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24章 愉快な語尾ファミリー

 八雲が去った後、ホームルームが始まった。その後は授業が開始。

 さすがに教師たちの自己紹介は終わり始め、本格的な授業が始まった。と言っても入学始めの授業なのでまだ勉強内容はそこまで難しくはない。

 給食も食べ終わり、五時間目の体育の授業も終わってあっという間に放課後になった。


「それじゃあ、行きましょうや。」

「おぉっ!?びっくりした!?」


 帰りのホームルームが終わった途端、華凛たちの近くに突如八雲は現れたので一同はびっくりした。


「私、陰陽師見習いなので陰陽師らしい登場をしようと思ったんでしょうや。」

「陰陽師らしい登場って何っ!?」


 華凛たちはいきなり調子を狂わされたが、校舎を出て校門を通り過ぎた。

 八雲が先頭を歩き、天衣無縫の館まで案内してもらう。

 華凛は目的地に着くまでもっと詳しくカラクリ屋敷の謎の生物について聞く事にした。


「えっと、八雲先輩?謎の生物についてもっと詳しく聞きたいんですが…。」


 華凛は八雲の左まで歩いた。あまり先輩という言葉で人を呼んだ事がなかったので不思議と少し照れ臭かった。


「一週間前から怪物は現れるようになったと仰ってらしたね?それは今の所…。」

「毎日現れているでしょうや。」

「現れる時間帯とかは?お土産屋コーナーの食べ物を食べているという事は…。」

「大体私たち家族の夕食時…七時過ぎくらいでしょうや。」

「そいつの見た目とかはわからないのか?」


 颯も八雲の右に移動し、質問する。


「お父さんたちは忍者なんでしょうや。すばしっこい奴でそいつに気づいて現場に来た時にはもう逃げてるから姿はわからないんでしょうや。」

「…駄目だ、お父さんたちが忍者という所の方が気になってしまった…。」

「何だか楽しそうな家族やねぇ〜っ。会うのが楽しみやわぁ〜っ。」

「はい、我がナイチンゲール…!是非、紹介したいんでしょうや…!」


 八雲は後ろに下がり、素子の右まで移動して感激した。


「あの、先輩が先頭を歩いてくれないとカラクリ屋敷に行けないのだけれど…。」

「これは失礼でしょうや。」


 八雲は急ぎ足で再び先頭を歩く。


「父とお爺ちゃんは忍者で、母とお婆ちゃんと私は陰陽師。そして、お兄ちゃんは西部劇のガンマンなんでしょうや。」

「何故にお兄さんだけ洋風!?」

「お兄ちゃんは父母のやり方に少し反感意識を持っているんでしょうや…。けど、それでもお兄ちゃんは家族を捨て切れず、なんだかんだでカラクリ屋敷を手伝ってくれてるんでしょうや…。」

「くっ、えぇ話や…!」


 素子は左腕を曲げて両目に当てた。颯も腕を組んで頷いた。


「はい、我がナイチンゲール…!あなたにそう思われて光栄でしょうや…!」

「話進まないよぉっ…。とにかく、現れるのは七時過ぎ!家族に遅くなるって連絡しとかないとね…!」


 華凛たちは人気が少ないところで立ち止まり、スマホを操作した。


「うーん、警察は呼べない理由は朝に聞いたんやけど、忍者に陰陽師にガンマン…。それだけのメンバーがおるのに何でわざわざうちらを?」

「何だ?わからんのか、素子?そのパーティには唯一欠けているものがある…。それは…『勇者』だ!」


 颯は右手で空高くを指差した。素子はため息をつく。


「ハ雲パイセンは私の存在に注目して依頼して来たのだ!」

「違うんじゃないかな…。」

「その通りでしょうや。さすが勇者、そこに気づくでしょうや…。」

「違わなかったかぁ〜っ…!」


 華凛は例え相手が妙な人たちでも自分の推理が通用しない、というのがよくわからないが悔しさを感じてしまい、空を見た。

 各々、家族に少し帰りが遅くなる事を連絡した後、再びカラクリ屋敷目指して歩き出す。


「せや、ハ雲先輩は家族で誰似なん?」

「ナ、ナイチンゲール、何故今そのような話を…?」

「だって、結構な美人さんやん?」


 ハ雲は頬を染め、慌て出した。確かに語尾は変だけど紫髪の和風美人ではある。語尾は変だけど。華凛は強く思う。


「普段は巫女服とか着るん?きっと和風で似合うんやろうなぁ〜っ…!」

「はい、似合います!ナイチンゲールが言うんなら、似合ってみせます…!」

「この世界は遅延行為で溢れてるのかなぁ〜っ…。」


 八雲への聞き込みがうまく行かず、華凛が突っ込み疲れをしている中、やっと天衣無縫の館らしき大きな建物が目に入った。


「あれが八雲先輩のご自宅、天衣無縫の館ですか…。」

「その通りでしょうや。」

「学校からそんなに離れてないんやね。」

「うむ、羨ましい限りである。」


 そんな会話をしていると天衣無縫の館の入口まで辿り着き、門を潜る。

 中に入るとまるでタイムスリップしたかのような大きな木造の屋敷が目に入って来た。


「わぁっ、良いところにお住まいですね…!」

「普段は屋敷とは別の一軒家に住んでいるんでしょうや。案内するでしょうや。」


 八雲についていく最中、モデルガンで的をひたすら撃っている男がいた。ガンマン風の服を着ていて、恐らく八雲の兄であろうと華凛は即座に判断した。


「兄上、ただいま学校から帰って来たでしょうや。」

「おぉっ、八雲デースカ。お帰りデースカ。」

「お兄さんも語尾つけるのね…。」

 

 華凛はもう開き直って残りの家族がどんな語尾なのかを考えてみる事にした。

  

「八雲、その方たちは何デスーカ?」

「この子たちは…。」


 八雲は振り返って華凛たちを見るが言葉に詰まっていた。


「…友達なんでしょうや…?私に…友達なんでしょうや…?」

「何故に自信なさげ?八雲先輩は私たちの先輩友達です。」

「おぉっ、八雲が友達を家に連れて来るなんて初めてなんじゃないデスーカ!今日は赤飯じゃないデスーカ!」


 八雲の兄は涙目になり、右腕でごしごし拭き始めた。


「めでたいデハナイカ!実にめでたいデハナイカ!」

「良かったノーチラス…!感激ノーチラス…!」

「うわっ!?びっくりした!?に、忍者!?」


 華凛たちの背後に急に二人の忍者が現れたので驚いた。


「えっと…デハナイカの方がお父さんで、ノーチラスの方がお爺さんですか?」

「その通りでしょうや。よくわかったでしょうや。」

「いや、見た目でわかるやん…。」

 

 忍者頭巾を被っているが、ノーチラスの方が白髪を生やして老けて見えたのでそちらが祖父だと言う事はすぐに判断できた。


「ようこそ、天衣無縫の館にデハナイカ。私は紫煙超影デハナイカ。」

「そして、わしは紫煙抜刀じゃノーチラス。」

「そして、俺が紫煙火縄デスーカ。」

「なるほど、八雲さんに負けじとミステリアスな方々でいらっしゃる…。」


 華凛は紫煙ファミリーが一気に自己紹介して来たので何とか記憶する。


「いやぁっ、実にめでたいデハナイカ!良かったら、皆さんも赤飯を食べていくデハナイカ!歓迎するデハナイカ!」

「えっと…?」


 華凛はどうしようか悩んだ。八雲の話だと夕食時に例の怪物は現れるという話。夕食を馳走になっている間に怪物が現れ、取り逃がす可能性がある。


「あの、私たち実は御頭(おがしら)ミステリー研究会という者でして…。この館に出るという怪物の正体を探りに来たのですが…。」

「何ですってデハナイカ?それは本当なのデハナイカ、八雲?」


 語尾のせいでややこしい日本語になってますよ、と華凛は心の中で突っ込んだ。


「私は勇者侍、颯!令和のシャーロックホームズ華凛とヒーラー素子と共に怪物退治に参った!」

「ホームズだけ浮いてないデスーカ?」


 いや、ガンマンのあなたにだけは言われたくないんだけど、と華凛はまたも心の中で突っ込んだ。


「何と、勇者様であらせられましたノーチラス…。それに探偵とヒーラーまでいるノーチラス…。」

「我が娘、ハ雲がわざわざ連れてきたという事はかなりの実力者と見たデハナイカ。キャリアはどれくらいデハナイカ?」

「私ぁっ、生まれ持っての勇者侍だ。キャリアなどというもので測れるものではない。」

「なるほど、代々勇者の末裔の方デハナイカ…。助かりますデハナイカ…。」


 元々紫煙家が陰陽師と忍者の家系だからか颯の話が何故か通ってしまった。この場には華凛と素子以外ボケしかおらず、もうどうにでもなれ、と華凛は思った。


「この方たちはミステリーを解き明かされれば良いという方々でお金はいらないとの事でしょうや。」

「何と…!?その生き様、その立ち振る舞い…!まさに勇者そのものデハナイカ…!?」

「ふふっ…!華凛、素子よ。私は居心地が良くてここの子になりたくなって来たぞ…!」

「ちゃんとうちらと一緒に家に帰るんやで、颯ちゃん…。」


 うまく行ったからいいものの、華凛と素子は颯のノリに巻き込まれたので肩をがくっと下ろした。


「とりあえず、ハ雲先輩。カラクリ屋敷がどんな場所なのか体験してみていいですか?」

「それは構わないでしょうや。お父さんたちもいいでしょうや?」

「いいでしょうデハナイカ…!我が紫煙家が誇るカラクリ屋敷…!その名の如く、天衣無縫ぶりをお見せしようデハナイカ…!」


 こうして、華凛たちはまず天衣無縫の館がどのようなレジャー施設なのかを探れる事になった。

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