敷には飾らずに箱に保管しているだろうしな。」

「大事なもの…?」


 華凛は颯の言葉を聞いてまた何か引っ掛かった。


「…ありがとう、颯ちゃん、素子ちゃん。私、何だか少し掴めたような気がする…。」

「な、何やて?」

「どういう事だ、華凛?」

「…まだ確信もないし、証拠もないけど…。とりあえず、他も見て回ろう。」


 こうして華凛たちはカラクリ屋敷に入った。今日は入場料を払って中に入った。まずはカラクリ人形コーナーに来る。


「八雲先輩、他になくなってるカラクリ人形がないかわかります?」

「たくさんあるでしょうや、すぐには確認できないでしょうや…。時間が掛かるかもしれないでしょうや、構わないでしょうや?」


 華凛は頷き、八雲に時間を掛けてもらい、一つずつ確認してもらった。

 

「間違いないでしょうや。どれもお兄ちゃんが作ったカラクリ人形がなくなっているでしょうや。」

「…わかりました、次に行きましょう。」


 次は忍者コーナーにやって来た。昨日と同じように超影と抜刀が忍術を披露してくれた。


「そういえば、手裏剣の的当てのカラクリ人形も破壊されてないんですね…。」


 華凛は手裏剣が刺さったカラクリ人形を見た。


「言われてみれば、そうデハナイカ。一週間でここのカラクリ人形は一度も破壊されてなかったデハナイカ。」


 超影と話をした後、華凛たちは改装エリアに来て調べたが特に何もなく、陰陽師コーナーに来た。昨日は八雲が陰陽術を見せてくれた。


「そういえば、ここのコーナーは八雲先輩以外の陰陽師。かなえさんと紗和さんも担当してると仰ってましたね?」

「そうでしょうや。でも、お婆ちゃんは身体が弱いから無理はできないでしょうや。お母さんも家事優先で基本的には私がやる事が多いでしょうや。」


 八雲の証言を聞いた後、華凛たちはお土産屋コーナーに着いた。


「この後は夕食を食べた後、Ms.ホワイトミストと遭遇したんやったね。」

「うん。それで見回りに行った超影さんが操られた火縄さんに攻撃された…。でも、あれはMs.ホワイトミストの仕業だったし、もう一体の怪物とは関係ないかな…。」


 華凛はお土産コーナーを見回した。


「そう言えば、昨日お客さんが他にいたね…。」

「あぁ、若いカップルとコートを着たおじさんがいたな。」

「うん、それとMs.ホワイトミストね…。」


 華凛たちはこれで一通り昨日と同じ行動を辿り終えた。


「どうだった、華凛?何か思いついたか?私ぁっ、さっぱりだ。」

「…ちょっとカマをかけてみたい人は見つかったかも…。」

「マジかっ!?」「ホンマなん!?」


 華凛の発言を聞いて颯と素子は同時に驚いた。


「華凛さんが疑っているのはやっぱり…そうなんでしょうや?」

「うん…。とにかく今から話しに行ってみよう。それと頼りにさせてもらうよ、ゴースト?」

「お安い御用だよ、華凛。」


 華凛たちは怪物と関係がありそうな人物と会うため、カラクリ屋敷の外に出た。

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