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  作者: 椎名 真琴
第一章 始まりは終わりと共に
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第一章4  『...平和は好き...』

 それから2週間、俺は一時しのぎで楓の研究室の隣室で暮らし、4月1日の入学式の日を迎えた。


 先日届いた、胸に東亜高校のロゴが入った制服を着て、部屋を後にする...


 「じゃあ、行って来る。」


 そう言うと大学の正門をくぐり、外に出た。


 「うん、行ってらっしゃい。 頑張ってね。」


 楓は門の前まで見送りに来てくれて、俺に手を振っている。


 (頑張る要素はない気がするが...)


 彼女自身「一緒に行きたい。」と言い張っていたが、怖い女教授に「これ以上さぼったら単位あげねーからな。」と脅され、しぶしぶ大学に残ることになったらしい。


 ちなみにその女教授は俺に対しては随分とお人よしで、俺が大学で寝泊まりできるよう色々と計らってくれた。


 それはそうと、楓とは高校に行くにあたって幾つかの約束があった。



 ・1つ目――――― 学校では苗字は『双葉(ふたば)』と名乗るようにすること。


 ・2つ目――――― 他人に『空間支配(スペース=シャフト)』の能力を見せないこと。


 ・3つ目――――― 決して目立たないこと。



 3つめは最低条件として、どれも俺が、魔法使い『破滅の魔帝』だと知られないようにするためだ。


 500年前に死んだはずの人間が生きていたら大騒ぎになってしまう。


 2つ目は―――――  バレなければ使ってもいいだろう。


 

 しかし、蘇生技術を世に公表すれば、楓は『天才』として称賛され、俺は正体を隠す必要がなくなる。

 彼女がそうしないのは、『名声』を嫌ってか、それとも他の理由なのか、まだわからなかった。


 そして、

 「大学の門を出てまっすぐ行くと、『東亜大学前』という駅があるから、16番線に乗って『首都前広場』で降りる、そうすれば高校につく。」

 

 というなんともざっくりな説明が楓から言われたことだった。


  とりあえず言われた通り、まっすぐ歩いていく。


 左右には高層ビルが立ち並ぶ大通りである。


 大学に居候している間にも散歩がてら外に出たことは何回かあるが、500年前とは何もかもが違っていた。

 

 第一、今いる場所『東亜連合国』の首都『帝京』は当時、何もない焼け野原だった。


 人々は地下100メートルにあるシェルターで僅かな食糧と水だけで生き、『自由』なんてものは存在しなかった。


 だが、今ではこの地は人々の活気が溢れ笑い声が絶えない―――――


 俺にとってはこの平和はなかなか新鮮なものだった―――――


 と、周りを見渡すと俺の隣を並行して歩いている、あどけなさそうな表情の可愛らしい少女がいた。


 俺と同じ東亜高校のロゴが入った白色の制服に身を包んでいる。


 彼女もまた物珍しそうに左右のビルを眺めているようだった。


 

 もしかしたら俺と同じことを考えているのではないかと思って、珍しく感極まってしまい、少女に話しかけた。


 「平和というのはいいものだな。」


 普通の学生が唐突にこんなことを言ったら、まず遠ざけられるいったところだが、少女はちらとこちらに顔を向けた。


 腰まで伸びた長い白色の髪が印象的で、どこか遥か彼方を眺めているような雰囲気だ。


 それと、なぜか前に会ったかのような感触を覚えた。



 「...平和は好き...」



 少女は表情を変えず淡々と言った。


 口下手なのかそれとも俺が言ったことが突拍子だったのか、そのあとは俯いて何も言わなかった。



 「これから入学式か?」


 「...うん...」


 「同じだな、帝一、ああ、双子(ふたば) 帝一(ていいち)だ。 よろしく頼む。」


 俺は楓との約束通り『(すめらぎ)』とは名乗らなかった。


 「...四都葉(よつは)...  ...有栖川 四都葉(ありすがわ よつは)...」


 「...よろしく...」


 (ああ、なるほど)


 名前を聞いて俺は合点がいった気がした。


 前に会ったような感覚になったのは気のせいではなかったと―――――


 そして、俺が彼女に名を名乗ったときに、一瞬だけこわばった彼女の表情を、俺は見逃さなかった―――――


読んでいただきありがとうございます。

クリスマス皆さんはどうでしたか?

『年齢=付き合ったこと無い歴』の筆者は電車で、沢山のカップルに出会いました...悲し

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