19章 シルバーデート
今日もほとんど教師の自己紹介で授業は次々と終わっていく。さすがに明日からはちゃんとした授業が始まり出すだろう。
給食も食べ終え、五時間目も終えてあっという間に放課後になった。
「よし、ほなら予定通り御頭デパートに行こか。」
「昨日駄菓子買ったばかりだからな…。私は付き合うだけであまり買わんでおこう。」
「…と思っててもつい買っちゃうような場所がデパートなんだよ、颯ちゃん。」
「確かに…。」
颯は華凛の言い分に納得し、腕を組んで頷いた。
華凛たちは教室を後にし、校門を出た。
「連日で交通費払うのは避けたいし、今日は歩いて行こうか。ちょっと歩くけど、ここからデパートまでそんなに距離はない方だし。」
「せやね。華凛ちゃんに賛成や。」
「異議なし。」
三人の意見は一致したため、話をしながら御頭デパートまで歩く事にした。華凛は鞄の中からデバイスを取り出した。
「いつも窮屈な思いさせてごめんね、ゴースト。もう話して大丈夫だよ?」
「大丈夫。待つのは慣れっこさ。」
華凛はリュックのショルダーにデバイスを装着した。
「私服の中学やから、帰りに寄り道できるのが御頭中学のええところやね。」
「まぁ、その代わり自転車通学は特別許可が必要だからこうやって歩いて行かないといけないけどな。」
「財布の持ち込みも許されてるし、規則の緩さが人気の学校だよね。」
四人は御頭中学の話や、道中に目に入ったお店の話。新しく開店した店に興味を持ちながらも着々とデパートへと歩を進めた。
「御頭デパートって、デュエル・デュラハン関係のお店ってどれくらいあるの?」
華凛の家はほとんど近くのスーパーやコンビニが買い出し拠点で御頭デパートへは休日にたまに行くくらいであまりデパート内のお店には詳しくなかった。なので華凛は颯と素子に聞いてみた。
「確か、専門店は三つくらいあったな。」
「専門店でなくても、玩具屋さんやゲーム屋さんにもあるで?」
「はえぇ〜っ、さすが今や流行のデュエル・デュラハン。結構あるんだね。」
「生みの親の式地博士が住んでる街だしな。デュエル・デュラハンの聖地になりつつあるな、この街は。」
「よぉ〜し、待っててね、ゴースト!今日中にはゴーストの仲間のデュエル・デュラハンが作れちゃうくらい私、頑張っちゃうから!」
「その意気だよ、華凛!頑張って!」
華凛はやる気十分に歩いていると御頭デパートの入口の自動ドアまで辿り着けた。
「到ちゃぁ〜く!さて、まずはどこから寄る?」
「ほなら、下の階から順番に行こか。」
「じゃあ、三階にある専門店からだな。」
華凛たちがデパート内に入ると最初にイベント用の大広間が目に飛び込んで来る。
天井には大きな動物のバルーンが多数浮いている。
現在はご当地ヒーロー『ジャスティスクロー』のヒーローショーが行われていた。
「おぉっ!?我が憧れのヒーロー、ジャスティスクローではないか!?華凛、素子、一緒に見よ見よ!ね?」
颯は頬を染めて大はしゃぎし、華凛と素子の手を引っ張った。
普段は男口調の颯は興奮すると幼い子供のようになる。
「わ、わかったから、颯ちゃん!いきなり本来の目的から脱線かぁ〜っ…!先が思いやられるなぁ〜っ…!」
テンション爆上がりの颯のとなりで華凛と素子はしばらくヒーローショーを見た。
「はい、これから握手会に入ります!皆さん、並んで下さぁ〜い!」
「おい、次のヨガの体験コーナーの準備急ぐぞ…!片付けだ、片付け!」
慌ただしいスタッフたちが目に入る中、颯は目をキラキラさせて何度も華凛と素子を見る。
「はい、わかりました、颯ちゃん。付き合います…。」
颯に付き合う形で華凛と素子は列に並んだ。待っている最中に壁に貼ってあるポスターを華凛は眺めた。
ジャスティスクローのポスターはもちろんの事、世界的に有名なファッションデザイナー、グルーナ・フリーベルなどのポスターもたくさん貼ってある。
華凛たちはジャスティスクローとの握手を終え、本来の目的に戻る。
「いやぁ〜っ…!すまぬな、華凛!素子!憧れを前にして、つい我を忘れてしまった…!」
「いいよ、別に。ジャスティスクロー自体はかっこいいしさ。私のデュエル・デュラハン制作のイメージにもなったかもよ?」
「おぉっ、華凛!良き友よ!素子の冷たい視線とはえらい違いだ!」
颯は感動の余り、華凛に抱きついた。確かに素子はジト目で颯を見ていた。
「うち、どちらかと言うと女児向けヒロイン派やねん。」
「あぁ、わかる。女児向けヒロイン物も歴史が長くて良いよね。アイドル物も好きだったな、私。アイドルとバトルヒロイン物どっちも合わさったりしたのもあってさ。」
「せやろ、華凛ちゃぁ〜ん!」
華凛が素子への理解を示すと素子も華凛に抱きついて来た。
「モテモテだね、華凛。華凛は結構褒め上手。」
デバイス内からゴーストが話し掛ける。
「二人共、本来の目的を覚えてるかなぁーっ…?」
華凛は糸目になって立ち尽くしていた。
しばらくしてやっと華凛は解放され、三人でエスカレーターに乗り、三階に着いた。奥の方に進むと目当てのデュエル・デュラハン専門店にやって来た。
「ここ?」
「ここ。」
「せやせや。早速中に入ろか。」
「待ちたまえ、華凛君。ここは育成がメインのデュエル・デュラハンのグッズが主に置いてある場所だ。君の目当ての物は五階にあると思うよ。」
華凛の背後から突然聞きたくない声が聞こえて来た。華凛たちは三人でゆっくりと振り返るとMr.シルバーが立っていた。
「や、華凛君。昨日ぶりだな。」
「いや、馴れ馴れしいにも程があらへんかっ!?」
素子は勢いよくMr.シルバーを指差す。
「奇遇だなぁっ、こんな所で会うなんて。君たちとは不思議な縁を感じるよ。」
「嘘つけ!尾行してただろ!このストーカー老紳士殿!」
続けて颯も指を差す。
「オマエ、性懲りも無く…!」
ゴーストもデバイスの画面越しからMr.シルバーを警戒する。
「まさか、ここで課題を…!?」
華凛は急いで周りを見る。平日の夕方とはいえ、人は決して少なくはない。
「さて、どうかな?抜き打ちで課題を与えるかもしれないし、ただ華凛君たちと親睦を深めたいだけかもしれない。そうだなぁっ、華凛君とデートしたいとか?」
「ひえっ…!?」
華凛は青ざめてドン引きしてしまった。
「ふむ、怖がらせてしまったか…。なら…。」
Mr.シルバーは自分の顔の前に両手を配置した後、何度も顔の前で両手を振る。すると、若々しい青年の顔になった。
「なっ…!?」
「急にイケメンにイメチェンしよった!?」
「老紳士殿が元老紳士殿になった!?」
華凛たちはMr.シルバーの急な顔面変化を見て取り乱す。
「私にとってあまり顔は意味を持たない。モリアーティ教授が私のモチーフだからか、老人の見た目の方が落ち着く、というだけだよ。普段から老人の顔をしているのはね。」
喋った途端、声も若返っていた。
「Mr.シルバー、あなたは一体…?」
「ミステリアスな私が気になるかい、華凛君?」
華凛は嫌悪感を感じさせるギャグ顔になり、右手刀を思いっきり横に振って全力で否定して見せた。
「おやおや、随分嫌われてしまったようだ…。ここは名誉挽回、華凛君に良いところを見せなくてはな!さぁ、デートと行こうじゃないか、華凛君!」
Mr.シルバーは張り切って歩き出した。
「…どうするよ、華凛…?」
「間違いなく何か企んでるで、あの元お爺さん…。」
華凛たちはその場で円陣を組み、小声で話す。
「…どの道、これはMr.シルバーからの新たな挑戦かもしれない…!ならば、敢えて誘いに乗ってみよう!Mr.シルバーの謎の誘いというミステリー、…デートは嫌だけどぉっ…わ、私たちが引き受けます!」
華凛はMr.シルバーの背中に指差した。Mr.シルバーは振り返り、ウインクをして見せた。
「ひえっ…!?」
その瞬間、華凛の顔は青ざめ、また引いた。




