光属性の訓練授業の後で
「ロザモンド。」
「はい。なんでしょうか。王妃様。」
「わたくしとグローの魔術の違いがわかりましたか?ああ。魔力量以外で。」
「王妃様の光は真っ白で思わず涙が出そうなほど清らかさに満ちていました。」
「あら、ありがとう。」
「グローさんのは…。アイボリーホワイトで…。色だけではありませんね。その…。清らかな感じはしなかったです。ただ光っていただけのような?」
「ちゃんと見られているわ。偉いわね。…全く。半日も公務を空けなくても良かったわ。数時間ぽっかり空いてしまったもの。でも、いいわ。あなたとのんびりお茶会ができるわね。」
王妃がにっこりと微笑む。
「今日は天気も良いし。テラスでお茶を頂きましょうか?どう、ロザモンド?」
「うれしいです。普段は王妃様とゆっくりお話しできないので。」
「わたくしもよ。」
お茶を飲みながら、王妃が顔をしかめられた。
「あの娘は治癒の力を得られないか、得られても大して役にたちそうにないわ。困ったこと。」
「…魔力量が少ないから、ですか?」
王妃が首を振る。
「違うわ。光の魔術を使う心構えができてないのよ。」
「…心構えですか…。」
「どの属性でも同じだと思うけれど。たとえば、あなたは"水"の属性を使う時、どうしています?」
「状況に応じてやりたいことを強く思います。例えば、清めたいのであれば浄化の思いを。攻撃の場合は水の強さと形状を。」
「そう。光属性も同じよ。治癒の力はその使う者の思いの強さで決まる。」
「え…?それじゃ、さっき、彼女が1輪も花を生き返らせられなかったのは?」
「彼女が花を本気で生き返らそうとしなかったから。…1輪くらいなら魔力が少なくても十分可能なのよ。でも、できなかった。恐らく、わたくしより綺麗に咲かせようとでも邪念にまみれていたのでしょうね。」
クスリと王妃が冷たい笑みを浮かべる。
「あの女は自分のことしか考えていないようね。治癒の力をなぜ神が与えたもうたのか、わたくしには理解できないわ。…わたくしが知っている光属性の持ち主はみな、心が優しい方ばかりだったもの。」
「…王妃様…。」
「本当に不思議。本当に光の属性なのかしら?魔法長官のフリッジは…今超多忙だし。ああ。彼の孫のカイル・アードレーでもいいかも。…ロザモンドはカイルと親しいわよね?」
「それほど親しいとは…。殿下のご親友でいらっしゃいますので学院ではご一緒する機会はございますが。」
「カイルにわたくしの命令として、伝言くらいは頼めるでしょう?」
「それくらいでしたら。」
「カイルに伝えて。マリアンヌ・グローの魔力を調査しなさい。と。」
「…光属性ではないとお考えなのですか?」
「判定の水晶が光と示した以上、光属性なのでしょうけれど、わたくしと違う種類の光属性なのかもしれないと思ったの。…気のせいかもしれないけれど。」
「承知しました。明日、カイル様にお伝えしておきます。」
「お願いね。…さて、つまらない話はもうおしまいにしましょう。最近、若い令嬢の間で流行っているケーキをご存じ?」
「そうですわね。王都のスプリング通りに新しく開店した"ジョリ・フリーユ"というお店のケーキが人気になっていますわ。」
「あら、そのお店知らなかったわ。どんなケーキがあるの?」
王妃と一緒にたわいもない話をするのは久しぶりでとても楽しかった。
後でウィリアムからどうして誘ってくれなかったのかと拗ねられてしまったけれど。
「ねえ?ウィリアム様にちょっと挨拶してから帰れない?」
マリアンヌは王妃の部屋から馬車が待っている所へ行く途中、案内してくれる侍女に声をかけたけれど、固い返事が返ってきた。
「王妃様から命じられたのは馬車までお送りすることだけです。」
「もう。固いんだから。王妃様には内緒にしてあげるから、ウィリアム様の居る所まで連れて行ってくれない?」
「無理でございます。わたくしは王妃様付きの侍女ですので、王太子殿下がどこにいらっしゃるか存じ上げません。」
「じゃ、じゃ、ウィリアム様の部屋に…。」
急に侍女が立ち止まり、きつい目でマリアンヌを睨みつけた。
「…誰かに頼まれたのですか?」
「はい?」
「殿下の部屋の場所を調べて…暗殺者でも送り込む予定ですか?」
「なんで、そんなことしなくちゃいけないのよ!」
「それ以外に、グロー様が王太子殿下の部屋に行く理由がわかりません。」
「ば…馬鹿じゃないの。単に、お友達の部屋に遊びに行きたい。ってだけなのに。」
侍女が呆れたような目でマリアンヌを見る。
「馬車はこちらです。」
「待ってよ。ウィリアム様の部屋に…。」
「ご案内できません。王太子殿下の居室を訪ねることができるのは王族と…殿下の婚約者だけです。」




