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第一話 『オタクの皆さん、助けてください』

 暗闇の中で一人立っている。けれど、自分がここにいるという実感はなく、やけに身体が軽い。


 なぜだか分からないが、不思議と確信が持てた。どうやら俺は、死んだらしい。生前の記憶もある。死んだ理由は…


 …ええと、そうだ、たしか車に轢かれたんだった。いや、病気で死んだのか?転んで頭を打ったのかもしれない。


 ………前言撤回。やっぱ生前の記憶ないかも。まあいいか、死んだ理由なんて。どうせもう死んでるんだし。


 これから俺はどうなるんだろうか。

 死ぬのは初めてだから緊張するなぁ。


 そんなことを考えていると、後ろから足音が聞こえてきた。振り返るとTHE・女神みたいな人がポツリと。暗闇なのに姿がくっきりと見えるのは不思議だ。


 THE・女神は優しい声色で語りかけてきた。


「こんにちは、デスナイフ・殺戮の馬場さん。既にお気づきかもしれませんが、アナタは亡くなってしまいました」


 ああ、そうなのか…やはり俺は…


 って、俺の前世そんな名前だったの?え???

 デスナイフ・殺戮の馬場??????


「本来ならば消滅していただくのですが、前世でアナタは多くの善行を積みましたので、異世界で二度目の人生を送っていただきます」


 俺、デスナイフ・殺戮の馬場って名前なのに善行してたの??

 殺戮しろよ。


「その際にオマケとしてアナタにある能力をひとつ贈呈します。上手く活用して生き抜いてください。では、お気をつけて…」


 THE・女神が話終わると、俺の身体が徐々に粒と化していった。意識もどんどん遠のいていく。これから異世界に行くのだろう。なろうとかで異世界系は結構読んでたからテンション上がるなぁ。こういうのマジであるんだな。


 ……能力かぁ。何が貰えるのかなあ。俺はデスナイフ・殺戮の馬場らしいし、なんか殺戮系のスキル貰えるのかな。


 ………あぁ……次の生活が………楽しみ…だ………………。




 ◇



 目が覚めると、俺は草原の中で佇んでいた。意識がある。ハッキリと自分の肉体がここにあると感じる。俺は右手をグーパーして、少しニヤつく。


「二度目の生ゲットだな。とりあえず、能力の確認だけするか」


 能力の発動方法は直感で理解していた。頭の中でそう念じるだけだ。女神さんの粋な計らいサンキュー。


 さて、さっそく能力発動…!


「…こ、これは」


 視界の中にある画面が映る。それは俺が何度も目にしたことのあるプラットフォーム。


「…………小説家に、なろう」


 そして俺が死んでから今までの体験したこと全てが文字起こしされている。つまり、こう分析していることすら文字起こしされる。


 そこからさらに直感で理解した。どうやら俺に許されている機能は、最低文字量分を超えた経験をなろうに投稿し、その小説についた感想を読むことだけらしい。


「おい、マジかよ………どんなクソ能力だよ。なろうの読者なんてサイコパス気取ったオタクしかいないのに…。そんなヤツらの感想で一体何ができるってんだよ…。終わった…完全に終わった…」


 俺は額に手を当てて悲しむ。


「……っておい、この発言も全部文字起こしされんのかよ!やばい、読者ディスったらそもそも感想つかなくなるし、不幸にさせようとするアンチが湧く!文字消せ!消えろ!」


 視界の中のウィンドウに手をブンブン当てるが、すり抜けるだけだった。


「………まじか……………いや、ほんとごめんなさい。読者の皆さま、よろしければ協力してください。さっき言ったのは全部嘘です。読者の皆さまがバスケ部のキャプテンなのは重々承知です」


 ふう、これくらい媚びを売っておけばいけるだろ。


「さてと、これからどうするか。近くの街を探すか…?」


 周りをキョロキョロと見渡す。後ろには遠目に森があり、前方にはただ一面の草原が拡がっている。右手には洞窟があり、左手には山。


 うーん、迷うなあ。


「……せっかくだし、この能力使ってみるか」


 さっき読者に吐いた暴言は撤回しておいたし、たぶん感想も来るだろ。頼むぜキモオタども…!

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