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28章 拭えない違和感

 Ms.ホワイトミストと名乗る不審者が去った後、華凛たちは散らかされたお土産屋コーナーの片付けを手伝った。

 目を覚ました火縄と騒動を聞きつけたかなえと紗和も駆けつけて片付けを手伝っている。


「色々あったでしょうや、これで怪物改めMs.ホワイトミストは来なくなるでしょうや。ありがとうでしょうや、華凛さんたち。」

「そんな、うちら大した事してへんよ?」

「うむ、ただ善行をしたのみよ。」

「それにしても、華凛さんたちが首無しお化けを従えてたのにはびっくりしたでしょうや…。」

「………。」

「…? 華凛さん?どうしたんでしょうや?」


 華凛はまだこの事件が解決したようには思えなかった。この事件には気になる点があって、それが頭から離れずに箒を動かしていた。


「あ、いえ…。ちょっと気になる事があって…。」

「何でしょうや?遠慮なく言ってくれて構わないでしょうや。」


 華凛は八雲を見て頷き、話す事にした。


「あの子、Ms.ホワイトミスト…。食べ物は確かにあの子の仕業なんでしょうけど…。建物の破壊はしてないんですよ。」


 八雲と素子、颯は華凛の発言を聞いて考え込んだ。


「確かにそうでしょうや…。でも、今回たまたま壊さなかっただけなんでしょうや?」

「でも、あの子はここを『餌場』って言ってたんです。施設を破壊する事と食べ物を食い漁る事は異なるんじゃないかな、って…。」

「せやね…。食べ物目当てやったら、こそこそした方がええし…。言われてみると、施設を破壊するっちゅう行為は逆に目立ってここを餌場にする行為と噛み合ってない、って華凛ちゃんは言いたいんやな?」


 素子が話をまとめてくれて助かったので華凛は頷いた。


「待て。華凛のその推理が正しければ、ここにはもう一人別の怪物がいると言う話になるぞ?」

「うん。でも、だとするとそいつは今日はまだ姿を現してない事になる…。」


 華凛はスマホで時刻を確認すると八時だった。怪物が出没する時間はもう過ぎている。


「せやけど、華凛ちゃんの言い分やとMs.ホワイトミストともう一体の怪物は一週間前に同じタイミングでここにやって来た事になるで?」

「そう、それなんだよねぇ〜っ、引っ掛かるのが…。そんな事あるのかなぁ、って…。」


 推理しようにも材料が足りない。華凛は腕を組んで考え込んだ。


「華凛ちゃん、もう八時やし。そろそろ帰らん?明日も学校やし…。」


 素子の言う通り、これ以上は家族にも迷惑が掛かる。


「もう外は暗いから、私が車で送るデハナイカ。」

「それはありがたいですけど…。超影さん、大丈夫ですか?操られた火縄さんに攻撃されたのに…。」

「もう何ともないデハナイカ。安心して欲しいデハナイカ。」

「そうですか…。それなら、よろしくお願いします。」

「もうあらかた掃除は終わったでしょうや。今日はありがとうでしょうや、華凛さんたち。」


 颯と素子は帰る準備をする中、華凛は帰る前にやりたい事があった。


「ごめん、颯ちゃん、素子ちゃん。ちょっと待ってて!」

「あ、華凛ちゃん?」


 華凛はお土産屋コーナーを後にし、超影が倒れていた場所までやって来た。


「ゴースト、お疲れのところ悪いけど、やって欲しい事があるの。」

「おかしな事を言うなぁっ、華凛は。ボクはゴーストだよ?疲れなんて知らずなのさ。」

「だね。」


 華凛はカードを実体化し、デバイスに読み込ませた。


「ヘッドチェンジ!シャインカメラ!」


 ゴーストにデジタル一眼レフカメラのような頭が装着され、両肩・両足にも二眼レフカメラのような肩パーツが新たに装着された。


「ゴースト、お願い!施設内を飛び回って撮影しまくって来て!」

「お安い御用さ!」


 シャインカメラゴーストは全身を光らせて施設内を浮遊し、フラッシュを焚きまくる。シャインの名は伊達でなく、暗がりでも問題なくカメラを撮る事ができる。

 この館は撮影禁止なので華凛には少し罪悪感があった。


「ざっと、三分!ナイスショット!」


 ゴーストは元の姿に戻り、写真の束を華凛に手渡した。


「サンキュー、ゴースト!それじゃ、今日はもう帰ろ!」


 華凛たちはハ雲に挨拶をし、館を出る。出る前に一応、ハ雲と連絡先を交換する事にした。


「わ、私のスマホの連絡先に友達の名前が刻まれる日が来るでしょうや…!?」


 ハ雲とその家族が感激する中、華凛たちは連絡先を交換した。紫煙ファミリーに挨拶をした後、華凛たちは超影の車に乗り込んだ。

 華凛たちが超影に家の場所を伝えると先に華凛のマンションに向かう事になった。

 華凛はゴーストが撮ってくれた写真を見る。


「…あの、超影さん。この一週間で破壊された主な設備って聞いてもいいですか?」

「うん?あぁ、構わないデハナイカ。」


 超影から聞いた話では一週間で主に破壊された設備は忍者コーナーと陰陽師コーナー。カラクリ人形コーナーと改装コーナーは手を出していなかった事がわかった。


「何かわかったか、華凛?」

「いや、まだ何とも…。」

「華凛さん、着いたデハナイカ。」


 華凛は超影に言われて外を見ると華凛の住むマンションがもう見えていた。


「ふむ、あれが華凛の住むマンションか。」

「なかなかえぇところやね。いつか華凛ちゃんちに遊びに行きたいわぁ。」

「うん、また今度の機会にね。それじゃあ、また明日学校で!」


 華凛は車から降りた後、颯と素子に手を振った。車が見えなくなった後、マンションへと向かう。その後は特に何事もなく、家に帰って風呂に入った。


「…よし、入浴で頭さっぱりだ!」


 華凛は髪と身体を洗った後、着替えて髪を乾かし、自室に戻って改めて写真を見る。


「特に変なところはないけど…。ゴースト、今日最後のヘッドチェンジ、頼める?」

「はいさ、名探偵。」


 華凛はカードを実体化し、デバイスに読み込ませた。


「ヘッドチェンジ!イエスタデイルーペ!」


 ゴーストはゴーグルをつけた頭を装着し、両肩にも可変アーム付きのルーペを装着。探検家のような見た目になった。

 華凛は机に写真を並べた。


「それじゃあ、早速この写真たちに映っている時を昨日の七時台まで巻き戻してくれる?」


 このヘッドはルーペに当てた写真を三分間だけ昨日の同時刻、二十四時間分まで映像を巻き戻したり、早送りして見る事ができる。

 要するに写真さえ取れれば監視カメラがない場所に監視カメラがあった事にできてしまうのだ。

 この街で殺人・強盗事件などが起きようものなら、すぐに犯人を特定できてしまう、人が起こした事件だったらすぐに解決できる可能性があるかなり強力なヘッドだ。しかし、その分制約が厳しい。


「本当は屋敷内を回ってる時に撮れたら良かったんだけど…。館内は記念撮影コーナー以外、撮影厳禁だったし何だか罪悪感が…。何より館が楽しくて失念してた…!」


 華凛は自分の未熟さを改めて実感し、悔やんだ。


「仕方ないさ、ボクの存在は八雲たちには秘密だったしさ。三分しかないからね。こうしている間も惜しい。準備はいい?」


 イエスタデイルーペゴーストは右肩のルーペを机に置いてある写真の上に配置した。

 ルーペ越しに昨日の七時台まで時を戻した写真を華凛に見せた。

 華凛は気になった映像をスマホで改めて写真を撮る。


「あ、超影さんと抜刀さんが対処してるね…。となるとこの二人がいる付近の写真と後、気になるのは…。」


 華凛は机に置いてある写真を並べ替える。


「うーん…。ちょっと期待したけど、超影さんと抜刀さんが追いかけてる相手は部屋が暗いからわからないな…。なら…!」


 華凛はまた写真を並べ替える。今度は破壊された設備を急いで確認した。

 壊されていたのは壁、机や椅子などの置き物だった。

 三分が過ぎ、ゴーストは元の姿に戻る。


「何かわかった、華凛?」

「うん、カラクリ人形が一切壊されてない…。それとカラクリ人形の配置が変わってる…。それどころか、無くなってるのもある…。」

「何だって?それは妙だね…。」


 華凛はその事実を知った後、スマホから着信があった。


「…! ハ雲先輩?」


 今は時刻十時。電話を掛けるには遅い時間だ。何かあったのかもしれないと思った華凛はすぐに電話に出た。


「もしもし?どうかしましたか、ハ雲先輩?」

「か、華凛さん!あなたの言う通りだったでしょうや…!今、お父さんが帰って来た後、気がついたんでしょうや、館の壁が破壊されてるんでしょうや!」


 やはりMs.ホワイトミストと施設を破壊した怪物は別の存在だったようだ。

 その後、話を聞くとお土産コーナーは無事だったと言う。どうやら、施設を破壊する怪物は食べ物目当てではないようだ。


「…先輩、明日また天衣無縫の館に行っていいですか?このミステリー、まだ終わってないから…!」


 華凛は八雲に許可を得た後、トークアプリで颯や素子にも伝えた。その後、華凛はまた写真を確認した。

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