学院祭のダンスパーティ3
ロザモンドに苛められたと王太子に訴えたものの、被害妄想だろうと断じられたマリアンヌだったけれど、それでも彼女はあきらめない。
「お茶会で仲間外れにされましたわ!身分が低いからって。」
「…は?」
「ねえ。皆様もこれは自信を持って証言してくれるでしょう?何度かロザモンド様が自宅のお茶会に友人を招いていて、わたしも招いてほしいって頼んだのに『あなたは男爵令嬢なのでお呼びできません。』って冷たく断っていたでしょう?聞いてるよね?」
その瞬間、またも失笑が漏れたけれど、数人の高位の貴族令嬢が声をそろえた。
「ええ。それはお茶会の授業の中でのことですから、皆さまご存じだと思いますわ。」
「そうよね!?」
マリアンヌはさっと喜色を浮かべた。
けれど、その表情がすぐに凍り付く。
「…でも、それは、苛めではございませんわ?」
「え?何でよ?仲間外れにされたのよ?わたし。」
くすくす笑いがまたもや拡がり、発言した令嬢達が我慢できないように扇子で顔を隠してしまった。
「…な、何?」
すっとロザモンドが前に出てくる。
「マリアンヌさん。授業をちゃんと受けていまして?受けていたならご理解いただけたはずなのですけれど。…わたくしがお茶会に招待した方々は全員、伯爵以上の身分を持つ令嬢なのです。」
「…は?どういう…こと?」
「わたくしは公爵令嬢です。公爵家で開くお茶会は伯爵以上でなければ参加できないのですよ。なぜならば、伯爵以上と伯爵未満の令嬢のマナーは全く別の物だからです。」
「マナーが身分で違う?でもそれがお茶会に招待しない理由にはならないんじゃないの?」
「…本当に、授業をまじめに受けていらっしゃらなかったようですわね。…難しい説明はあなたにはわからないでしょうから、簡単に申し上げますわ。お茶会は楽しむために開かれますわね?その楽しい場所でマナーを守れない者が居たら、周りがそれだけで不快を覚えますから、主催者としては場を不快にするとわかっている者を招待できないのですわ。」
「…マナーが違うだけで不快に思うって、傲慢じゃないの?」
「…何を言っても、マリアンヌさんにはご理解いただけないようで、残念ですわ。…でも一つだけ申し上げるなら、国法により上級貴族と下級貴族は明確に線引されております。それだけは覚えておくべきと思いますの。貴族だからといって同じではございませんのよ?」
「が、学院の中では身分は関係ないっていうのは嘘なの!?」
「ねえ。マリアンヌさん。わたくしが開催したお茶会は我が公爵家で開いたのですから、学院の決まりは適用されませんわよね?」
「……!」
「それにしたって!あんたが下位貴族を苛めていたのは真実だし!ねえ。みんなも覚えがあるわよね?」
マリアンヌ取り巻きの男爵や子爵令嬢達の何人かが大きくうなずく。
「ダンスの授業の時、歩き方が悪いと言われて本を頭の上に乗せて歩かされました。本を落とすと厳しい叱責を受けて辛かったです。」
「お茶会の授業でもカップの持ち方が気に入らないって言われて指がけいれんするまで持ち直しの練習をさせられた時は涙が出ました。」
マリアンヌは彼女たちの訴えをニヤニヤしながら聞いていたけれど、どんどん周囲の学生の温度が下がって行って憐れむような目で見られ始めたことにやがて気付き、心臓がドクドクと嫌な音を立て始めたので、ぎゅっと両手を胸の前で握りしめた。
「指導と苛めの違いがわからないなんて、これだから下級貴族は下級貴族なのですわ。」
突然、ロザモンドとは違う涼やかな声が講堂に響き渡る。
「まあ。パラディン侯爵令嬢様だわ。」




