第七話【マサキの過去】
「……あれ? 話してなかったっけ……?」
「聞いてないな」
「……そっか。失敗失敗。……簡単に言うとね、彼には《霊感》があったの。……まだ彼が幼かった頃の話をしようか……」
……薄暗い部屋。
俺が物心ついたときには、この部屋で暮らしていた。
たまに来る人が食べ物や水を持ってきてくれたし、ちゃんと住みやすいように整えられていたから、別に困ることはなかった。
……それに、話し相手もいたから結構快適だったのかもしれない。
「ねぇ、お姉ちゃん。今日はどんな話を聞かせてくれるの?」
「そうねぇ……。じゃあ、ミクちゃんのことを話そうかな……」
俺は彼女から色々なことを教わった。
言葉はもちろんのこと、外の世界のことや『鬼』のこと、そして、ミクという名の『鬼』のことを……。
「……と、いうわけ。彼女は滅びた『鬼』一族の一人だったの。元々『鬼』には《霊感》や《知識》が備わっているの」
「《知識》……?」
「《知識》は『鬼』一族では【神の警告】と呼ばれていたわ。彼等が《罪人》であることを忘れないようにする必要があった神によって、産まれる前に《知識》を刻まれる。言い伝えでは歪んでしまうけど、これなら確実だから……」
「それで、彼は《霊感》だった、と?」
「そう。……だけど、ミクだけは特別。彼女はどちらも持っていない」
「……理由があるのか……?」
「……そうね。それじゃ、続けましょうか……」