25章 忍者に陰陽師!いざ、カラクリ屋敷へ!
カラクリ屋敷の内部構造を確認する事になった華凛たちは紫煙ファミリーにカラクリ屋敷の入口まで案内してもらっていた。
「しかし、八雲が友達を連れて来るとは…。本当にめでたいデハナイカ…。御頭ミステリー研究会の皆さん、お礼に入場料はただでいいデハナイカ。」
「そ、それはどうも…。」
「八雲に友達を作ってくれた怪物には感謝したいくらいだノーチラス…。」
「いや、討伐対象に感謝しちゃ駄目でしょう…。」
華凛は何とかボケ役五人、突っ込み二人の状況で何とかがむしゃらにやって来るボケの嵐を対処していた。素子が突っ込み役に回ってくれる事を願う。
「せや、それとこれとは話は別やで?それはあくまで不幸中の幸い、副産物や!」
「はい、その通りでしょうや、私のナイチンゲール…!」
八雲は素子の右腕にしがみ付いて歩く。
「あの、突っ込むタイミングを逃していたのだけれど、八雲先輩は何故に素子ちゃんをナイチンゲールと?」
聞かなくても何となくはわかるが、華凛の突っ込み根性が見逃せなかったので自ら聞いてみた。
「この方は腰をやってしまった私を懸命に介護してくれたでしょうや…!痛みに悶える私には彼女はナイチンゲールに見えたでしょうや…!だから、ナイチンゲールとお呼びしたいでしょうや…!」
「まぁ、そないな偉大な方と一緒にされるんは恐縮やけど…。八雲先輩の感謝したい、っちゅう気持ちはぎょうさん伝わって来るで?」
「ナイチンゲール…!」
八雲はハートマークを周りに飛ばしまくりながら素子の右腕を更に強く抱きしめた。
「モテるであるな、素子よ。」
「ふふっ、他人事やね、颯ちゃん。」
腕を組んでいる颯に素子は笑みを向けた。心なしか素子の笑みが怖い、と華凛は感じる。
「あら、八雲。お帰りなさい。帰ってたのね。」
「あ、お母さん、ただいまでしょうや。」
八雲は素子の腕から離れて段ボールを両手で持っている母の元へと走る。ハ雲の母はハ雲と同じ紫髪でハ雲は母親似だという事がわかった。
「喜んでくれデハナイカ、母さん。ハ雲が友達を連れて来たデハナイカ。」
「だから、今日は赤飯ノーチラス。」
「あら、そうなの!わかったわ。皆さん、どうかごゆっくりとしていって下さいね。」
「…あれ?」
華凛は不思議に思った。八雲の母の言葉遣いには
「語尾がないではないかっ!」
華凛の思考中に颯が母に指差して先に口に出した。
「こらっ、颯ちゃん。失礼やで。」
「いいのよ、よく突っ込まれるから…。私は紫煙かなえ。私、この紫煙家に嫁いだ身なのよ?」
「あ、なるほど…。」
超影の嫁だから語尾がないのか、と華凛は合点が入った。
「この家系だと私だけ浮いちゃってるのよね…。もう慣れたけれども…。それとも、私も語尾つけようかしら?」
「い、いえ、大丈夫!よくお似合いですよ?」
華凛は何故だか慌ててよくわからない返事をしてしまった。
「お母さん、お婆ちゃんはどうしたんでしょうや?」
「お婆ちゃんなら、カラクリ屋敷にいるわよ?」
「おっと、いかんデハナイカ!我らも仕事に戻らねばならないデハナイカ!ハ雲、この方たちの案内は任せたデハナイカ!」
「いざノーチラス!」
そう言うと超影と抜刀はその場から飛んで消えた。ノリは独特だが、さすが忍者だ、と華凛は感心した。
「それじゃあ、夕食の準備をしますか。あの良かったら、皆さんの分も…。」
「えっ?いいんですか?三人分増えちゃいますけど…。」
「元々大家族だから、遠慮しなくていいのよ?」
「お母さん、後で手伝いに行くでしょうや。」
「ありがとう、八雲。でも、せっかくお友達が遊びに来たのだから、そっちを優先していいのよ?」
「俺が母さんを手伝うデスーカ。八雲は皆さんの案内をするデスーカ。」
そう言うと火縄はかなえが持っていた段ボールを両手で持ち、二人で夕食の準備をしに行った。
「あ、そうだ。父さん母さんに夕食は友達の家で済ませたって伝えとかないと…。」
華凛たちはスマホで連絡した後、再びカラクリ屋敷を目指す。
「着いたでしょうや。ここが入口でしょうや。」
「わっ、結構すごい迫力…。」
そこには大口を開いたカエルの顔を模したゲートがあった。年季が入っていて、それが不気味さを際立たせている。
華凛たちはゲートを潜って中に入った。
「いらっしゃいでチョーヤ…。」
レジの前に座っているお婆さんが最初に目に入った。華凛はもはや語尾でこの人物が八雲の祖母だと理解できた。
「私は紫煙紗和でチョーヤ…。話はもう聞いておるでチョーヤ…。我が天衣無縫の館、どうかごゆるりとお楽しみ下さいでチョーヤ…。」
華凛たちは紗和に軽くお辞儀をした後、八雲に案内されながらアトラクションゾーンへと入った。平日だからか、あまり客はいない。
「まずはカラクリ人形たちのお出迎えでしょうや。」
華凛たちが部屋に入った途端、センサーが探知したのか、カラクリ人形たちが楽器持ちだったら楽器を、武士だったら象徴となる武器を各々個性を主張するかのように動き出した。
「わぁっ…!?すごい、すごい…!何か可愛い…!」
華凛もつい嬉しくて拍手した。
「これは大したものだな…!」
「せやね。部屋が暗いせいでちと怖いんやけど…。それでも大したもんやで。」
「何々?気になる!ボクも!ボクも見たい!」
ゴーストも思わずデバイスの中から声を出してしまった。
「…? 今、聞いた事がない声が聞こえたようなでしょうや…?」
「き、気のせい気のせい!わ、私の裏返った声かなぁ〜っ?」
華凛は慌てて八雲を誤魔化した。それでゴーストを大人しくさせるのは何だか可哀想なので目立たないようにデバイスを持って見せてあげた。
「次は忍者コーナーでしょうや。」
「ノーチラス!」「デハナイカ!」
忍者コーナーに入った途端、超影と抜刀が突然出現した。
「はっ、手裏剣捌き!」
超影が何もない場所に手裏剣を投げるとカラクリ人形が地面から出現し、手裏剣が全て刺さった。
「おぉっ!?何という先読み能力!なかなかの上級忍者とお見受けした!」
いや、多分カラクリ人形が出る場所はもう何年もやってるからわかっているだろうし、投げた後スイッチか何かを押して出現させてるんだと思った華凛だったが、颯の夢を壊すようで悪いので突っ込まずに黙っておいた。
「手裏剣!ほっ、ほっ!」
抜刀も老人とは思えない程の身軽さとアクロバティックな動きで出現するカラクリ人形に次々と手裏剣を当てる。
「続けて分身の術!」
超影と抜刀は互いに分身。分身たちは好き放題その場で動き回った。古びた屋敷なように見えて最新のホログラム技術を使っているのか、と華凛は意外性に感心した。
「すごいぞ、これが忍者か…!私は今、伝説をこの目で見ている…!見えた…!勇者侍忍者へのクラスチェンジが…!」
「あかん!颯ちゃんが新たな影響受けとる!それ以上は属性過多やて!」
その後も超影と抜刀は鉤爪による壁渡りや水蜘蛛で池を移動したりと、カラクリギミックを交えながら披露してくれた。
「次は…まだ改装中のエリアでしょうや。お兄ちゃんが西部劇エリアにしたい、って言ってるでしょうや、それでお父さん、お爺ちゃんと揉めてるんでしょうや。」
「確かにこの館の世界観にそぐわないかも…。」
「ここは通り過ぎて次は記念撮影コーナーでしょうや。」
次のエリアはその場で写真を現像できるインスタントカメラと天衣無縫の館のマスコットキャラ「天衣無縫君」と一緒に写真が撮れるコーナーだった。
「せっかくだからみんなで撮るでしょうや。」
「そうですね。四人で撮りましょう。」
「…? 私もでしょうや?」
ハ雲は不思議そうに自分を指差した。
「当たり前じゃないですか。先輩はもう私たちの友達ですから。さ、撮りましょ。」
「どれ、私が撮ってやろうデハナイカ。」
急に現れた超影がカメラを撮ってくれる事になった。華凛たちは天衣無縫君の周りに集まった。
「それでは皆さん、天衣〜っ…?」
「「「む、無法ぉ〜っ!」」」
「無法でしょうや。」
カメラのシャッター音が鳴った後、すぐに写真が現像された。
「こ、これはデハナイカァッ…!?」
「どうしました? …あっ!?」
写真には華凛と颯、素子、ハ雲。それと抜刀も映っている。本来はそれがドッキリ要素だったのだろうが、何とゴーストが映ってしまっていた。
「く、首無しの本物のお化けでしょうやぁ〜っ…!?」
ハ雲は仰天し、倒れそうになったところを颯と素子が息ぴったりで支えた。
「…いやぁっ、ごめん、華凛…!ついやっちゃった…!」
もうデバイス内に戻っているが、ゴーストは謝った。
「いや…ってか、ゴーストって写真に写るんだね…。」
気を取り直して華凛たちは次のエリアへ。
「ここは陰陽師コーナーでしょうや。私とお母さん、お婆ちゃんが担当するコーナーでしょうや。でも、今は三人とも手が空いてないから芸は披露できないでしょうや。」
「パイセンが今やればいいのデハナイカ?」
「颯ちゃん、語尾移っとるで。」
「いやぁっ、チャンスかと思って…。」
「い、今するんでしょうや?」
ハ雲は思い掛けないリクエストを受けたからか少し恥じらっていた。
「ハ雲先輩の陰陽術の腕前、見てみたいです!」
「うちも見たいなぁ。なぁ?えぇやろう?」
「は、はい!ナイチンゲール…!それに令和ホームズに勇者侍殿の頼みならば…!」
ハ雲はステージに立ち、華凛たちは畳の上に座った。
「本来はイベント用の着物を着るんでしょうや、今は時間がないからこのままでしょうや…。私はまだまだ未熟な陰陽術見習いでしょうや、式神たちと遊ぶのが好きなんでしょうや…。」
ハ雲がそう言うと机に置いてある葉っぱに手を当てた。葉っぱが宙に浮いたが、すぐに落ちてしまった。
「し、しまったでしょうや…!き、緊張してしまったでしょうや…!」
「先輩、頑張れぇーっ!」
「うむ、精神統一が大事なり!」
「うちらは観客やのうて、カボチャかなんかやと思ってかまへんよ!」
「…! みんな…。 よし、でしょうや!」
ハ雲は改めて葉っぱに両手を向ける。葉っぱは人の形をした霊体となり、踊り出した。
「やったでしょうや…!うまく行ったでしょうや…!」
華凛たちは笑みを浮かべ、拍手を送った。
「この場所だと霊能力者じゃなくても式神が見えるようになってるんでしょうや!それ、石にも霊力を与えるんでしょうや!」
ハ雲は調子が乗ってきたのか小石も式神に変え、幻想的な光景を披露してくれた。
「最後はお土産コーナー兼、ミニ博物館コーナーでしょうや。」
「先輩、私!今日すっごく楽しかったです…!御頭街にこんな素敵で楽しい場所があったなんて…!私、今まで損してました…!」
華凛はつい興奮気味になってはしゃいでしまった。
「そ、そうでしょうや、令和ホームズ?何だか照れるでしょうや…。」
「うむ、これをただで体験できたと言うのは何だか申し訳ないな。」
「せめて、お土産コーナーで感謝の気持ちを伝えたいで。」
「ありがとうでしょうや、みんな…。」
華凛たちが歩いていると華凛は小さい女の子とぶつかってしまった。
「あ、ごめん…。大丈夫だった?」
「平気…。」
小さい女の子は白髪のツインテールをしたゴシックドレスを着た子だった。その子の怖いくらい深い青い瞳を見て華凛は思わず寒気を感じてしまった。
華凛と白髪の女の子は通り過ぎた。
「…ねぇ、財布落としたよ?」
「えっ?あ、ごめんね…。」
華凛は全く財布を落とした感覚がなかった。カラクリ屋敷に感動して興奮しちゃったかな、と少し反省した。
「後、変な機械とスマホと筆記用具。それにハンカチも。」
「いや!いくら何でも落とし過ぎでしょっ、私!?鞄から中身溢れてますよ!?」
華凛はこの子はスリをしたんじゃないか、と警戒した。だとしたら、この少女は只者ではない、と思った。
「どうしたん、華凛ちゃん?」
「そのロリがどうかしたのか?」
「あなたは…?」
「ふふっ…。何だか面白そうな人ね、お姉さん…。またね…。」
謎の少女は冷ややかな笑みを浮かべ、去っていった。




