地下牢にて1
マリアンヌが目覚めたとき、自分がどこにいるかわからなかった。
部屋にある天井らしきものがなく、遥か高いところからつらら上のごつごつした岩が突き出ている。
ふと、中学の卒業旅行で行った鍾乳洞の天井を思い出した。
ふらりと起きあがって顔を正面に向ければ、高さ3メートルほどの銀色の縦格子が目にとまり、ぎょっとして四方を見渡せばその縦格子で四方が囲まれた部屋に居た。
銀色の縦格子は幅が10センチくらいの太い四角い棒で、鏡のように輝いている。
近づいた時、自分の顔が格子に映って彼女は悲鳴を上げた。
「何これえ!?」
格子に映っている自分の顔や首筋に真っ黒いツタ状の模様が浮き上がっている。
慌ててあちこち自分の身体を見回せば、手も腕も脚も…すべて同じ模様。
いつの間に着替えさせられたのか、自分が着ている服は貫頭衣になっていたので胸やお腹も覗き込めば、全身に模様がある。
「…刺青?…全身に?嘘でしょう!?酷い!わたしが何をしたって言うの!?」
喚きながらも檻の外を見れば、ただっぴろい白い床が続いていて、霧がかかっているかのように先が見えない。見上げれば天井にごつごつした鍾乳石が突き出ている。
それだけで、何も無い白い空間。
「…どこよ。ここ。」
後ろを振り返れば、自分が今寝ていた寝台しか家具は無く、それも粗末なものだった。
石でできていてその上に薄い布団と薄い毛布。
その横に水洗トイレ。たったそれだけ。座るための椅子さえ無い。
檻には扉が1つ。ダメ元でそれを押せば、音も無く開いた。
「…鍵を掛け忘れたのかな?」
よし、逃げようと、辺りを見回すも出口がどこかわからない。ただただ白い霧で先が見えないのだ。
「とにかく、正面まっすぐ行ってみよう。」
マリアンヌは歩き出したけれど、それほど行かないうちに全身に尖ったものが突き刺さるような激痛が走り、その場に倒れ伏した。
どれくらい経ったのか、目を開ければ、先ほど寝ていた寝台の上に戻っている。
「え?…どういう…こと?」
もう一度、牢から出て今度は別の方角に向けて走り出せば、また、突然の激痛で意識を失い、気付けば寝台の上に居る。
「…逃げられない、魔法?」
牢から離れれば死んだ方がましなくらいの激痛が走る。
あの痛みは…もう、嫌だ…。
寝台の上で両ひざを抱え、顔を埋めながらマリアンヌは泣いた。
「なんで?なんでよぉ…。わたしはヒロインでしょう!?」




