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マリアンヌの焦り

 マリアンヌは焦っていた。

王太子たちの卒業式まであと半年しか無いのに、王太子ウィリアムはもちろん、その側近であるカイル・アードレー公爵令息や騎士団長の令息など、『聖パラ』ゲームの攻略対象者と恋愛関係に進んでいなかったから。


ウィリアムは悪役令嬢のロザモンドと仲たがいをしていないどころか好意を持っているのが遠くからでもわかる。

カイルはウィリアムに次いで2番目に推しているキャラだったから、ウィリアムを諦めてこちらを攻略しようとしてみたけれど、いつも自分の側に居るくせに全くつかみどころがない。

胸元が大きく開いた服を着たり、腕にしがみついて上目遣いに胸を押し当ててみたりと色仕掛けも使ったけれどまったく効いていない。

のらりくらりとかわされ、単なる友人という位置から動いていない。


ゲームの中では騎士団長の令息もヒロインの取り巻きだったけれど、何故か知り合う機会さえなかった。実は学院で見かけたので話しかけたのだけど、全く取り合ってもらえなかったから。


「…どうして!?どうして、ヒロインなのにゲームの強制力が働かないのよぉ!」


自分の周りに男子が居ないわけではない。

同じDクラスの男爵家や子爵家の跡取り息子の何人かは自分にぞっこんで、卒業後結婚してほしいとプロポーズしてきた者が数人いる。

全員、好みの顔でもないし、地位も低く金持ちでもないから速攻断ったけれど。


それでも彼らが自分から離れていくのは怖くて、彼らの気を引くためにキスくらいなら…と許しているうち、やがて体に触れられ…、初めはドレスの上からだったのに今では肌を直接まさぐることまで許してしまった。

身体目的でも構わない、とにかく彼らを自分の味方に引き留めたかったのも本当だけど、彼らとの乱交は気持ちよかったし、これくらい前世なら誰でもやってることだったから。それにある意味未経験でもなく。前世では恋人がいて一線を越えてしまっていたから、こんなのお子様の遊びだ。

もちろん、今はまだ王太子妃になる望みを捨てていないので純潔だけは死守している。


「悪役令嬢がっ!シナリオ通りに動かないから!」


ゲームで何度も聞いた「おーっほっほっほっ」という高笑いは一度も聞いたことが無いし、髪型も縦ロールじゃない。ど派手なドレスを着たのも見たことが無いし、何よりも、ヒロイン(わたし)をゲームと同じように苛めてくれない。

だから、苛めを自作自演するしかなかった。

ゲームで見たとおりに。


机の中の教科書をずたずたに破いておいたり。

ロザモンドとすれ違いざま転んで、彼女に突き飛ばされたと訴えてもみた。

校庭では、風属性の友人に頼んでこっそり風を起こして噴水の中に吹き飛ばされて落ちてみたこともある。

全部、今のところ、ウィリアム達にロザモンドのせいだと思わせることに失敗しているけれど。





「…そんなにロザモンドが憎いかね?」


誰もいないはずの自室に声が聞こえて、ぎょっとしたマリアンヌが振り返ると、黒いローブを頭からすっぽり羽織った男が立っていた。


「ひっ…。あんた、誰?」


「ロザモンドを排し、ウィリアム王太子を手に入れたいのだろう?」

「…そ、そうだけど…。」

「魅了を使って周りの者を味方に付ければいい。」

「え?…どういうこと?」

「お前が持っている魔力は魅了の力だ。」

「え?聖女の力じゃないの?」

「違う。魅了だ。…覚えがないわけではあるまい?お前の取り巻きはお前の近くに居る者ばかりではないか?お前の魅了の力で彼らは取り込まれている。」

「でも、魅了なんて使った覚えは…。」

「常時発動スキルだから、使おうと意識しなくても発動している。だが、意識しないから弱い。」

「…え、じゃあ、意識して魔力を放出すれば?」

「ああ。今よりもお前の言うことを聞く者が増えるだろう。」

「…そ、そうなんだ…。でも、なんでそんなことをわたしに教えてくれるの?何が目的なの?」

「王太子とオルレアンの婚姻を邪魔したいだけだ。」

「…ふうん?もしかして、ロザモンドが好きとか?…答えないか。ま、いっか。わかった。やってみる。でもどうやって魅了の魔術を発動すればいいの?」

「自分を好きになれ。自分の言うことを信じろ。そう念じながら魔力を放出するだけで良い。その時、相手の目を見ながら、あるいは手を握りながらだとなお効果が高い。」

「…そうなんだ。それならできるかな。」

「ただし、王太子とカイルには効かないから注意しろ。」

「え?なんでえ?」

「闇の魔力持ちだからだ。闇の魔力持ちには魅了の力が効かない。」

「ちえ。残念。」


その時、扉の外から物音がしたので反射的にマリアンヌが振り返った隙に、その男は消えていた。


「…わたしの力って聖女の力じゃなかったの?」


唇を噛む。

でも…。

ゲームの中で、ヒロインが誰にでも好かれていたのは常時発動型スキルの魅了の力のお陰だったんだろうか…?

それをうまく使ってこなかったから、ゲームの通りに動いていないのかな?


「…もっと早く教えてくれればよかったのに!」


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