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20章 パック開封の儀

 突然現れたMr.シルバーと共に行動する事になった華凛たちは渋々、デュエル・デュラハン専門店のある五階までついて行った。


「さぁ、ここだよ、華凛君。ここに君を連れて来たかった。じゃあ、早速入店しようか。」

「はーい…。」


 華凛は露骨にテンション低めで素子と颯と共に入店した。ゴーストは人がいる店内に入るため、静かになった。

 バトルメインの専門店だからか、対戦用モニターやフィギュアや本などがたくさん置いてあった。


「わぁ〜っ、グッズがこんなにたくさん…!さすが流行のデュエル・デュラハン、あまりの情報量に何だか圧倒されそう…!」


 テンションが低かった華凛も思わずテンションが上がって目を輝かせた。


「ふむ、いいぞ。熱が入ってきたようだな。さぁ、こっちだ、華凛君。」


 Mr.シルバーについて行き、カードパック売り場に来た。


「よし、特別大サービスだよ、華凛君たち。一人につき1BOX、私が買ってあげよう。」

「えっ?」「ガチか!?」「ほんまなん?」


 華凛たちはMr.シルバーの意外な太っ腹さに一斉に驚いた。


「元老紳士殿、どういうつもりだ?あれか、餌付けか?勇者を餌付けするとかただじゃおかんぞ。」

「何、私も一ファンとして、このデュエル・デュラハンというゲームの奥深さを気に入っているのさ。ファンが増えるのならば、それは喜ばしい事だ。そのためなら、お金は惜しまないさ。」

「ほんまなん?とか言っといて、レジで支払う前にばっくれるんやないやろうね?」


 颯の次に素子がMr.シルバーを警戒する。


「何で敵に塩を送るような真似を…?」

「敵、か…。華凛君、私はね。君の敵になったつもりはないよ。」

「えっ?」

「君たちが今後目指そうとする場所は危険極まりない場所の可能性がある…。このまま突き進むと将来的に命を落としてしまうかもしれない…。それを避けたいから、私は君の前に関門として立ち塞がったんだ。」


 Mr.シルバーは華凛の右肩に手を置いた。


「君たちがどんな困難にぶつかろうとも蹴散らす力が得られるのなら、それは喜ばしい事だ。言っただろう、華凛君?私は君の将来性を買っているのだと。君の探究心という才能を開花させるためならどんな事でも惜しまないさ。」

「Mr.、シルバー…。」


 華凛の目にはMr.シルバーの目は気のせいか、いつもとは違って冷たい青ではなく、鮮やかな青のように見えた。


「よ、よく言うわよ!私を悪の道に誘いたいとか言ってたくせに…!」

「ははっ、これは手厳しいな。仕方ない、言葉ではなく、姿勢で君の心を射止めてみせよう。」


 華凛はぐぬぬ、っと歯を食い縛った。


「こ、心を許しちゃ駄目やで、華凛ちゃん!何か企んでおるんや、きっと!」

「ありがとう、素子ちゃん。大丈夫。私、警戒心は解かないから…!で、でも、貰うものはもらってあげる!その代わり、後悔しても知らないんだからっ!」


 華凛は啖呵は切ったものの、結局恵みは受け取って何だかかっこ悪くないか?と内心思いつつも恥じらいを我慢し、振り返って気持ちを切り替えてパックを見た。


「えっと…変わった商品だね、これ…。パックの表紙にでかい文字しか書かれてないや…。」


 華凛は金網にかけられている、レジに持っていく用の申込み札を手を取る。基本的にはこういうカードゲームパックは看板となるキャラクターが映っているはずだが、と華凛は思って何度も裏表を見る。


「シンプル・イズ・ベスト。それが式地博士の口癖でね。彼のその姿勢が商品にもよく現れているのだよ。」

「華凛、こればっかりは買ってからのお楽しみだ。」


 Mr.シルバーと颯は共に腕を組んで華凛を見る。


「そ、そうなの…?それじゃあ、バトルパックの札を…。颯ちゃんもバトルパックだよね?」

「無論。」

「華凛君、レジで個数を言えばいいから、札は一つでいいんだよ。素子君はキュアパックがいいね。よし、会計を済ませて来よう。」


 そう言うとMr.シルバーはレジへと向かった。一応警戒して確認したが、本当に支払っていた。

 Mr.シルバーは支払いを終えて戻って来る。


「お待たせ、華凛君たち。さ、受け取りたまえ。」


 Mr.シルバーは華凛たちに箱を手渡していく。


「早速開けてみるといい。開封の儀というやつだ。」

「えっ?ここで?」

「この専門店には集中開封室が設けられている。あそこにあるな。」

「しゅ、集中開封室…?そんな病院みたいな部屋が?」


 華凛は聞き覚えの全くない言葉を聞いて不思議がりながらMr.シルバーについていった。


「部屋に入る前に華凛君、例を見せてあげよう。これは君に説明するために買っておいた1パックだ。」


 Mr.シルバーはパックを右手で持つ。宙にハサミを出現させてパックの上部分を切り、カード七枚を宙に浮かせて回転させる。


「あ、あれ?絵柄が何もない…?白紙…?」


 カードは裏面にはデュエル・デュラハンのロゴがついているが、表面は白紙だった。


「よく見ていたまえ、華凛君。間違いなく驚くぞ。」


 そう言うとMr.シルバーはカードを一枚手に取ってみせた。手に取った途端、カードが光り出し、アローヘッドの絵柄が出現した。


「えっ!?何?手品?」


 華凛の初々しい反応を見て颯と素子も思わず笑みを浮かべていた。


「驚いたかい、華凛君?これがデュエル・デュラハンならではのパック開封の楽しみさ。このカードは手に持った者を持ち主として初めて認識した後、持ち主の色んな情報を読み取って初めて絵柄や効果となって現れるのだよ。」

「えっ?つまり、その人ならではの…オリジナルカードが作れちゃうって事?」

「その通りさ。」

「すごい…!そんな近未来的なカードゲームがあるなんて…。」


 華凛はカードの仕組みにも驚いたが、これを作った式地博士もすごいと思った。更に華凛は仕組みまで気になってきた。


「更にごく稀に『レアフレームカード』が入っていてね。それを引ければ更に強力なオリジナルレアヘッドカードを作る事ができる。」

「うちらもまだレアヘッドは当てた事ないねん。」

「この箱で当てるのも一興よ。」

「へぇっ…。何だか、人気の秘密がわかった気がする…。」


 華凛はどんどんカードに興味が出てきた。


「…あっ!じゃあ、集中開封室って…!」

「そう、プレイヤーの中には誰にも邪魔されずに静かな環境でカードを剥きたいという人もいる。そのための場所なんだ、ここは。だから、雑念や雑音が入らないように防音室になっている。」

「もしかして、私にこの店を勧めてくれたのって…。」

「そうさ。君には真剣にヘッドパーツを作ってもらいたかったからね。ここの集中開封室は快適な空間となっている。ここで開けるのが一番良いんだ。」

「なるほど、Solve the case…!」


 華凛は合点が行き、右手の指を鳴らした。


「よぉし、早速開けてみよう!行こう、颯ちゃん、素子ちゃん!パック開封というミステリー、私たちが受けて立ちます!」

「ええやん!燃えてきたな、華凛ちゃん!」

「誰が一番強いカードになるか、見ものである!」


 華凛たちは早速、集中開封室に入ろうとする。


「私はここで待っている。君たちの切り札を見てしまうのはフェアではないからね。ま、君たちでなければこんな拘りは持たないがね…。」

「わかった! …あの、Mr.シルバー。」


 颯と素子は先に個室に入ったが、華凛は立ち止まった。


「ん?何かね、華凛君?」

「…教えてくれてありがとう!」


 華凛がお礼を言うとMr.シルバーはきょとんとしていた。

 華凛は中に入り、個室を探す。


「…ふっ、ありがとう…か…。私には似つかわしくない言葉を送るとは…。やはり君は面白い子だ、華凛君…。」


 Mr.シルバーの言葉を背中に受けながら、華凛は良さそうな個室を見つけ、中に入った。

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