2.実力テスト開始!
【あらすじ】
魔王の一撃によって勇者は死んだ、だが勇者の魂は数百年の時を超えシャールとアフストの息子アーふフルに宿った、12年の時が流れ騎士学校へ向かう途中に、妹に似た不思議な少女と出会う、そして騎士学校に着き突然の実力テストが始まるのだった。
「全員いるな、これから実力を見るためのルールを説明をする」
青空の下で教師ヴェントが説明を始めた。
向かってくるのは何人でも構わない、武器は自分又は学校が用意したものを使う、ヴェントに一太刀入れると合格になりある所に行くこと、それ以外は不合格ということを伝えられた。
「よし、俺が一番にいってやるぜ!」
「ちょっと待ってよアーフル、何人でもいいって言ってるんだから、一人じゃなくてもいいでしょ」
「リミの言う通り一人じゃなくて、僕たち三人ででがんばろうよ」
「ちぇ、しょうがねぇな、今回は一緒にがんばるか」
アーフルとリミとキリヤは三人でチームを組みヴェントに挑もうとしていたその時、一人の少年がヴェントに向かっていった。
「リヒトか、始めよう」
「よろしくお願いします、先生」
ヴェントに挑んでいったのは、リヒトという名前の少年だ。
リヒトは手のひらに魔力の様なものを集めて剣にしてヴェントに向かっていった。
それを見たヴェントは少し驚いていた、なぜならリヒトが剣を生み出した技は天授と呼ばれるものだからだ。
天授とは、天に授かりし力の集合体、武器に付与又は無から有を作り出す事ができるもの、それを習得するのはとても困難であると言われている。
リヒトとヴェントの闘いは凄まじく、周りは唖然としていて目が離さないでいた。
リヒトが最後の一太刀を入れようとしたがギリギリでかわされてしまう、だが瞬時にかわされた事に気づきもう一太刀入れようとした時、リヒトの剣から禍々しいオーラが一瞬出てヴェントに一太刀入れて決着はついた。
「合格だ」
「ありがとうございました」
生徒たちがリヒトの力に騒然としていたら、一人の少女がリヒトは天才騎士で大人にも引けを取らない実力だと話しているのを、アーフルたちは耳にし奮い立っていた。
「ごめん、リミ、キリヤ一人でやらせてくれ」
「あんなのみせられたらね、しょうがないわよ、怪我だけはしないようにね」
「頑張ってね、アーフル」
アーフルは一人で立ち向かっていった。
それを見たクラスのみんなは何者だと疑問に思っていた、そしてアーフルは学校の剣を借りてヴェントに挑んでいった。
「かかってこい、アーフル!」
アーフルの剣が輝き目にも留まらぬ動きでヴェントの懐に入り一太刀を入れ、決着は一瞬でついた。
生徒たちはリヒト以上に唖然していた、リヒトも同じような反応していた、だがリミとキリヤは誇らしげな顔していた。
「さすがだなアーフル、合格だ」
「よっしゃー、合格だぜ」
「次は、私ね」
周りが唖然としているなか、リミがヴェントに向かっていき闘いが始まった、リミは拳を武器として使っていて、アーフルやリヒトには劣るが善戦はしている様子だ。
「これじゃらちがあかないわね」
リミの全身が雷を纏った状態になり、力を溜めて一気に決着をつけようと、全身全霊の一撃をヴェントに向けてぶつけたが、ギリギリのところでかわされその先の地面が抉られてしまった、拳を抜いたリミは力尽き倒れ込んでしまった。
「もう力がでない、あともうちょっとだったのに」
「ギリギリだったが不合格だ」
「次は、僕の番だね」
周りは少しホッとしたのか空気がゆるみ、次のキリヤを少し安心してみられる様子になっていた。
キリヤは柄頭が円で指が入る大きさの短剣を二つ使っている、柄頭に左右の人差し指を入れ回しながらなにか呟いている。
「僕は誰にも聞こえない、僕は誰にもさわれない、僕は誰にも見えない」
そう言うとキリヤの姿は見えなくなっていた。
そしていきなりヴェントの背後にあらわれ、一太刀を入れようとしたが、受け止められてしまう、すぐにキリヤは後退しふたたび見えなくなっていった。
「姿を出す直前に気配を出しすぎだ」
「これならどうですか」
キリヤの気配が残像になって、何人にも見えるようになっていた、残像を利用して何回も突撃をしているようにみせ、隙をついて最後の一太刀を入れようとしたが、受け止められてしまったかに思えたが、それも残像でヴェントの不意をつきギリギリ一太刀をいれた。
「ギリギリだが、合格だ」
「やったよ、アーフル、リミ」
周りは動揺していた、自分たちはこんな力は持ってないと自信がなくなっていき、誰も次に行こうとはしなかった、だが三人の少年少女がヴェントに向かっていった。
「お膳立てはすんだってところかしらね」
「姐さん、俺たちじゃムリですって」
「そうですよ、僕たちの力じゃ」
「何言っているの、ここで行ってこそ主役は輝くものでしょ」
「「わかりましたよ姐さん……」」
気品のある少女がエリナで武器は先が尖っている扇子を使っているようだ。
体が太ましい少年がビータで武器はハンマーを使っているようだ。
やせ細っている少年がシスオで武器は細長い剣を使っているようだ。
そしてエリナたちの実力テストが始まったが、前の人達とは違い天授を使えないので、ヴェントに弄ばれているかのように周りのみんなは見えていた。
それを感じとったのかエリナから二人に対して作戦を言い渡した。
「プランA行くよ」
「「はい」」
プランAとは、まずビータが大振りでハンマーを相手の目の前で叩きつけ注意を引き、背後にまわったシスオが不意打ちで相手に剣で突きを与えようとするが、かわされてしまう可能性があるので、最後にビータの後ろにいるエリナがさらに不意打ちで一太刀を入れる作戦だが、ヴェントには一切通用せず、全て受け止められ三人衆が倒れ込んでしまった。
「連携は良かったが、不合格だ」
「くやしいー、次は絶対に一太刀いれてやるんだから!」
そして三人衆は悔しがりながら戻っていったが、周りのみんなは暗い雰囲気だった。
なぜならリヒトやアーフル達のように天授は使えず、三人衆の闘いみたいに連携は出来ないので、自信が無くなっており、だれもヴェントに向かおうとしなかった、そして一人の少年が話し出した。
「先生、僕は不合格でいいんで」
「私も」
「俺も」
ヴェントは少し残念がっていた。
確かにいままでの闘いを見れば自信がなくなるのは当然かもしれない、だがこれから騎士になろうというならば、こんなところで諦めてはいけないだろうとヴェントが口を開く。
「君たちは何のためにここにいる、国のためか、民のためか、友のためか、家族のためか、自分のためか、」
ヴェントは語った、なぜ騎士になろうと思ったのか、どんな意思でここにきたのか、本当にしたいことはなんなのかを。
ヴェントの言葉にみんなは漠然としていて、心に響いているのかわかなかった。
だが心の奥底に大切なものを見つけている人もいるかもしれない。
そして最初に諦めていた少年が口を開く。
「よくわからないけど、やってみなくちゃわからないってことですね」
そう言い少年が挑み、あっけなくやられてしまったが、少年はどこか清々しい顔をしていた。
そして次々に少年少女たちが挑んでいき、全員の実力テストが終わった。
リヒト、アーフル、キリヤの三人が合格、他の全員は不合格となった。
「リミだけ不合格ってとこか」
「うるさいわね、もうちょっとってところだったのに」
「力のコントロールができてねぇんだよ」
リミの力はコントロールが難しく、一瞬しか天授を使えないという欠点がある。
「待ってるから早く済ませてきてね」
リミが手を振って見送っていた。
そしてヴェントが、アーフル、リヒト、キリヤを連れてあるところに行く途中にリヒトがアーフルに喋りかけていた。
「君って、すごい力があるんだね」
リヒトは笑顔で喋りかけ、アーフルは少し浮かれてそうだろと答えて、アーフルとリヒトとキリヤは少しだけだが会話をしながら歩いていた。
そしてあるところに着くと大聖堂があり、中に入っていくと一番奥に王が座っていて、周りには大人の騎士が五人と、手前に子供が三人と隣に大人がいた。
三人の中には不思議な少女がいて、アーフルは驚いていた。
「そんな驚いた顔してどうしたん」
少女の隣にいた狐目の少年がアーフルに喋りかけてきた。
「そこにいる女の子とちょっと」
「リナリアちゃん、知り合いなん?」
「しらない」
不思議な少女はリナリアという名前で、アーフルには会ったことないという。
アーフルは道端であったことがあるというが、全く覚えてなかったといっている。
そんな会話をしていると王が話し始めた。
「君たちが今回の合格者というわけか、名前を聞こう」
そして一人づつ名前を言っていった。
ポニーテールで狐目の少年の名前がソウで、もう一人のショートカットでボーイッシュな少女がカランだという事がわかり、なぜ呼ばれたのかを王は話し出した。
「数ヶ月後、各国を代表する新人騎士の試合が行われる、その代表になるかもしれない子たちを見てみたかっただけだ」
子供たちはわけがわらい状況だったが、数ヶ月後に行なわれる試合が気になってしょうがなかった。
新人騎士による試合とは、各国は代表を三人まで選んで行なわれるものである。
例外としてアーフルたちの国からは三人二組まで出られるようになっている。
「あいつはこんな時に、なにをやってるんだか」
「どっかで居眠りでもしているんだろ」
「そういう人ですし」
「まぁ、あの人らしい」
「ふん」
五人の騎士たちが、もう一人来るはずだったのか、揉めているようだ。
そしてアーフルたちは帰っていいと言われ、先生を残して、アーフルたちは外へ出て行く途中、アーフルはリナリアに話しかけにいって、一緒に帰らないかと言うと。
「べつに、いい」
リナリアは無表情で答えて、先に行ってしまった。
アーフルは残念そうな顔していたら、ソウが目の前に現れて喋りかけていた。
「振られたん?」
「あんたは、そうゆうこといわないの」
ソウはカランに引っ張られてどっかに行ってしまった。
アーフル、キリヤ、リヒトで学校まで帰っている時に、ふと疑問に思ったことをキリヤに質問した。
「ていうか、あの五人の騎士ってなんだっんだ?」
「知らないの! 六天の騎士って言って、すごい人たちなんだよ!」
アーフルはそういった情報に疎く、キリヤに説明されていた。
六天の騎士とは、世界から選ばれた六人の騎士である。
最初に喋っていた妖美な女性がカルミア
二番目の小太りな男性がズイベロ
三番目の美男子がシグルド
四番目の美女がツバキ
五番目の年老いた男性がオータム
そして聖堂に来ていなかったのがオトギリだと言う。
するとキリヤがアーフルに向かってあることを言った。
「でも、アーフルなら鋭天、あるいは六天になっちゃたりして」
「俺はいいかな、騎士になってゆっくりすごそうっておもってるから」
アーフルは遠い空を見ながら答えた。
だがキリヤが鋭天や六天になると、騎士よりも自由ができるかもしれないと言うことを聞いた、アーフルは
「なら、鋭天や六天にすぐになって、自由に暮らすか」
「君たちは、なにをいっているんだ……」
リヒトが怒りを表情に表してアーフルに喋りかけていた。
「いやー、ほら、実力テストだって一発で合格したし、パパッと鋭天や六天になるなんて、楽勝だろ」
「パパッと、楽勝だって……」
リヒトは息を呑むように答えた。
たしかにアーフルならばできるかもしれない、だが彼にとっては、それほどまでに簡単になれると思っている、アーフルに対して言葉を発した。
「ふざけるな! 鋭天や六天になるために、どれほどの努力が必要なのか知っているのか!」
リヒトは語った、鋭天になろうとしたものの、挫折していったものを、鋭天になるために自分がどれほどの努力してきのかを、アーフルに伝えた、そして
「僕は六天になる、君も六天を目指すのならば、こんなところで負けてはいられないだろう、僕と闘おう!」
リヒトはそういい大広場へと向かった。
アーフルの言葉は、少しでも敬意していたリヒトにとって、衝撃的だった、だからこそアーフルに闘いを挑みたかったのだろう。
そしてアーフルとリヒトの一対一の闘いが始まるのだった。