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ユメトイアウ  作者: はねのこ
交差点編
2/10

第二話: 夢への扉

一か月が過ぎた。


毎日、明晰夢を見るための練習を続けた。夢日記をつけて、リアリティチェックを習慣にして、瞑想も試した。最初は全然うまくいかなくて、普通の夢すら覚えていない日が続いた。


でも、諦めなかった。現実が退屈すぎて、明晰夢への憧れが日に日に強くなっていったからだ。


そして、ついにその日が来た。


「あれ……これ、夢だ」


夢の中で俺は学校の廊下に立っていた。でも何かがおかしい。廊下が異常に長くて、教室のドアが無限に続いている。現実にはありえない光景。


「やった!明晰夢だ!」


興奮して、俺は走り出した。そして勢いよく窓から飛び出す。


「うおおおお!」


空を飛んでいる。風を感じながら、雲の上を駆け抜ける。こんな感覚、現実では絶対に味わえない。


「街も作ってみよう!」


手を伸ばすと、何もない空間に建物が現れた。俺の理想の街。高いビル、きれいな川、緑豊かな公園。すべてが思い通りに――


「あっ」


目が覚めた。


「くそ、もう終わり?」


時計を見ると、まだ夜中の二時過ぎだった。興奮しすぎて目が覚めちゃったのか。


でも、嬉しかった。ついに明晰夢を見ることができたんだ。


「夢だと自覚すると起きちゃうのか……もう少し訓練が必要だな」


そう呟きながら、俺は再び眠りについた。

それからさらに一か月。


俺の明晰夢のスキルは格段に上がった。夢の中にとどまる時間も長くなったし、いろんなことができるようになった。


空を飛ぶのはお手の物。好きな場所を創り出すのも簡単。憧れていた芸能人と話すことだってできる。ゲームの世界に入り込んで、主人公になることもある。


現実では味わえない刺激的な毎日が、夢の中で待っている。


でも……


「なんか、一人だとつまらないな」


最近、そう思うようになった。


最初は理想を実現できて楽しかった。でも、思い通りに行きすぎるのも面白くない。すべてが自分の思考の産物だから、予想外の出来事が起こらないんだ。


サプライズがない。ドキドキがない。


「他の人と一緒に夢を見れたらいいのに」


でも、それは無理だ。夢は個人的なものだから。


……待てよ。


「他の人と出会える場所を、夢の中に作ったらどうだろう?」


突然、アイデアが浮かんだ。


もちろん、実際に他の人が来るわけじゃない。でも、そんな場所があると想像するだけで、何かが変わるかもしれない。


「よし、やってみよう」


その夜、俺は明晰夢の中で一つのベンチを作った。シンプルな木製のベンチ。周りには街灯が一つだけ。他には何もない、静かな空間。


「ここの名前は何にしよう?」


考えながら、俺はベンチに座った。


「他者と他者が出会う場所……交差点」


そうだ。人と人が出会う場所。いろんな人生が交わる場所。


「ここの名前は『交差点』にしよう」


俺は空に向かって宣言した。


「いつか誰かが来てくれるかもしれない」


そんな淡い期待を抱きながら、俺は夢の交差点で朝を待った。

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