誤解だし。
「――え!? こころ、またフッたの? 飽きるの早くない?」
「大きな声で叫ぶのやめてよ! それに振ったも何も、付き合ってないし。そうやって周りに誤解させることを広めないで欲しいんだけど」
「そうは言うけど、彼女持ちの男ってみんながみんなラブラブなわけでもなくて、そんな寂しい時に頭なんか撫でたら、そりゃあ誤解もするでしょうよ」
「動物を愛でただけだし。そんなんじゃない……」
「動物ってか、男だし、彼女持ちだし。近づかれてもちょっかい出したらアウトだし! 自覚しないとダメっしょ」
教室でいつも話す口うるさい奴……というか、一応友達の御木かなで。この子はあたしを誤解しながらも、羨ましさもあってかいつも話しかけてくる。かなで曰く、あたしは彼女持ちの彼氏を奪い、すぐに飽きて振るという行為を繰り返す悪女らしい。
はっきりいって、全てが誤解であり、何人かの仲良き女子友は男を本気にさせる前に振って、結局は元サヤに戻させる彼女側の味方とかなんとか。そんなありもしない噂と妄想を作られていた。
「好きな奴、いないの? そんだけ男が寄ってきてるんなら、一人くらいは本気になってもおかしくなくない?」
「それ」
「どれ?」
「勝手に寄ってきてるだけで、あたしから求めてるわけじゃないし。なのに本気も何もないと思うけど?」
「や、求めてないなら頭は撫でないし、体のどっかに触れたりしないっしょ」
「犬とか猫とか、寄ってきたら可愛がりたい。それと同じなだけだし。だからそれと同じ」
人間の男ってよりか所謂慈愛の心、いや、動物愛護の精神を持ちながら接しているだけあって、そこに恋とか愛とかそんな感情は一切無い。つまり、まだ一度もあたしから彼氏とか、男を求めて告白とかそんなのは一度もしていないのが現実。
「かなでだって、動物には優しくなれるよね?」
「そりゃまぁ……や、違う。そういうことじゃないし。とにかく、こころって何かたぶん、癒しオーラ出てるっぽいから、寄ってきても突き放さないと自分から求めても相手は近寄ってこないよ」
「――だったら、あたしはあたしだけに……」
言葉の続きを言う頃には、いつも予鈴が鳴り、言葉を聞くことなく席を立っていくかなでだった。どうせ言っても信じないだろうけど。求めても注がれない愛情より、求められて相手の心が楽になるんなら、そっちの方がいい。あたしはそれを実践しているに過ぎない。
あたしだって、好きになりたいし相手に求めたい。けど、何の反応も情も注がれないのが一番怖いし悲しいんだ。あたしだけを見てくれる男が欲しい。それだけのことなんだ。