12.十二剣(デセスエペ)との戦い
【あらすじ】
ソウが持ってきた宝の地図によって、洞窟の中にある花畑を見つけてさらに謎の文字で書かれた墓を見つけた。
そして旅館に戻って夜になったらアーフルは一人で外に出て行って、崖が近くにあるところに寝転んで星を見上げていた。
「あの文字はオーブリーのだよな……」
アーフルが言った文字とは墓に書いてあったもののことだ。
墓にはこう書いていた。
リュウド
お前たちがいなくなって何年経ったのだろうか、魔王がいなくなって魔物たちは戦意を失い勝利を勝ち取ったが、お前たちがいない世界は辛く寂しい
リュウドが一人で魔王に向かっていたことは知っていたが、俺は止められなかった、俺を少しでも頼って欲しかった、だからもう一度同じことがあったら俺を頼って欲しいとそう考えている
それから魔王の脅威もなくなり、リュウド、イーラ、エレノアの為に俺は国を変えているところだ、いつかお前の目指した平和な未来のために
そして最後にいっておきたいことがある、リュウド俺を変えてくれて感謝している、ありがとう
「ありがとう、か……」
アーフルは墓に書いてあった言葉を思い出しながら呟いていた。
リュウドとはアーフルの勇者だった時代の名前である。
少し経ってアーフルは後ろの方から足音が聞こえたので首を上にあげたら。
「アーフルなにやってんの!」
リミが寝転んでいるアーフルの視界に入るように後ろの方から屈んで喋りかけていた。
アーフルはリミにこんなところに来てどうしたのかと聞いたていた。
リミはそれに返すように一人できて何かあったのかと聞いていた。
「ちょっと夜風にあたりたくなってな……」
アーフルは夜空を見上げながら答えていた。
その返答にリミは少し呆然としていたが、すぐにアーフルの横に座って星を観ていた。
「星が綺麗だね……」
リミは夜空に煌めく星に目を奪われていた。
アーフルはから返事をして、リミに対して唐突にあることを言った。
「頼って、いいのかな……」
アーフルは寂しそうな目をしながら言っていた。
リミはその言葉の真意は判らなかったが、頼ってくれたら嬉しいと答えていた。
そんな会話をしていると後ろの森から人の足跡が聞こえてくるのを、アーフルとリミは感じ取ってていた。
「アーフルってば、何も言わずにどこ行ってたんだよ!」
キリヤが息を切らしながら森の中から姿を現していた。
すぐにリミがキリヤのところに駆け寄り、まずは座ってゆっくり休もうと言っていた。
そしてリミはキリヤに対して、アーフルが外に出た理由や頼って欲しいなどの会話をしていた。
リミはキリヤとの会話が終わってから、アーフルが全くと言っていいほど会話に入ってこないのを疑問に思っていた。
「アーフルどうしたの?」
リミはアーフルに疑問を問いかけた。
アーフルは寝転んでいるのをやめて、座り直してからキリヤに対してあることを言った。
「いつから夜、一人で出られるようになったんだ?」
アーフルはうっすらと笑みを浮かべながら質問をしていた。
その質問にリミは思い出したかのようにキリヤを見つめていた。
「頑張って、克服したんだ!」
キリヤは立ち上がり誇らしげな表情で言っていた。
するとリミが嬉しそうな表情で、キリヤの背中を叩いて克服したことについて褒めていた。
アーフルは未だに納得してない様子で、さらにキリヤに対して質問をした。
「昨日の夜、便所に行くために起こしたのはなんなんだ?」
アーフルは真剣な顔で言った。
その質問にキリヤはアーフルがいるから頼ってしまったと言っていた。
リミはなんでそんな疑っているのかとアーフルに疑問を投げかけたあと、アーフルは笑みを浮かべながら疑ったことについてキリヤに謝っていた。
「もう、アーフルってば」
キリヤがそう言ってアーフルの肩を叩こうとした次の瞬間、アーフルがキリヤの首元に剣を当てていた。
リミは驚いていたが、キリヤは微動だにせずこう言った。
「いつから気づいていた?」
キリヤは不敵な笑みを浮かべながらアーフルに言った。
アーフルは最初は一人で夜に出歩いてここまできたことについて、それとキリヤの最初の発言にあった何も言わずのところが気になっていたという。
最後の決め手は現在、アーフルの首元に当てられている、キリヤの短剣だったという。
キリヤはそれだけかと聞くと。
「あいつのことは、俺が一番知ってんだよ」
アーフルは眉間にしわを寄せて答えていた。
キリヤは少し残念そうな顔をしながら、後ろの方に飛んで下がっていった。
「たったそれだけですか、焦って損したよ」
キリヤの声が徐々に大人の男性の声になり、キリヤではない眼鏡をかけた細い男性の姿に変わっていった。
アーフルは驚いた表情で何者かなのかを聞いた。
「私は十二剣のムートン」
キリヤに変装していた男はムートンだという。
アーフルは十二剣とはなにかと聞いたら、ムートンは今はまだ答えられないと言った。
そしてムートンはあることを言った。
「この姿、覚えているかい?」
ムートンはさらに姿を変えていた。
その姿とはアーフルたちが秘密基地に行った時に、小屋を燃やしていた魔物だった。
アーフルは驚きとともに、あの時の笑みについての悩み晴れたかのような顔をしていた。
そしてムートンは姿を戻し、急に後ろの森の方に攻撃を放っていた。
すると煙が出て三人組の影が現れた。
「うわぁー、急になんだよ!」
「姐さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、あなた達こそ大丈夫?」
煙から出てきたのは、エリナとビータとシスオの三人だった。
アーフルはエリナたちがいるのに驚き、なぜこんなところに来たのかと言ったら、エリナははぐらかして小声で言葉を漏らしていた。
「まさかこんなことになるなんて……」
実はアーフルとリヒトの闘いを見ていたのと、アーフルたちが行った洞窟にエリナたちは後をつけて行っていたが、アーフルたちが落とし穴に落ちたのを見て旅館に帰ったのだという。
それからアーフルが一人で外に出たのを見かけたので、三人で後をつけてこんなことになっていた。
そしてエリナがムートンに対して言葉を発した。
「何者かは知りませんが、私たちが来たからには容赦しませんわよ!」
エリナがそう言って高を括っているが、ビータとシスオは弱気になっていてエリナを止めようとしていた。
だがエリナは二人の制止を振り払って、ムートンにこの合宿中に得た風の天力で攻撃をした。
しかしエリナの攻撃は弾かれてしまい、すぐにムートンの反撃を受けてしまいそうになったが、アーフルがすぐに駆け寄ってムートンの攻撃を防いでいた。
「俺に用があるんじゃねーのか?」
アーフルがムートンに問いかけていた。
ムートンはアーフルのことを殺しに来たのだと言って、さらに攻撃を開始していた。
そしてアーフルとムートンの戦いが始まり、誰にも入ってはいけないほど凄まじかったが、二人の戦いに入るようにリミが声を発した。
「どうなってるの! アーフルがキリヤに剣を突きつけたと思ったら、キリヤじゃなくなって変な人になるし! わたしはどう……」
「うるさいね……、きみ」
ムートンはそう言いながら、リミの胸の中心に手を突き刺して、その手を抜き出して、リミの血で汚れている手を拭いていた。
そしてリミは倒れて胸の中心には貫かれた穴が空き、血がふき出ていた。
その光景を見たアーフルはリミにエレノアの面影を重ねていた。
「何をやってるんだ! てめー!」
アーフルは怒りの感情を抑えきれずにいた。
その怒りに呼応するようにアーフルの勇者の力が膨れ上がっていき、地面や木々は大きく揺れて、アーフルの体の周りが光のオーラに包まれていた。
「やはり君が勇者か!」
ムートンは笑みを浮かべながら叫んでいた。
そしてムートンが自分も本気を出そうとした次の瞬間、アーフルがムートンの目の前に素早く現れて、剣を振り上げて攻撃をしていた。
すぐにムートンは避けて空中に立っていたが、左腕がなくなっていた。
「少しは待ったらどうなんだい?」
ムートンは空中に立ってアーフルを見下しながら言っていた。
アーフルはムートンの言葉など聞いていなく、さらにムートンに攻撃を仕掛けて、また二人の戦いが始まった。
一方エリナたちはわけも変わらず立ちすくんでいたが、何かを思い立ったのかすぐにリミに駆けつけて手当てをしていた。
「血が……、止まらない」
エリナは着ていた服を止血に使っていたが、止まら気配がなかったのでビータとシスオにも服を借りて、服をどかしてみると傷が塞がっていた。
「どういうことですの!?」
エリナは困惑した表情でビータとシスオを見た後、アーフルとムートンの戦いの方に目を移していた。
そしてアーフルとムートンの戦いに決着がつこうとしていた。
アーフルが最後の一撃を放ってムートンは消し飛んだが、ムートンは最後に意味がわからない言葉を発した。
「君はその力を呪うことになるだろう!」
アーフルはどういう意味かわからなかったが、とにかくリミの方に駆け寄っていた。
アーフルはリミの傷が塞がっている理由をエリナに聞いていたが、わからないのだと言っていた。
それからアーフルはリミを背負って旅館に向かうのだった。