転生者マリアンヌ2
「マリアンヌ・グロー!何度言ったらわかるのです?」
ヒステリックな教師の声が教室に響き渡る。
「背筋をまっすぐに伸ばして歩くだけなのに、なぜできないのです?」
くすくす笑いが広がる。
マリアンヌは顔を真っ赤にしてぎゅっとスカートを握る。スカートを握ると裾がやや上に持ちあがるので膝が丸見えになり、同じフロアの離れたところで授業を受けている男子生徒がチラチラと熱い視線を寄せてくる。
「そもそも!なぜそんなに短いスカートを着ているのです?足首より上を淑女は見せてはなりません。」
「校則にスカート丈は足首までって書いてないですよね?」
「マナーとして一般的だからわざわざ校則に書いていないだけです!」
「古臭いマナーなんて不要でしょう?長いスカートだと歩きにくいし。女性だけがこうしなさいああしなさいって男女不平等だし。許されないと思いますう。…ね、あなたもそう思うでしょう?」
マリアンヌの隣にいた女生徒が急に話を振られてびくっと飛び上がる。
「…あ。でも…。マナーを守らないとお母様に怒られるし…。」
「若い世代の考えが理解できないのはどこの世界も一緒ってことよね?」
「…?」
マナーの教師だけでなく、他の科目も多くの教師たちがマリアンヌの教育に疲れていく。
何か注意をしても「古臭い」「意味わからない」「必要ないでしょう」とかわされ、まともに受けてくれないから。
そのため、教師たちはマリアンヌの教育を放棄して居ない者として扱うようになる。
それに反して、1年生の女生徒の中でマリアンヌに心酔する女生徒達も少しずつ増えていった。
「なぜ身分で差が付くの?」
「なぜ女性だからって制限されるの?」
最初の頃、彼女に心酔したのはマリアンヌと同じDクラスの生徒ばかりだった。
彼らは男爵か子爵家の、それも領地を持たない下位の貴族ばかり。だから、影響力は小さいはずだった。
それなのに途中からなぜか2年A組のイザベラ・バーリー侯爵令嬢とその取り巻きゾフィー・リード伯爵令嬢がこのグループに加わった後、マリアンヌの影響力が少しずつ増していった。
マリアンヌ一人だったらここまで自分の勢力を拡大できなかっただろう。
イザベラがマリアンヌに「こうしたほうが高位の貴族には受けが良くてよ?」と悪知恵をささやき、マリアンヌがそれを受け入れた結果、少しずつ学院内の空気が悪くなっていく。
マリアンヌは笑う。
「イザベラってゲームでは主人公のサポーターキャラじゃん。ちゃんと今、わたしのサポートしてくれてるし、やっぱりここは『聖パラ』の世界だよね?絶対に。」