7日目 喧嘩の原因!バカだろ全員!-前半
「なぁなぁ、昨日の話なんだけどさ。」
「ん?どの話じゃ?」
「先代魔王の部下が誰もいないって言ってたやつ。
・・・あれさ、爺やに聞いたらいいんじゃない?
昔から魔王城にいたんだろ?」
「そうか!爺やなら確実に、その時もおったはずじゃ!!
いつからか分からぬほど昔から、代々の魔王をサポートしてきとると言っておった・・・爺やか・・・盲点じゃった。」
「まぁルカのポンコツ具合は分かってきたから、一旦置いといてさ。
俺も気になって仕方ないし爺やに聞きに行こうよ。」
「ぐっ、言い返せぬのが歯痒いが・・・確かに、この件に関しては空回りしとるようじゃ。毎度毎度,仕事でもないのに呼び出すのも悪い・・・ついてこい。爺やの部屋へ案内するのじゃ。」
「案内されなくても知ってるんだけどね。最初の日、ご飯食べてたの忘れちゃった?爺やと二人でランチもしたしさ。なんなら、昨日プレゼント持って行ったって話したじゃん。・・・この件でも空回りしとるようじゃが?」
「・・・黙ってついてこい。」
「まぁ他人の家を勝手に歩き回る奴が悪いんだけどね。」
「分かっとるなら少しは自重しろ!!・・・着いたぞ。お前が先に入れ。そして聞くのじゃ。私は何も話さん。」
「すねるなよ、いい大人がー。ほんとにもー。
爺やー!聞きたい事があるんだけど入ってもいいかーい?」
「いいよー!少しクサイけど我慢してねー!」
「クサイの?まぁいいや。ほら、行くぞ。いつまですねてんだよ。」
「すねとらん!はよ入るのじゃ!!」
「分かった分かった。おじゃましまーす!・・・うわ!何このニオイ!!!少しとか言うレベルじゃないじゃんか!!!!」
「うっ、、、これは、、爺や、何事じゃ?正直、吐きそうなんじゃが。」
「あっ、お嬢様もご一緒でしたか!申し訳ありません!遮断結界の範囲を縮めます・・・これで少しはマシになったでしょうか?」
「うっ、うむ。窓を開けてもよいか?」
「今、手が離せませんので申し訳ございませんがお願いします。」
「・・・ふぅ。それで爺や。何を焼いとるんじゃ?
それは七輪か?」
「はい。知り合いの方からのいただきものでして。クサヤを焼いております。」
「うげっ、どうりでクサイはずだよ。話に聞いた事はあるけど・・・想像以上だよ、このニオイ。」
「クサヤとは、、人間の一部が好んで食べるという魚じゃったかの?ものすごいニオイがするというのは私も聞いた事があるのじゃ。」
「・・私も実は、これまでの長い生涯において敬遠していた食べ物でございまして。
しかし、せっかくの頂き物でしたので、これを機にチャレンジしてみようかと。」
「それは良いが、なんで部屋で焼いとるんじゃ?
わざわざ、七輪で焼かずとも調理室で焼けばよかろう?」
「それが七輪で焼く方がおいしいらしいのですよ。それに調理室だと、食器や他の食材にニオイがうつってしまいますから。魔法でキレイにする事もできますが、お嬢様にお出しするものは手で洗うよう心がけておりますので。」
「それで、わざわざ結界まで張って部屋で焼いてたの?というか外で焼けばよくない?」
「バグちゃん!ワシが、外で、結界張って!七輪で魚焼いてたらヤバくない?一人だよ?頭おかしくなったと思われるじゃん!」
「何言ってんだよ爺や!そんな時こそ俺を呼ぶんだろ!仲間だろ!?二人だったら、なんだって乗り越えられるさ!!!」
「バグちゃん!・・・そうだよね。ワシが間違ってた。
何でも一人でやろうとして、、、ワシにはこんな、、こんな頼もしい仲間がいるのに!」
「爺や!」
「バグちゃん!」
ぎゅっ!!
「・・・もう終わったかの?もう一人おるのを忘れておらんか?そうじゃの、私はお嬢様じゃから仲間じゃないもんな。」
「お、お、お嬢様?どうなされたのですか?いつもなら、気持ち悪い芝居はやめるのじゃ!とツッコンで頂ける所のはずですが・・・。」
「爺やまで私をそんなキャラじゃと思っておるのか。そうか。気持ち悪い芝居はやめるのじゃ。これでよいかの?」
「お、お嬢様!?バグちゃん、何があったの!?こんなお嬢様見た事ないんだけど!」
「あ〜、そいつ今すねてるから。ほっといていいんじゃない?爺やは立場的に、そうもいかないか。」
「すねられているのですか?、、、珍しい。というか初めて見たかもしれません。お嬢様は子供の頃から聞き分けのよい子でしたから。・・・あぁ、一度だけありました。先代魔王様方が異世界へと旅立たれた時、寂しさゆえか数日に渡り不機嫌であられました。毎日のように、私一人おいて・・・お父様もお母様も・・・と呟かれていましたね。」
「あれは怒ってたのじゃ。寂しかったのは確かじゃが、すねていたわけではない。・・・今も怒ってるだけなのじゃ。人を子供みたいに言うのはよせ。」
「偉そうに言う前に、こっち向けって。いつまで、そっぽ向いてるつもりだよー、、ほら。聞かなきゃいけない事があるだろ?」
「あ、あ、頭を撫でるな!ごほんっ、、爺や・・・これからの魔族や人間達・・・いや、この世界をより良くするために教えて欲しいことがあるのじゃ。もしかすれば爺やも言い辛い事かも知れん・・・それでも人間や我が民、そして私自身のために・・・どうしても知らなくてはいけない事なんじゃ。だから、」
「ちょっ、爺や!光ってる!クサヤが食べてくれって光ってるよ!絶対、今が一番の食べ時だよ!!!」
「あっ、ほんとだ!!ー!!!お嬢様、大事な話の最中に申し訳ありません!少々お待ちくださいませ!960年生きてきて、初めてのチャレンジですので・・・これをのがす訳には!」
「爺や!頑張れ爺や!奇跡の焼き加減だよ!あと一秒遅かったらこげてたよ!素手でいった価値はあったよ!」
「ぬぅぅ熱い!そしてクサイ!!!しかし、これぐらいで
諦めるワシではないぞ!バクッ、、、、う、うまぁぁぁい!!!なんじゃこの美味さわ!!!!これがクサヤなのか!?」
「やったー!遂にやったんだな爺や!うまいか!?そんなにうまいか!?くぅぅ、よかった・・・何だか涙が出そうだよ!」
「おいしい、、、おいしいよ、バグちゃん!こんな臭くて美味しいもの食べたのは初めてだよ!ワシ、、、チャレンジして良かった!」
「そうかそうか!!!やっぱり試してみなけりゃ分からない事もあるんだな!!!!」
「うん、やってよかったよバグちゃ、、、コホン。それで、お嬢様?私に聞きたい事とは何でございましょうか?それほどのお覚悟、私で答えられる事ならば答えましょう。」
「、、、うるさいわ、、。」
「あの、、、お嬢様、、、?」
「うるさいわー!!!!何を今さら!!!キリッとした顔をしても遅いんじゃー!!!
私、、、頑張ったよな!?私、頑張ったよな!!!?なんでそんなクサいのが優先なんじゃ!?大事な話と言ったはずじゃよな!?おかしいじゃろ!!!」
「それはしょうがないよ。爺やは960年間も苦手だったクサヤに挑戦したんだぞ?それがどれだけ勇気のいる事かルカには分かんないだろ?」
「お前にも分からんじゃろうが!!子供の頃からの、ちょっとしたトラウマを頑張って乗り越えた私の気持ちが!!それを簡単に放置された私の気持ちがー!!!」
「そんなガチなヤツだったの!?・・・それはごめん。本当に悪かった。反省する。」
「きゅ、急にガチのトーンで謝るな!どうしたんじゃ!?」
「いや、イジるのは好きだけどさ・・・肉体的にも精神的にも傷つけるのは嫌だからな。反省する所は反省しないといけないと思って。」
「そ、それは良い心がけじゃ・・・まぁトラウマとは言ったが本当に軽いもんじゃ。珍しく真面目に反省しとるようじゃし、もうよい。」
「お嬢様、私もおふざけが過ぎました。・・・正直なところ、少し本気で食べたかったのですが。それで私に聞きたい事とはなんでしょうか。」
「爺も、もうよい。・・・あの美味しそうな顔を見れば分かるのじゃ・・・。少し話はズレたが、人間と魔族が今のような状況になった原因が知りたいのじゃ。お父様と人間の国王が言い争いをしたというのはウワサに聞いた。それもここ、魔王城でじゃ。まず、それは本当なのか?」
「・・・そのお話ですか・・・。本来なら先代魔王様からお聞きになられるのが一番良いのですが・・・。なにせ、私は食事やお酒を運ぶのに行ったり来たりで全てを見たわけではないのです。」
「そうなのか・・・それでもかまわない。知っている事だけでよいから、教えて欲しいのじゃ。」
「かしこまりました。・・・確か、あれは宴も終盤に差し掛かった頃でした。
先代魔王様も先先代の国王様も、その部下達も皆、酔いが回っていた頃です、、、不思議そうですね?あの頃は、護衛など必要ないくらい仲が良かったのです。それにお互いの力も均衡していましたしね。・・・話を戻します。
始まりは、どのお酒が一番美味しいかという話でした。」
「好きな酒?そんなので喧嘩になるのか?」
「いえいえ、笑ってお話していらしたと聞きました。
魔王様が、日本酒が好きだとおっしゃると、ジジイくさい趣味だなと。国王様がワインが好きだとおっしゃると、キザったらしいカッコつけめ、と。お互いを罵りながらも笑い合っていたようで。」
「そんな仲じゃったのか・・・。」
「はい。とても仲は良かったと認識しております。
・・・その後も、一番は何か、、、ようするに好きな物は何かという話が続いたようです。
好きな酒の肴は、好きな食べ物は、好きな食べ方は。好きな本は。好きな服のブランドは。好きなメイド服の種類は。好きな」
「まった!爺や、全部は言わなくて大丈夫だから!大事なところだけ教えて!」
「次が最後です。好きな女性のタイプはという話になったのです。」
「・・・お父様はもう結婚していたはずじゃないか?」
「はい。国王様も同様にご結婚されていました。
その日も、奥様方は別の部屋で同じように宴を開かれておりました。女性だけで。
なので、と言いますか、普段は出来ない話をしたかったのでしょう。今となっては魔がさしたと言った感じでありますが。」
「意味があるわけじゃなくて、羽目をはずしたかっただけみたいな?」
「そうです。お二人とも奥様を溺愛されていましたから。
なので、お二人とも初めに出た言葉は、好きなタイプだと!?俺の嫁さんだ!だとお聞きしております。」
「ははっ、いい話じゃん。それが何で喧嘩に繋がるんだ?どっちが綺麗かで言い合いになったとか?」
「いえいえ。そのような事で喧嘩するお方ではありません。どちらもね。」
「それでは何が原因なんじゃ?」
「それは、、、その、お嬢様には言い辛いのですが、、」
「ん??、、あっ、この顔か?ルカが言ってた辛そうな、申し訳なさそうな顔って?ルカには言い辛い話だったんじゃないか?」
「それは先代魔王様の部下達の事でしょうか?
・・・それなら私とは、きっと別の理由でしょう。」
「なんなんじゃ爺や?私ももう大人じゃ、、聞かせて欲しいんじゃ。」
「そう、ですね、、いつまでも隠しておく訳にもいきませんか・・・。
お二人の、というより人間と魔族が互いに結界を張るようになった理由は奥様方なのです。」




