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第2話 勇者と魔王って何だ!?

 幻想と魔法が支配する大陸アテナイは人間族と一部の亜人族を中心として成立したダモクレス王国により統治されていたが50年ほど前から魔人族や知性を持つ幻想獣(モンスター)たちが大陸北東部で独自の共同体を形成するようになり、彼らの指導者である魔人ドクーサは強大な魔力を持つことから魔王と呼ばれていた。


 ドクーサは人間族の利権を優先するダモクレス王国の正当性を否定し、優秀な指導者たる自らの手であらゆる種族が平等に生きる社会を建設すると宣言。手始めにダモクレス王国を転覆させるべく配下の魔人や亜人、モンスターを使役して王国領への侵攻を繰り返していた。



「騎士団や傭兵の活躍で魔王軍の侵攻は食い止められているが、このまま戦線が膠着しては経済への影響が甚大なものになる。魔術師たちの運命予測ではそなたが勇者としてドクーサを打ち破ってくれることになっているのだ。苦しい戦いになるが、魔王を打倒してくれるか」

「そのドクーサという指導者の理念は一概に否定できませんが、あらゆる種族が平等に生きる社会という目標が魔王個人の考えであるとしたら大きな問題です。独裁政治に基づく侵略戦争に大義はありませんから、この世界に民主主義と平和主義を根付かせるために戦いましょう」


 沖田が王から受けた依頼を快諾すると、先ほどの近衛騎士団長が歩み寄ってきた。


「貴公が勇者としての使命を理解してくれたようで安心した。これから伝説の武器と鎧を授け、王国でも屈指の強者である戦士、武闘家、魔術師を同行させよう」

「いえ、私は魔王との戦いに暴力などという野蛮な手段で臨むつもりはありませんから武器と鎧は必要ありません。この世界には不慣れですからそちらの3人は私の護衛として同行させてください」

「それでいいのか?」


 それから沖田は近衛騎士団長に話を聞き、この世界には魔人や亜人、モンスターにも理解できる言語が存在し、活版印刷の技術もあることを知った。



「まずは魔王による独裁政治の問題点を列挙した檄文(げきぶん)を魔王軍の勢力圏内にばらまいてください。私は非武装で魔王軍の領地を訪れ、魔人や亜人、モンスターに民主主義の素晴らしさを説いて回ります。魔王軍が勝利したとしても民主主義が成立しない限りあらゆる種族が平等に生きる社会はあり得ないと分かれば、彼らも魔王に協力することをやめるでしょう」

「その民主主義というものが何なのか分からないが、勇者である貴公の考えに間違いはあるまい。檄文の文言を考えたらすぐに出発してくれて構わないぞ」


 それから王立活版印刷所で檄文の組版を完成させると、沖田はドクーサ軍の領地へと旅立った。



「魔王軍の皆さん、私の言葉に耳を傾けてください。魔王ドクーサはあらゆる種族が平等に生きる社会を目指すと主張していますが、魔王の独裁政治が続くのであれば結局は魔人族に都合のよい政治が行われるだけです。我々が目指すべきは民主主義による政治体制であり、具体的には人間族でも亜人族でも魔人族でもモンスターでも知性を持つあらゆる種族が政治の意思決定に参加できる社会です。魔王に従って侵略を行うのは今すぐやめて、平和的な手段でこの戦争を終わらせましょう」


 魔術師に拡声魔法を唱えさせつつ魔王軍の領地を練り歩く勇者オキタの姿は大陸中で話題となり、魔王領に連日ばらまかれた檄文により魔王に従っていた魔人族や亜人族、モンスターの中には勇者と志を同じくする者も現れるようになった。

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