第七話: 現実と夢の境界
「夢路、大丈夫?」
隣から響の心配そうな声が聞こえた。
「あ、うん……ちょっと混乱してるだけ」
「そりゃそうだよね」響は小声で言った。「俺も頭がパニックになってる。あんなこと、普通じゃありえないもん」
なぜ俺の力が通用しなかったんだ?あの男は何者なんだ?
昼休みになると、俺と響は屋上に向かった。誰もいない場所で、昨日のことについて話し合うためだ。
「響、本当に昨日の夢を覚えてるんだよな?」
「うん」響は真剣な表情でうなずいた。「夢路が黒い男に殴られて、頬を押さえてる姿。すごく鮮明に覚えてる」
俺は安堵した。これで確実に夢を共有していることがわかった。でも同時に、新たな疑問が湧いてくる。
「でも、なんで俺たちは夢を共有できるんだろう?」
「うーん……」響は考え込んだ。「ネットで調べた明晰夢の情報には、そんなこと書いてなかったけど……」
「俺も調べたけど、共有夢なんて都市伝説程度の扱いだった」
俺たちは黙り込んだ。科学的にありえないことが起きている。でも、現実に起きているんだ。
「あ、そうそう」響が何かを思い出したように手を叩いた。「彩ちゃんも本当の人なんだよね?」
「多分そうだと思う」俺はうなずいた。「響と同じように、俺が想像できないような話し方をしてたから」
「どんな子なの?」
「クールというか……淡々としてる」
「へー」響は興味深そうに言った。「会ってみたいな」
俺も彩ともう一度話したかった。今度は謎の男に邪魔されずに、ゆっくりと。
そのとき、ふと響が重要なことを言った。
「でも、あの男が一番問題だよね」
「ああ……」
俺は昨夜の出来事を思い出した。あの圧倒的な力の差。自分の能力が全く通用しなかった屈辱。
「あいつ、『夢渡りの民』って言ってたよな」
「うん。俺たちのことを指してたっぽいけど……夢渡りの民って何だろう?」
俺は考えを巡らせた。
「明晰夢を見ることができる人のことを言うのかな?」
「それしか考えられないよね」響も同意した。「でも、なんで知ってたんだろう?俺たちが明晰夢を使えることを」
「さあ……」
俺は首を振った。あの男が何者で、なぜ俺たちを襲ったのか、全くわからない。






