23章 依頼でしょうや
「華凛、朝だよ!起きてぇ〜っ…!」
「ほいほい、ゴースト…。」
華凛はゆっくりと上半身を起こした後、ベッドから立ち上がった。
「今日は颯とデュエル・デュラハンで対戦する日だよ?」
「だね。1BOX買いだったからスマホに一つずつカードを読み込んでいくのは楽しくはあったけど、また大変でもあったなぁ〜っ…。」
華凛は読み込んだ後のカードの束を手に持った。
昨日はぎっくり腰少女を見送った後は何事もなく颯と素子と別れ、自宅に帰って来て風呂と晩御飯を食べた後、ひたすらヘッドカードをスマホに読み込ませる作業をした後、就寝した。
「スマホに読み込んだ後もこのカードたちは他の媒体でも使えるし、またはバックアップとしても使える…って颯ちゃんたちが言ってたな…。こうなって来るとカードファイルみたいなのが欲しいな…。今日買って来ようかな?」
「華凛、何だかカードゲーマーみたいだね。」
「確かに。」
華凛はとりあえずカードの束を机の引き出しに入れた。その後、鞄と着替えを用意する。
「しかし、昨日のあのぎっくり腰少女は一体何者だったのか…?」
華凛は普段通りにシャワーを浴び、朝ご飯を食べて学校へ登校。特に問題も起きずに教室まで着いた。
「おはよう、華凛ちゃん!」
「おっす、華凛!放課後のバトル、楽しみにしているぞ!」
「颯ちゃん、さっきからそればっかりやん…。堪忍な、華凛ちゃん。颯ちゃん待ち切れんみたいや。」
「まぁ、いいけどさ…。」
御頭中学校の校則では休み時間はスマホを操作していい事になっているが、さすがに朝のホームルーム前にやるのは颯も避けたいようだった。
「あ、そうだ。」
華凛は鞄を机に置いた後、足を机の上に置いている深也の近くまで小走りした。
「海原君、昨日はアドバイスありがとうね。無事に私のデュエル・デュラハン完成したよ?ヘッドカードもたくさん手に入ったし…。」
「…お、おう、そいつは良かったな。ま、大事にしな。」
深也はそう言うと席から立ち上がり、教室を出て行った。
「行っちゃった…。」
「あいつは割とシャイだからな。きっと照れ臭くてこの場に居づらかったのだ。」
「そうなん?」
「あの…。」
華凛たちは呼ばれたので声がした方を向いた。
「えっ…?」
華凛たちの目の前に現れたのは昨日のぎっくり腰の少女だった。華凛たちは少し驚いた。
「あ、あなた、何でここに?」
「私、ここの学校の生徒でしょうや…。」
「そうなの!?えっ?でも制服…?」
ぎっくり腰少女は昨日と同じ薄茶色のセーラー服を着ていた。
「これはいざ私服の学校に入学したら、やっぱり制服がないと何だか落ち着かなかったので自分で編んで作ったセーラー服でしょうや。」
「まさかの手作り…。」
「ちなみに二年二組でしょうや…。」
「しかも上級生!?先輩!?」
「そ、そないな事より良かったわ…。もう腰は大丈夫なん?」
素子は立ち上がり、上級生の女生徒の前に立った。
「ナ、ナイチンゲール…!はい、お陰様でしょうや…!」
「それは良かった…んやけど…?」
「いや、治り早くない!?」
上級生の女生徒は普通に立っていて、松葉杖らしき物も持っているようには見えなかった。
「あの…実は私、陰陽師見習いでしょうや…。式神で腰をサポートしているのでしょうや…。」
「お、陰陽師見習い?」
「キャラ濃いな…。」
颯も思わず突っ込んだ。確かにぎっくり腰が一日で治るとは思えないので式神の話は事実なのかもしれない。
「私は紫煙八雲でしょうや。よろしくでしょうや。」
「えっと…まず紫煙先輩は何故あんな怪しい姿で私たちの前に?」
華凛は情報を整理するために昨日の起こった出来事を順番に聞く事にした。
「私は恥ずかしがり屋なのでなかなか話し掛けられなかったんでしょうや…。それと先輩として威厳を出したくてやったんでしょうや…。」
「いや、威厳も何も感じませんでしたけど!?怪しさの方が勝ってましたよ!?」
「私はあなたたち御頭ミステリー研究会に依頼をしたくて会いに来たんでしょうや。」
「えっ?依頼…?」
華凛たちは八雲から以外な言葉が出てきたので驚いた。
「何だ、私ぁっ、てっきり新たな敵かと思ったぞ。」
「まぁ、私たちとしては中学だと初依頼という事になるから嬉しくはあるのですけど…。と、とにかく話を伺いましょう。」
とりあえず華凛は八雲を空いている席に座らせ、素子と共に椅子に座り直した。
「あの、何で御頭デパートのヨガ体験コーナーに参加してたん?」
「私、ヨガが好きなんでしょうや。ちょうどやってたから参加したんでしょうや。けど、いつも高確率で身体を壊すんでしょうや…。」
「今後は改めた方が良い趣味ですね…。あなたのためにも…。」
「それで依頼というのは何なん?」
八雲は周りに人があまりいないのを確認した後、華凛を見た。
「…実は我が家は『天衣無縫の館』というカラクリ屋敷を家族で営んでいるんでしょうや。」
「カラクリ屋敷…?そんなレジャー施設がこの街にあったなんて…。」
華凛は颯と素子の顔を見たが、二人共知らない、と首を横に振った。
「それで一週間前、突如我が家のカラクリ屋敷に『謎の生物』が出没するようになったんでしょうや…。」
「謎の生物…。」
華凛は口に右手を当てて考える。
「そいつは夜になったら現れ、設備を壊したり、勝手にお土産コーナーの食べ物を食べたりしてやりたい放題で困ってるんでしょうや…。」
「それは私らじゃなくて、警察に言った方がいいのではないか?」
颯が突っ込みを入れた。
「それが…あくまで被害は家にしか出てないからって、警察はまともに取り扱ってくれないんでしょうや…。」
「なるほど…。」
「でも、だからって何でうちらなん?」
「私、探偵とかを雇おうにもお金がないでしょうや…。そこで私は何とかしてくれる存在はいないかどうかを調べた結果…。」
「なるほど、それで私たちに白羽の矢を立てたと…。」
確かに華凛たちは研究会をやっていく上で依頼人から報酬を受け取るつもりはなかった。お金じゃ得られないものもこの世界にはある、と思っているからだ。
強いて言うなら、謎を解き明かした際のカタルシス。それが得られればいい、と三人共思っていた。
「どないする、華凛ちゃん?」
「…って、華凛の表情を見たら聞くまでもないようだがな。」
「うん、その通り!私たちは困ってる人をほっとけないからね!」
「…! それじゃあ…!」
暗い表情だった八雲は一気に笑みに変わった。
依頼人の希望に溢れた笑み。それも華凛たちにとっては報酬の前払いに匹敵する価値のあるものだった。
「はい!カラクリ屋敷を脅かす謎の生物というミステリー、私たちが請け負います!」
「ありがとうでしょうや…!あなたたちと話せて良かったでしょうや…!それじゃあ、放課後案内するでしょうや…!」
そう言うと八雲は嬉しそうに教室を去って行った。
○紫煙八雲 13歳
血液型AB型
誕生日 3月26日 牡羊座
身長 157cm 体重 言わないでしょうや
趣味 ヨガ 式神と遊ぶ事 花占い
好きな食べ物 和食全般
苦手な食べ物 ホットドッグ




