第二話【伝説は始まる】
「そう。この話はまだ続くのよ」
『鬼』一族を殺し尽して、人間が暮らし始めたその村には、『鬼』一族の呪いが残されていた。
その村で生まれた子供の頭には、例外無く角が生えていたのだという。
……もちろん最初の頃は、『供え物』として殺されていったが、生まれてくる子供の数が増えると、殺していくわけにもいかなくなった。
子供を殺された親が増えるという事は、反対運動をする人が増えるという事だから。
反対運動が手に負えなくなってきた頃、村長は苦渋の決断をすることになる。
「子供を産んではならない」
……そのルールが決まると、村人も出来るだけそれを守った。
当たり前だ。産まれても殺されるだけなのだから……。
それから数年の月日が経ち、村人の誰もがこの村は平和になったのだと……、そう思った。
しかし、話はそんなに簡単じゃない。
ルールを破る者というのは、どこの世界にも必ず居るのだ。
……そして、この小さな村にも、そんな人が居たのである。子供を隠れて産み育てた人が……。
「……その子の名前は神谷ミク。未来って書いてミクと読むの。彼女の両親は、彼女に変えてほしかったのかもしれないね。この村の未来を……。そして、この話は彼女を中心にして大きく回り始めることになる」
「……やっと本題、って訳か」
「そういうことになるかな?」
「まぁ、ここまで聞いたんだ。最後まで聞いてやるさ」
「うんっ! それでこそ、双夜君だよ。じゃ、話を進めるよ」