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学院祭のダンスパーティ6(ウィリアムSide)

 今年で学院を卒業する自分としては、最後となる学院祭をロザモンドと一緒に回って楽しみたかったけれど、生徒会会長としての仕事が山積みでとうとう会場を回れなかった。

せめて、ロザモンド一人だけでも楽しんでおいで。と彼女には言ったけれど、ロザモンドも生徒会会計担当のため余裕はございません。と言われ、納得しかけたわたしの耳に、独り言のような小さな声が届く。

「…それに、ウィルと一緒でないんですもの。」


思わず、ロザモンドを抱きしめてしまいそうになったけれど、さっと彼女はわたしから離れて書棚の前に行ってしまった。

ちらりと見えた横顔は真っ赤になっていて。

ここに誰も居なかったら、きっと彼女を追いかけて、抱きしめて、口づけの雨を降らしていただろう…けれど、なんとか理性でぐっと抑える。

本当に最近のロザモンドは可愛すぎて、辛い…。


幸い、学院祭は無事にトラブル無く終わり、その後のダンスパーティが楽しく始まった。

さすがにダンスパーティが始まれば、生徒会役員も自由に動けるようになる。

終わった後の片づけは残るけれど。

役員の何人かが女生徒の手を引いてダンスに参加し始めたので、わたしもロザモンドと一緒に踊ろうと彼女の側に行きかけ、ホールが不穏に騒がしくなったことに眉をひそめた。

不規則で耳障りな靴音と、時々、小さな悲鳴が聞こえる方角を見れば、マリアンヌ・グローが道化師としか思えないど派手な格好でスカートをまくりあげて下品に歩いてくるのが見えた。踊っている生徒を突き飛ばしながら。



「王太子殿下に申し上げます!」

耳障りな甲高い声に、苛立ちが増す。

「…グロー嬢か。何かな?」

「ああ、皆。こちらを気にしないで、ダンスを楽しんでくれる?」


このような場で騒ぎを起こされたくなかったのだが。

だから、内輪で話ができるように配慮したつもりが彼女には伝わらず、マリアンヌはその後も大声で喚き散らす。

明らかにわたしに訴えているというよりも、全校生徒に訴えているのが明確だった。


そして。あろうことか。

とんでもない爆弾発言をしてくれた。

「ロザモンド様は王太子殿下の婚約者としてふさわしくありません!婚約を破棄すべきです!!」


すぐにマリアンヌを殺さなかった自分を誰か褒めてほしい。

仮に殺したとしても不敬罪が適用されて私には何も咎めは無いと断言できる。

それをしなかったのは、ロザモンドの目の前で人が死ぬのを見せたくなかったからだ。


この愚かな女(マリアンヌ)は、その後、いかに自分が苛められたかを得意げにまくしたてたけれど…。

誰が聞いても彼女が嘘つきか被害妄想のどちらかだとわかっただろう。

あまりにも内容がお粗末すぎた。


ホールに居た者達は初めの頃こそ驚いてマリアンヌの話を真剣に聞いていたけれど、途中から呆れや軽蔑が場を支配し、彼女の魅了にかかっている生徒以外はダンスパーティをむちゃくちゃにされていることへの怒りが見え始めてきたことに、わたしは気づいた。

そろそろマリアンヌを黙らせなければ。

その時、涼やかな声がホールの空気を変えた。


「指導と苛めの違いがわからないなんて、これだから下級貴族は下級貴族なのですわ。」

パラディン侯爵令嬢だった。

ロザモンドの親友であり、良き相談相手。

ちなみに、わたしもロザモンドも彼女の母親がマナー講師だ。

パラディン侯爵令嬢が気持ち良いほどにマリアンヌをぶった切ってくれたのが良い機会となり、わたしは騎士達にマリアンヌの捕縛を命じることができた。




パラディン侯爵令嬢にお礼を言えば、差し出がましい真似をいたしまして。とはにかむ。

その彼女を婚約者のロベルタ・ガーディア侯爵令息が「殿下。俺の婚約者ですよ?」とさらって行き。


ようやくわたしもロザモンドとの時間を取ることができた。

「ローズ。わたしと踊ってくれませんか?」

彼女の前に手を差し伸べれば、にっこりと微笑んだロザモンドがうなずいてくれる。


ホールに滑るように踊り出せば、楽団の音楽が一層華やかに変わる。


「頑張ったね。ローズ。」

「…何のことでしょう?」

「マリアンヌのことだよ。君を何度も貶していたけれど、君は少しも顔色を変えず毅然としていたじゃないか。本心は辛かっただろうに…。」

「そ、そんなこと。ございません。」

「わたしの前でまで無理しなくていいよ。…ね?」


ターンしざまにそっと彼女の額に口づければ、彼女はぱっと顔を赤く染めたけれど、すぐに目を伏せた。

涙がこぼれそうになっているのがわかったので、踊りながらホールから連れ出す。

…未来の王太子妃が他の貴族の前で涙を見せるわけにはいかないから…。


2人きりになった時、わたしの胸の中で声を殺して涙を流したロザモンドを抱きしめながら、わたしは彼女を泣かせたマリアンヌをどう罰してくれようかと、密かに考えを巡らせた。



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