3.決闘! アーフル対リヒト
【あらすじ】
実力テストは、アーフル、リヒト、キリヤの三人が合格し、大聖堂でまたもや会う不思議少女リナリア、
そしてアーフルの無遠慮な一言によって、リヒトと決闘をすることになった。
「ちょっとした冗談じゃねーか」
アーフルは少し不満そうな態度でキリヤに言葉を発していた。
その言葉にキリヤは「本当にそう思ってるの?」と返すと、アーフルは何も言い返せなかった。
そん会話しながらリヒトの後を追い、アーフルとキリヤは大広場へと向かっていた。
そこでリミが待っていたが、キリヤがすかさず駆け寄り事情を説明した。
そして、アーフルとリヒトの決闘が始まる。
「……父さん、ごめんなさい」
リヒトが小声でそういい、剣を生み出したかと思った次の瞬間、リヒトの剣が黒くなっていき、禍々しオーラが放たれいた。
「なにあの黒い剣、テストのときは普通のだったよね?」
「僕にもわからないよ……」
リミは驚いていてキリヤに疑問を投げかけたが、キリヤは真剣な顔で剣を見つめながら返答していた。
アーフルはなぜか高揚していた。
「本気なんだな」
アーフルはリヒトの期待に応えるように、光り輝く剣を生み出し、全身全霊の気合いを込めて、力を振り絞ると、剣から眩いオーラが放たれていた。
「あの剣って?」
「あの時の、だよね?」
リミとキリヤはアーフルの剣を見たことがあった。
それは遠い昔のことで忘れたくても、忘れられないほどの衝撃だったからだ。
時は少し遡り、アーフルたちが大聖堂を出ていった、あとの教師たちの話。
「ヴェントが、こんなに合格者を出すなんて珍しいな」
「はい、今回は優秀な子たちが多かったもので」
王はヴェントが合格者を出すのが珍しくおもっていた、なぜならヴェントの時は合格者が一人しかいないことがほとんどだったからだ。
「私はちゃんと、三人選んだよ」
陽気にヴェントに話しかけできたのは、ソウたちの教師でもある、いつも眠たそうな女性のサフランである。
ヴェントはどういうテストをしたのかとサフランに尋ねていた。
「私のとこは、回復実験とちょろっとの実技かな」
サフランのいう回復実験とは、回復容量が決まっているダミーをどれだけ速く容量いっぱいにできるのかということだ。
実技の方は、一人一分程度の組手だったという。
騎士学校は二つの組に分かれており、ヴェントが担当するのは二組で、主に肉弾戦に長けている生徒が集まっている。
サフランが担当するのは、主に医療や魔法術に長けている生徒が集まっている。
ちなみに、一番成績が良かったのがソウで、二番目がリナリア、三番目がカランだったという。
六天の一人カルミアはふと何かを思いだしたのかオータムに喋りかけていた。
「そういえば、あんたの息子もきてたわね、名前は……、リヒトだったかね」
「そうだな」
オータムの息子はリヒトだった。
そしてカルミアはヴェントに対して、リヒトが一番強かったのかと聞いた。
「いや、アーフルが一番でした」
「そうなの、あの変な子が」
一部の人たちは驚き、アーフルはどんな子か全員が聞こうとしてたら、凄まじい天力を感じとり、一瞬、場が凍りついていた。
そしてオータムが心の声が漏れ出たように小声でこう言った。
「まさか、リヒト……」
オータムはなにかを悟ったような顔していた。
それから聖堂にいる全員が凄まじい天力を感じ、神妙な顔をしていた。
次の瞬間、いままでに感じたことのない凄まじい天力を受け、神妙な顔から一転、驚愕な顔になっていた。
「そんな、アーフル、まさか!」
ヴェントがなにかを悟り焦っているかのように言った。
なぜアーフルだとわかったのかは、だれもが疑問に思ったが、そんなことを気にかけている余裕などなかった。
時を同じくして、アーフルとリヒトの闘いが始まりだすと、ポツリポツリと雨が降り出した。
「雨が降り出したね……」
リミがそう言ってキリヤと一緒に立ちすくんでいた。
それからアーフルとリヒトの闘いは、リミたちが目で追うのがやっとのほどで、二人の剣がぶつかるたびに体がピリピリとした感覚におちいってるのがわかる様子だった。
「こんな感覚、初めて……」
リミがそう感じるのは普通のことかもしれない。
二人の実力は新人騎士とはおもえないほど、凄まじくて目で追うのがやっとのほどだ。
そしてリミはアーフルとリヒト距離をとっているのを見て口を開いた。
「どうしたの?」
リミが不思議そうに見ていた瞬間、降り注ぐ雨が蒸発するほど、二人は天力を最大まで高まっているがわかった。
アーフルは下から剣を振り上げ、リヒトは上から叩きつけるようにして、決着をつける最後の一撃がぶつかりあった。
「どっちが、勝ったの」
リミが息を呑み込みながらつぶやいた。
リヒトが膝をつき、アーフルが立っていた。
アーフルが勝ったと思いリミたちは安心していた。
雨が振り注ぐなかアーフルはリヒトに近付きなにかを言おうとしたが、リヒトは泣き崩れていて、なにも言えず立ち去っていった。
「え、アーフルどこに行くの」
リミは不思議に思い、アーフルに近づこうとしたがキリヤに止められてしまった。
一瞬見えたアーフルの表情は、悲しく遠い目をしていた。
「あの力はなんなんだ、まるで高い壁が目の前にあるように感じるのはなんなんだ」
リヒトはアーフルの中にある、別の力を感じ取ったのかもしれない。
アーフルは降りしきる雨の中、一人うつむいた表情のまま帰っていく途中
「おーい、アーフル学校は……」
果実屋のおっさんはなにかを感じ取っていたがた、なにも言えなかった。
アーフルは玄関を開け、その音を聞きシャールは玄関へいった。
「おかえり、今日は張り切って作ったんだから、……アーフル?」
アーフルは母シャールの言葉が聞こえておらず、うつむいた顔のまま部屋に向かっていった。
シャールは心配に想い駆け寄ろうとしたが、アーフルの雰囲気がいつもと違いすぎるので、あしが動かなかった。
「アーフル……」
シャールは心配を胸に秘め殺し、アーフルが部屋へ向かうのを見届けた。
アーフルはベットに横たわり、今日の不思議な出来事について呟いていた。
「あんなすごい力、初めて出たな」
アーフルは今まで勇者の時に使っていた力を少ししか出せていなく、リヒトとの決闘で少しだけだが戻ってきているのを不思議に思っていた。
それからアーフルは勇者だった時代を思い出していた。
「なあ、レイン、俺はどうしたらいいんだ」
アーフルは昔の記憶を辿り、仲間たちとの思い出を呼び起こしていた。
ゆっくりと、ゆっくりと、時間が流れていき、心が穏やかになってきた時にアーフルは声を上げた。
「あぁ! こんなクヨクヨしてもはじまらねぇ、ねるか」
アーフルは眠りにつき、次の日の朝をむかえた。
「アーフル起きなさい、朝よ」
シャールが台所からアーフルの部屋にとどくように言った。
アーフルは飛び起き、学校の準備をしてシャールのいる場所へ行った。
「母さん、おはよう! 昨日のカレーある?」
昨日の顔とは違い笑顔でアーフルは答えた。
シャールはその顔をみて安心した表情になり、張り切って、ご飯の準備を始めた。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
アーフルが玄関を出て、それを見送るシャール。
いつも通りの毎日が、いつも通りの笑顔が、いつも通りの青空が、そこにはあった。
そしてアーフルの騎士学校生活が始まるのだった。