第一章10 『巨大な豆腐は街中に』
「なんだ、これは?」
「見ての通り、博物館だね。」
時は放課後... 約束通り先ほど知り合った級友、『黒田 清隆』に連れられて来てみれば、目の前には大きな白い箱があるだけである。
清隆は先ほどからこの得体のしれない箱が博物館だと言っているのだ。
高校から徒歩5分ほどの場所... 高層ビルが林立する中、ぽつんと佇んでいる。
もはや巨大な豆腐である。
「この建物、あの有名な建築家『ル・トレビアーン=ググレカス』が設計したんだってさ。 凄いと思わないかい?」
キヨは少々興奮気味に、その建物... いや、豆腐に見入っている。
「あ、ああ、...凄いな。」
(見れば見るほど巨大豆腐にしか見えんが... 芸術という物も時代と共に変化していくというものか。)
豆腐の端の方にスライド式の入り口があり、皆そこから出入りしている。
俺たちもそこへ向かう。
入り口を抜け、まず目に飛び込んできたのは大きな文字である。
―――――『皇 帝一 展 』―――――
「あれだよ。 今日の目的は。」
キヨは文字を指さしながら俺に向かって微笑んだ。
「...」
「ん、ごめん... 嫌だったかな?」
黙っている俺のことを見越してか、キヨが口を開いた。
「いや、そういうわけじゃない、大丈夫だ。」
これは本心だ。
自分についての展示を見るのは、少々くすぐったい気もするが、俺の知らない何かがあるかもしれない。
「それなら良かった。 じゃ、いくか。」
キヨに対して俺は、ああと答えると展示スペースへと向かった。
更新遅れてすみません。