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卒業式

 学院祭でマリアンヌ・グローが王家への反逆罪で逮捕され退学になった。

彼女は死罪と公表されたけれど、国王陛下から実は生きていると聞かされて驚く。

王家の秘密として他言無用と命じられ、

「まだ王族ではございませんが?」

とうっかり口を滑らせたら、陛下に叱られてしまった。

「すでにそなたは儂の娘。王家の一員だ。正式には3か月後だとしても、だ。」

と。


マリアンヌの魅了の力についても他言無用で教えてもらえたので、なぜ彼女に下級貴族が付き従っていたかよくわかったし、わたくしが王太子妃に相応しくないという噂が根も葉もない嘘で固められていたことも理解したけれど、だからといって、その噂が流布していた半年ほどの間、辛くなかったわけではない。

だから、国王陛下の「すでに娘。」と言ってくださったのが、わたくしには涙がでるほどうれしかった。


 マリアンヌ退学後の学院は、今までの騒ぎが嘘のように落ち着き、魅了の術が解けた下級貴族の生徒達が集団で謝罪に来てくれてそれを許せば、また、わたくしの周りは賑やかになり。歩くだけで歓声やため息が聞こえる毎日が戻ってきた。


それからの3か月はあっという間に過ぎて今日は卒業式。

学院を卒業してものんびり過ごすわけにはいきそうもない。

半年後には結婚式があって王太子妃になるので、明日からはそのための準備で忙しくなるはずだ。



 卒業式は厳かな雰囲気を終始漂わせながらも午前中に予定通り終了し、卒業生とその両親は一斉に急ぎ帰宅する。

帰宅後は『成人した貴族』としての正装に着替えて夜、王宮で開かれる卒業パーティに参加するのだ。

わたくしも式が終わるとウィリアムに軽い会釈をしただけで両親に引きずられるようにして急ぎ帰宅させられた。


この卒業パーティは一種の無礼講…というか、学院の生徒として身分を気にしないで過ごせる最後の機会。

学院でこそ身分差は気にしないで良いという規則があったけれど、学院を卒業した後は歴然とした身分の壁を嫌でも意識するようになる。

例えば、身分の低い者が上位者に話しかけることができないし、茶会や夜会も同じ階級の貴族で集まるため違う階級の者が呼ばれることは稀になる。

王宮で開かれるパーティでは全貴族が一堂に集うけれど、年に数回程度。

学院では友達だったから卒業後も友達でいられるかというとそうはいかない壁がどうしてもあるのだ……。




「今日からあなたは王太子の婚約者として社交界に正式に参加することになります。その最初の日、恥ずかしくないよう準備しなくては。」

両親に拉致されるように自宅に戻れば、すぐに軽食を取らされ、入浴、全身マッサージ、化粧の後での着付けと大勢の侍女の手によってわたくしは飾り立てられていく。


貴族の子供は学院卒業後の初めての誕生月にデビュタントをするのだけれど、わたくしは実質、今日がデビュタントになるそうだ。

もちろん、2か月後の誕生日にはちゃんとデビュタントの衣装を着て王族の皆様に挨拶する機会をいただけるけれど……。


 長い髪は複雑な編み込みがされてアップにされる。編み込みの中からは、ところどころ小さなダイヤモンドのピンが水滴のように輝く。

 ドレスは王太子から贈られたもので、コーンフラワーブルーの生地に金糸でダマスク柄の刺繍がされている。

…コーンフラワーブルーはウィリアムの瞳の色。金糸は髪の色……。

パフスリーブの袖が二の腕を隠し肘からは腕にぴったりの細い袖が手首まで隠す。

アクセサリーは、一連の短い真珠のネックレスと1粒真珠のイヤリングというシンプルなもの。未成年でありドレスが豪華なのであえて控えてある。

このアクセサリーは母の公爵夫人が若い頃に身に着けていたものを譲り受けたもの。

その母も自分の母…祖母から譲られたのだそうだ。

代々伝わるこのアクセサリーを大切にして、わたくしも自分の子供にいつか譲ろう…。




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