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揺れる心

 ある日の放課後、帰宅するために馬車に乗ろうとしたところを後ろから声がかかって、わたくしは振り返る。


「ロザモンド。」

「王太子殿下。」

「すまない。少し時間をくれないか。話がある。」


頷いて、御者に少し待っているように指示を出してから王太子の側に行く。

ウィリアムが難しい顔をしたまま小声でで話し始めた。


「ロザモンドに頼みがあって。」

「なんでございましょうか。」


…2人きりの時に愛称で呼ばれないのは非常に珍しいわね。


「マリアンヌ・グローに今後近づかないように。要するに彼女を苛めるなということだ。それと、イザベラにも敵対心を見せず、仲良くしてもらいたい。」

「え?」


…何を言われたのか、わたくしはわからず絶句する。


「あと当分、君と2人で会うのは難しくなりそうだけど、我慢してもらいたい。」

「あの…?」

「これは命令だ。いいね?ロザモンド?」


ウィリアムがわたくしの答えを待たずに速足で去っていく。

その先にイザベラとマリアンヌがこちらを見ながら待っているのが見えて、目を瞠った。

…どういうこと…?





 その後、学院では「お茶会」や「ダンス」などマリアンヌと一緒の授業では、彼女と同じグループになることは無く、教師達が意識して、わたくしとマリアンヌを接触させないようにしているのが誰の目にも明確だった。


 ウィリアムは執務で多忙らしく学院への通学が週の半分ほどに減り、それはともかく、通学してきてもお昼休みをわたくしと一緒に過ごすことは無く…。

イザベラとマリアンヌ達のグループと一緒に食事をするようになった。

その席にはなぜか、カイルも混じっていて…?


やがて学院内では、ウィリアムがわたくしへの興味を失い、イザベラかマリアンヌのどちらかに好意を持ったに違いないと言う噂が囁かれるようになり、わたくしは動揺を外に見せないように毅然としたふるまいを一層心掛けるようにした。





「あら。ロザモンド様、おひとりですのぉ?」

廊下でばったり出会ったマリアンヌは一人ではなく数人の令嬢となぜか、カイルがそばにいた。

「くすくす。最近はウィリアム様からもほおっておかれてかわいそう~。でも、当然よね。悪役令嬢なんか王太子の婚約者にふさわしくないものぉ。」


ぎゅっと握った手に力が入る。


「マリ。もう行こう。時間の無駄だよ?」

突然、カイルがマリアンヌの肩に手を回して甘い声で促す。

「ほら、いこ?」

「もぅ~。カイルったらあ。」


マリアンヌが少し頬を赤らめてカイルの腕にしがみつき去っていきざま、他の者に気付かれないよう、わたくしの足を蹴っていった。

「…!」


それを見送りながら、見たことが信じられなくて目を瞠る。

カイル様はマリアンヌを嫌っていたと思っていたけれど?

「マリ」って愛称呼びするほど、いつの間に親しくなっていたの?

信じられなかった。


その後、ウィリアムまでもがマリアンヌ達と談笑している際、「マリ」と彼女を呼んでいるのに気付いた時のショックは……。わたくしを激しく打ちのめした。





 学院の裏庭でぽつんと一人でベンチに座って、小さくため息をつく。

ずっと胸が痛い。

ウィリアムとは親が決めた婚約者とはいえ、相思相愛だと思っていたのに。

わたくしの思い込みだったのかしら…?


…それでも。

それでも、わたくしは王太子の婚約者なのだから。将来の王妃になるのだから。

王族が個人の感情を優先させてはならない。

ウィリアムが他の女性に心を移しても気にかけることなく、わたくしは彼の横に立たなければならない。

目の奥が熱くなり涙がこぼれかけたのを必死でこらえる。

誰が見ているかわからない学院で公爵令嬢が泣いてはならない。

奥歯を強く噛みしめて、ぎゅっと目をつぶる。

…ウィル様。

わたくしのどこがいけなかったのでしょう?

あなたに愛されるためには何をすれば良いのですか…?




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