学院祭(マリアンヌSide)
マリアンヌが魅了の魔術を意識して使いだして3か月。
王立貴族学院では盛大に学院祭が開かれた。
大勢の貴族が自分や親類の子供達の展示や催し物を見るため、学院に押しかける賑やかな日。
そして、貴族達が夕方帰った後で、生徒達だけのダンスパーティが開かれる日。
このダンスパーティは制服でなく私服での参加が許可されているため、女生徒達が張り切っておしゃれをするまたとない機会でもある。
マリアンヌは学院祭で賑わう学院の中をほとんど見て回らなかった。
自分のクラスの出し物は喫茶店だったけれど、そこも魅了の力で言いなりに動くようにしたクラスメートに仕事を押しつけて何も参加していない。
というのは、喫茶店を出店することが決まった時、バニーガールの衣装を着ることを提案したのに、「規則で制服以外着られないから無理」と却下され、腹を立てていたから。
くだらない規則は無視しようと呼びかけたけど、自分の言いなりになるクラスメートでさえ皆、困ったように
「いくらマリアンヌさんのご意見でも無理です。」
と首を縦に振ってくれなかった。
なぜなら、学院祭には彼らの親や知り合い…つまり、大人の貴族達がたくさん来るからで、彼らが規則を守っていない自分の子供を許すとは絶対に思えなかった、その恐れの方が大きかったから。
そんなわけでマリアンヌは学院祭で特に見たいものもなく…、というのは、攻略対象の王太子ウィリアムやカイルなどの高位貴族令息とロザモンドは生徒会メンバーで、学院祭の裏方として学院祭の間は表に出てこないと知って張り合いをなくしたから。
ゲームの中では好感度が最も高い攻略対象者が生徒会を抜け出してヒロインと一緒に回ってくれるイベントが発生する。
ヒロインが自分のクラスの喫茶店でバニーガールの姿でウェイトレスをしているところに乱入してきて、
「可愛すぎる…!そんな姿を他の男子生徒に見せたくない!」
と無理やり拉致され、制服に着替えた後、
「生徒会の仕事?そんなものより、大好きな君と学院祭を一緒に回る方が大事なんだ。」
と甘いセリフがささやかれて、2人であちこち見て回ったり喫茶店で食べさせあいっこするデートになったのだけれど。
そして夕方近くに、ヒロインと一緒に居る攻略対象者が他の生徒会役員に
「こんなところでサボっていたのか!」
と拉致されて、渋々、生徒会室に戻っていく時に
「ごめん!エスコートを途中で中断して!でも、夕方、迎えに行くよ。絶対!だから、また後で!」
とキラキラの笑顔を向けてくれるのだけれど。
「くっ…。悪役令嬢がストーリーと全然違うから、バグが全く直りゃしない!」
起きなかった文化祭イベントに悪態をつきながら、ゲームで回ったお店と喫茶店だけ、一人でさっさと回って、お昼過ぎには夕方のパーティのための準備にとりかかっていた。
普段は利用者がほとんどいない裏庭にテントがたくさん立てられていて、そこでダンスパーティ参加者が自由に着替えることができる。
1つのテントを独占して、マリアンヌは取り巻きの生徒に命じて自分の着替えや化粧を手伝わせることに時間をたっぷり費やした。
なぜなら、マリアンヌにとっては学院祭はどうでもよくて、その後のダンスパーティが大事。
このパーティでロザモンドを蹴落とさないと、卒業式に婚約破棄のイベントが起きない。それでは困るのだ。




