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15章 諦め切れない研究会

「ほう、なかなか面白いデュエル・デュラハンだ…。デュラハンはあくまで武器に徹し、パートナーがメインで戦うのか…。」


 激!勇者丸・刀モードを構えた颯と相対するMr.シルバーとクローブーメランラゴウ。Mr.シルバーは顎に手を当てて颯の持つデュラハンを観察している。


「だが、君自体はただの人。ここはデュエル・デュラハンとは違って現実世界だ。ゲームと違って通常の身体能力しかない君には宝の持ち腐れなのではないかな?」

「ふっふっ…!甘いな、老紳士殿…!それは私を軽んじ過ぎだぞ?あんたは私の潜在能力を甘く見ている…!」

「何…?」

「今、教えてやろう…!私は上から77・53・76…だ!」


 颯は笑みを浮かべ、左手の親指で自分を指差した。


「むっ、その数値は…!?」

「颯ちゃん、人前で自分のスリーサイズを軽々と言うもんやないって日頃から言うてるやろ!」

「あははっ、言わなくてもいいのに…。」


 頬を膨らませて怒る素子のとなりで華凛はジト目で左頬を掻いた。


「何、私も何度も言っているだろう、素子?私は将来的にここから更に数値を上げていくのだ。主にバストのな!別に言ってしまっても構わんだろう?」

「そう言う問題やないって!」

「な、何と破廉恥なガールだ…。」

「破廉恥にして、破天荒…!それが私のスタイルよ!さぁ、いざ参る!」


 颯は前に駆け、クローブーメランラゴウの懐に一瞬で移動した。


「なっ!?速い…!?」

「おぉっ!?私も驚いているぞぉっ!?」


 颯はそのままビーム刀を振った。クローブーメランラゴウは両腕を交差し、何とか防ぐ。


「逃がさん!追撃ぃっ!」


 颯はジャンプし、即座にクローブーメランラゴウの背後を取った。ビーム刃で横一閃し、クローブーメランラゴウを背中から斬った。


「ラゴウ!」


 Mr.シルバーが叫ぶと同時にクローブーメランラゴウはその場でしゃがむ。


「ヒット&アウェーイ!」


 颯はそう叫ぶとMr.シルバーとクローブーメランラゴウから一瞬で距離を取った。


「…なるほど、どうやらそのデュラハンは君の身体能力を上げてくれているようだね…。まぁ、そうでないと現実世界じゃ使い物にならないか…。」

「うむ、親切設計で助かったぞ。更にこんな事もできる!」


 颯はスマホを操作し、激!勇者丸のヘッドをチェンジした。ビーム刀の形状が変化し、炎の刃となった。


「…! 刀身が変わっただと?」

「驚くのは…まだ、早い!いざ、瞬足!」


 颯は高速移動し、炎の刃を素早く振って色んな角度からクローブーメランラゴウに斬り掛かる。

 クローブーメランラゴウは鉤爪で襲って来る炎の刃を防いでいく。

 

「ふふん、老紳士殿はさっきから紙を使って戦っている!私とラゴウの戦いを邪魔しようもんなら焼き尽くしてくれるわ!それ、スラッシュ!」


 颯はクローブーメランラゴウの隙を見つけ出し、右脇腹を横一閃して通り過ぎた。そこからすぐにバク転し、クローブーメランラゴウの背中をぶった斬った。


「喰らえ、必殺!ハヤテ百文字斬りぃっ!」


 颯は高速でクローブーメランラゴウを何度も斬った後、華凛と素子の元に一瞬で戻って来た。


「ふん、面白いものもつまらないものも全て斬ってしまった…。」


 颯が炎の刀を鞘に納めた瞬間、クローブーメランラゴウは複数の斬撃に襲われ、地面に膝をついた。クローブーメランが時間切れとなり、元の姿に戻る。


「…ふむ、まずは一人は合格点と言ったところか…。下がれ、ラゴウ。」


 Mr.シルバーがそう言うとラゴウは姿を消した。


「華凛君、良い友を持ったな…。今日の所はこれで引くとしよう。その様子では、まだ君は私を説き伏せられる(ことわり)を思いつけそうにないからね。」

「待て!逃げるか、老紳士殿!」


 颯は抜刀の構えを取ろうとするが、同時にふらついた。


「おっ、と…!?」

「無理をするな、颯君。君は急な身体強化にまだ慣れていないようだからね…。さて、華凛君も素子君も颯君の覚醒に続く事ができるかな?」


 Mr.シルバーは後ろを向き、去ろうとする。


「…待って、Mr.シルバー!」


 華凛は大声を上げてMr.シルバーを静止した。


「…何だい、華凛君?」


 Mr.シルバーは振り返らずに華凛の言葉を聞く。


「確かに私はまだあなたに言い返せる程の(ことわり)を持ち合わせていない…。だけど、確かな事は御頭(おがしら)ミステリー研究会を解散するなんて事は絶対にないって事!」


 Mr.シルバーは何も喋らずに黙って聞いていた。


「確かにゴーストや颯ちゃん、あなたやラゴウの力を目の当たりにした今、今後私たちは危険な道を歩む事もあるかもしれない…。」


 華凛は非力な自分を見立てて自分の右平手を見る。


「けど、そこで諦めてしまったら、その先にある真実や大事な物を取り損なってしまうかもしれないから…!もしかしたら、追い求める真実の先にゴーストや素子ちゃん、颯ちゃんみたいな人たちとの素敵な出会いや発見があるかもしれない…!私はそれを捨てきれない…!」


 華凛は高まる心臓の鼓動を抑えるために左手を胸に当てた。


「見てなさい、Mr.シルバー!私たちは必ず、自分たちの身を守る術を見つけてみせる!うまく言えないけど…これは間違いなく、私の本心だから…!」


 華凛は右手でMr.シルバーを指差した。


「あなたの挑戦状というミステリー、私たちが受け持ちます!」


 Mr.シルバーは振り返り、華凛を見る。華凛の真剣な眼差しとMr.シルバーの冷たい眼差しが見つめ合った。


「…失敗するのは人の常だが、失敗を悟りて挽回できる者が偉大なのだ、か…。」

「…!? その言葉って…?」


 シャーロック・ホームズの名台詞の一つだと華凛はすぐに気づけた。


「シャーロック・ホームズの言葉さ。私はあまり好きではないのだかね…。」

「…? それって…?」

「読めたで、Mr.シルバー!あんさんは地獄から蘇りしモリアーティ教授や!」


 素子が急に勢いで推理を披露し、Mr.シルバーに向かって自信満々に右手で指差した。しばらく沈黙が続く。


「…なぁーんて、言ってみたりしたんやけどぉっ…。」

「…いや、あながち外れではないよ、素子君。」

「ガチで!?」


 Mr.シルバーの意外な返答に華凛たちは驚いた。


「確かに私はモリアーティ教授を元にはしているが、本人ではない。私がモリアーティ教授を名乗るなど、本人に失礼だよ。」

「…? どういう事…?」


 華凛にはMr.シルバーの言ってる事がさっぱりだった。


「そこは君の得意の推理で解き明かしてみたまえ、ミステリアスな私の事をね…。それでは華凛君たち、私は君たちに度々課題を与える、抜き打ちでね。見せてもらうよ、君たちの真実へと立ち向かうための覚悟をね…。」


 そう言うとMr.シルバーは後ろにステップを踏んであっという間に華凛たちの前から姿を消した。

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