21章 友情と奇策のレアフレーム
「よいしょ、っと…、」
華凛は個室に入り、椅子に座った。机の上にデバイスとカードパック1BOXを置いた。
「早速開けるの、華凛?」
「うーん…。期待感でここまで来といてなんだけど、どうしようか?パックを開けてからデュエル・デュラハンの着想を得るか…。それとも今、デュエル・デュラハンを決めてそれから開けた方がいいのか…。」
華凛は腕を組んで考える。
「後者の方が本人情報を読み込んだ際にそれに合わせたヘッドカードになりやすいかもね。」
「そうだよねぇ〜っ…。その方が不必要なカードが出る事がない気がするし…。このカードパック、本人のその時の想いや気分とかにも左右されるんだね。ホント、珍しいゲームだ。となると、後者か…。」
華凛は今まで見てきた光景を思い出して見る。
「…ねぇ、ゴースト。私とあなたはさ…二人共、今の自分じゃ駄目だ、変わらないと…って思いが共通してあるよね?」
「そうだね…。二人共、昨日の戦いみたいな事にはなりたくない、って思いは共通してる。」
「つまり…そう、颯ちゃんに付き合ったヒーローショー!素子ちゃんと話した女児向けヒロイン物!今後ぶつかるかもしれない難関を打破したいという『変身願望』だ!」
華凛はひらめきと同時に指を鳴らした後、スマホを取り出し、デュエル・デュラハンのアプリを起動した。
「私にも、ゴーストにも、新たに作るこの子にもそれぞれが臨機応変に対応できる…そうだ、『オールラウンダー』!」
「いいよ、いいよ、華凛!ノッて来たじゃない!」
華凛は思いついたデュエル・デュラハン像をどんどん形にしていった。
「この見た目だとシンプル過ぎるから、少しアクセサリーもつけて…よし、できた!できたよ、ゴースト!見て、見て!」
華凛はスマホの画面をゴーストが映るデバイスに見せた。
「名付けて、『ルフォーゼ』!よし、これでSolve the case!」
「へぇっ、いいじゃないか。やったね、華凛!じゃあ、早速…。」
「開封開始、だね!」
華凛はデュエル・デュラハン完成の勢いに乗り、パックを開け始め、続々と絵柄をつけていく。
「ふふっ、なるほど!これは確かに楽しいね!絵柄がどんどん付いてくし!」
華凛は一枚ずつ手に取ってカードを作っていく。
「でも、確かに私の情報読み込んでるね、これ…。『カメラ』、『手帳』、『単眼鏡』とか探偵七つ道具みたいなヘッドができ上がってるし…。結構偏るね…。ダブらないようにしないと…。」
華凛は次のパックを開けると一枚だけ違うフレームのカードが出てきた。
「あっ、これが例のレアフレームか…。」
「おぉっ、やったじゃないか!早速試す?」
「…いや、一旦保留。えっと…あった、これだね!」
机の上に特殊な手袋が置いてある。壁に貼ってある注意書きによると、これをつけてカードを持てば絵柄がつかないまま机などに置き直す事ができる。
別に手袋でなくても厚めのタオルとかでも大丈夫と書いてある。
1BOX開けた結果、レアフレームは三枚出た。
「よし、ゴースト。デバイスから出てきて。」
「う、うん?わかった…。」
ゴーストはデバイスの中から出て来て霊体となって華凛の隣に浮く。
「私の手とあなたの手を重ねて。一緒に持とう?」
「えっ?」
「最初の一枚のレアフレームはゴーストと一緒に持とうって思ってさ。」
「それはいいけど…。意味あるのかな?ボク、手が透けてるのに…。」
ゴーストはそう言って自分の右手を見た。
「実体があるかどうかは関係ないよ。このカードは気持ちが大事なんでしょ?私がゴーストと一緒にカードを作りたい、って強く思えるようにゴーストには側にいて欲しい。ゴーストをより身近に感じたいんだ。」
「華凛…。わかった、やろう!」
「うん、そう来なくっちゃ!じゃあ、行くよ?」
華凛がそう言うとゴーストは華凛の右手に自分の右手を重ねた。
「「せーのっ!」」
華凛とゴーストが同時に机に置いたレアフレームに手を当てる。
レアフレームは『ミステリアスヘッド』のカードになった。
「よし、何だか良さげのカードになったよ!これでゴーストはミステリアス・デュラハンだね!」
「ミステリアス・デュラハン…。ははっ、何だかかっこいいね!」
「でしょ?よし、次は…。一旦個室から出て…っと。」
華凛が個室から外に出ると既に颯と素子が立って待っていた。華凛はデュエル・デュラハンの制作時間もあったので一番遅くなってしまった。
「ごめん、お待たせ!」
「ううん、うちらもさっき終わったばかりやから。」
「何だか嬉しそうだな、華凛。良いカードは出来上がったか?」
「うん、まぁね!」
「ほなら、店内に戻ろか。」
素子と颯は集中開封室から出ようとする。
「あっ、待って!二人共!」
華凛は手袋で持ったレアフレームを二人に見せた。
「それはレアフレームやん…。」
「何だ、まだ絵柄をつけてなかったのか?」
「うん。私さ、さっきデュエル・デュラハンを遂に作る事ができたんだ…。それを思いつけたのは、完成できたのは二人が私に付き合ってくれたおかげでもあるから…。だから、このレアフレームは三人で一緒に持って作りたい、って!そう思ったんだ!」
「華凛ちゃん…。うん、わかった!ええよ?」
「嬉しい事言ってくれるじゃないか、華凛!」
華凛は頷いた後、近くのテーブルにレアフレームを置いた。
「二人共、私に手を合わせて。」
華凛が左手にデバイスを持ち、右手を前に出すと素子、颯の順で手を重ねた。
「…行くよ?今後の御頭ミステリー研究会に幸、あれ!」
「えい!」「そりゃっ!」
華凛たちは三人で机に置かれたレアフレームに触れた。レアフレームは『フレンドシップキャンドル』カードになった。
「何だか、いかにもゴーストに使ってね、みたいなカードになったね…。」
「当たり前やん。うちらの出会いの始まりは白霊の寺やし。」
「それが読み込まれてキャンドルヘッドになったのだろう。」
華凛は左手に持ったデバイスを見た。
「もしかしたらさ、ゴーストの情報も読み込まれたのかもしれないね。」
「そうだね…。きっとそうだよ。」
華凛はフレンドシップキャンドルのカードを手に取って改めて見て実感を得た後、入れ物に保管して鞄に入れる。
華凛たちは集中開封室から外に出て店内へと戻る。
「このヘッドカードは一見、攻撃的なように見えるが…その実、防御的でもある。押しだけでなく、引きも大事だ。」
「うん!わかったよ、おじさん!」
店内に戻ったら意外な光景を華凛たちは目の当たりにした。
Mr.シルバーが二人の子供にティーチングをしていた。
「ん?おぉっ、華凛君たち。開封、終わったのかい?」
Mr.シルバーは振り返り、華凛たちを見た。
「う、うん。終わったけど…。」
「何してはりますのん?」
「何、この子たちがデュエル・デュラハンのカードゲームで遊んでいてね…。カード効果に悩まされていたようだから、見兼ねてついティーチングしてしまったのだよ。」
Mr.シルバーは顎に手を当てて華凛たちを見る。
「ふむ…。どうやら、手応えはあったようだな…。ならば、私の役目はここまでだ。今日はここで別れよう。私はまだこの子たちを教え導かねばならないからね…。」
「…らしいぞ、華凛?」
「そっか…。わかった。じゃあ、行こっか。」
颯と素子は店内から出るが、華凛はMr.シルバーに近寄った。
「…ねぇ、Mr.シルバー。」
「ん?何だい、華凛君?まだ何か…?」
華凛は何度も折り畳んだハンカチでレアフレームを左手で握っており、右手に持ち変えると同時にMr.シルバーの左手に当てる。
レアフレームは華凛とMr.シルバーの情報を読み取り、絵柄がついた。
「…ほう、これは驚いたな…。」
「ふふっ、切り札ゲット♪もしかしたら、これがジョーカーになり得るかもね?」
華凛は口の前に絵柄のついたカードを配置し、笑みを浮かべた。その後、振り返って歩き去る。
「…その行動は予想していなかった…。ふふっ、素晴らしい欺きだ…!やはり君は食わせ者だよ、華凛君…!」
背後で何やらMr.シルバーが喜んでいたが、華凛は無視して颯と素子の元へと走った。




