第三話【崩壊する日常】
「じゃ、話を進めるよ」
彼女……、ミクは物心ついた時には山小屋で、たった一人で暮らしていた。
朝昼夜には母親がご飯を持ってきたけど、その他の時間は一人で過ごしていた。
そうしてミクは時間の流れるままに成長していった。
その間に母親から様々なことを教えてもらった。言葉や料理、他にも生きていくために必要な知識を……。
そして、彼女が14才になったある日の朝のことだった。今までは毎日欠かすこと無く来てくれていた母親が来なかったのだ。
おかしいな、と思いながら、森に入り、母親から教えてもらった食べられるキノコや山菜を探し、山小屋に戻って、簡単に料理して食べた。
そんなことが数日続いたある日、ミクはついに村に行ってみることにした。
今までは母親に禁止されていたために、一度も行ったことがなかったのだ。
ミクにとっては、母親が直接会ったことのある唯一の人間だった。……そんな人が来なくなったのだから心配になったのだろうと思う。
「……だけど、それが間違いだったの。彼女が村に行ったとき、母親と、もう一人の誰かが吊るし上げにされていたのよ」
「……誰かっていうのは父親、か……」
「そう。だけど、彼女は知らないのよ。その存在も……」
「母親が唯一知っている人間、だもんな」
「彼女の父親は留守番役だったのよ。母親が出掛けたのをうまく誤魔化すためにね」
「……それで、どうなったんだ? これで周知の事実になってしまったんだろ?」
「……そうね。それじゃ、話を再開しましょうか」