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英雄イナリ

「英雄イナリ…」

 私の頭の片隅にその名が浮かんだ瞬間思わず呟いてしまった…巷で流行している吟遊詩人の詩にその名が出てくる…まさか、まさか、本物なのか?確かめなくては、いや確かめたい!


「申し訳ありません!女帝殿、発言をしても宜しいでしょうか?」

「ふむ、妾の傷は既に癒えておる発言を許すえ」

「私はランバー国の王宮で薬術を専門にしているランズと申します」

 目の前の女帝殿は既に治療も完治し腕が再生している、先ほどの壮絶な出来事など無かったかの様に…女帝殿の精神力も凄いが、慌てる事無くアッサリと治してしまうイナリと言う者も凄い。

「ランズとやら何を発言するのじゃ?」

「はい、女帝殿にではなく、そちらのイナリ殿に質問が有ります」

「エッ俺に?」

 エロイの治療の事かな?詠唱無しで治したのマズったかな?まぁ狐面してるからいいや。


「ほうイナリにか?何を聞きたいのかえ?言うてみよ」

「イナリ殿は、この地より遥か離れたヴァルトリアから来られたのですか?」

「そうだが…」

 ”遥か離れた”が凄く気になるけど、まさかイナリの噂が流れてる?この人ヴァルトリアにいたのかな?

「やはり貴方は”英雄イナリ殿”ですか!」

「はぁ?」

 ザワザワ ザワザワ

「ランズとやら、その”英雄イナリ”とは何ぞや?妾にも詳しく教えてたもれ」

「はい、私がこの地へ来る前にランバー国に旅の吟遊詩人がやって来ていたのです。――――――――――――――」


 ランズさんという人、凄く興奮してエロイに、そして他のアマゾネス達に聞こえるよう吟遊詩人の詩、英雄イナリの事を話し出したよ…と言う事は俺がヴァルトリアを離れた直後に、その詩が流行って その流れでランバー国にまで吟遊詩人がやって来たんだ!恥ずかしいからヤメテ!ランズさんも興奮してるけどエロイも他のアマゾネスも食い入る様に興奮して話を聞いてるし…端から聞いてたらスゲー脚色してる位袈裟な話だけど事実なんだな…す、素顔隠して良かった、アッ!この国では素顔がバレてるのか!


「ふむ、お主の言う通り、この者は本物の”英雄イナリ”じゃ!」

「やはりそうでしたか!私は最初にその詩を聞いた時には娯楽の少ない庶民向けのお伽話を連想していたのですが、まさか架空の人物では無く本物の英雄がおられ、その英雄が自分の目の前におられるなんて!この国に来て良かったです!」

「ちょ!お前ら何勝手な事言ってんだ!」

「おや?其方は英雄イナリでは無いのかえ?」

「いやそうだけど、”英雄”は、付けなくていいって!」

 恥ずかしいから…

「妾にとっても、民達にとっても其方は英雄じゃ!のうクレア!其方もそう思わぬかえ?」

「ハイ!エロイーナ様の仰られる通りイナリ殿は、我々アマゾーン国民にとって神に等しい英雄であります!」


「もういいって!お前ら話の本題がドンドン逸れていってるぞ!」

「そうじゃ!其方の英雄譚が面白すぎて忘れておったわ、クズも縛り上げている事じゃし本題に戻ろうかえ、ランズとやら今回の件どの様に説明するかえ?」

「そ、それは…」

「エロイナ、俺から説明してやる。そこのクズ王子以外の人達はクズ王子の監視だ、それと今回の件はランバー王は知っている、その人達はランバー王の命令でクズの監視兼アマゾーン国に本当に治療に来たんだ!知らないのはクズ王子だけだけどな」

「なっ!何故それを!」

「俺のこの仮面は真実を見極める特殊なアイテムなんだよ」

 嘘だけど。

「!!!!!!?」

 なに!父上の命令で私を監視だと!?


「イナリ、それは真の事かえ?」

「あー、ランバー王はアマゾーンと事を構える気は全く無い!最悪 クズ王子が暴走した時には抹殺も考えていた様だ。そうだろ、宮廷医術師のクレイグさん?」

 しかし実の父親に抹殺命令が下る息子って、どんだけ出来の悪い奴なんだ?後でクズの思考読んでみようかな?裏で悪事が色々出てきたりして!


「!!!!!!?」

 王子の私を抹殺だと!?


「何故私の名を!いえ、真実を見極めれるのでしたね…正しくその通りです。我々はスカム王子の監視、そしてスカム王子の企てにより、病気が感染したアマゾーン国民を治療せよと王の命でやって参りました。全てイナリ殿の仰られた通りです。王子がやった事とは言えランバー国の恥!私達も如何なる処分も受け入れます!」


「自分の仕出かした事で無関係な家臣に頭を下げさすとは…ったく」

「妾に小声で囁いていたのは本当の事じゃったのじゃな」

「まぁそういう事だ。で、どうする?クズ王子も捕らえたし、この人達も本当に王の命で来た訳だし、後はエロイナの考えだけだぜ?」

 まぁエロイの事だから思考は読まなくても、大体分かるけど。


「そうじゃのぉ〜妾も他国と事を構える気は毛頭無いでのぉ〜バカに振り回されコレ以上被害を出すのもバカらしい、ランバー王の言葉も信じよう、じゃが被害が出たのは確かじゃ!お主達の薬に関する積荷を全て今回の被害分として頂こうかいのぉ それがお主達の処分じゃ」

「ハッ!女帝殿、寛大な処分痛み入ります!」

「で、このクズは、どうする?」

「モガー!モガー!」

 誰がクズだ!縄を解け下民!


「クズが何か言いたそうだな、口だけ自由にしてやる、ホラ何か弁解してみろ」

「貴様ああ下民の分際で!クレイグお前達もだ!王子の私を裏切り、こ奴の嘘を信じおって!私は無実だ!」

「スカム王子貴方はまだそんな事を…貴方の父君は一縷な望みを持って私達を同行させたのですよ?自分の罪に悔いて病人を一人でも多く救われると信じて…自分の息子を好き好んで抹殺などしたくない陛下の気持ちが解りませんか?私達もそうです!少しでもアマゾーン国民に悔いる気持ちが有るのなら率先して治療に励もうと思っていたのに、貴方ときたらどすです?病人を差し置いて女帝殿を妃にしたいとは!」

「私は知らん!そこの下民と仮面の下民に嵌められたのだ!」


 ガンッ!「グェッ!」コテン


「悪いが眠らしたぞ。エロイナこいつどうする?」

「もうそんなバカには興味無いのじゃ」

「ブラッドは、どうしたい?嫌な命令された訳だし一発ぶん殴るか?」

「と、とんでもないです!俺は何とも言えません!」

 イナリさん、こっちに振らないで!


「クレイグさん、こいつ連れ帰って王様に処分決めてもらえないかな?」

「はい、承知しました」

「お主達折角この国へ治療に来てくれたのじゃ 多少いざこざがあったが治療の為に来てくれたのは事実、疲れも溜まっておろう、大層な持て成しは出来ぬが暫し寛いで行かれよ、そして先ほどの”英雄イナリ”の話を、まだ知らぬ民達にも聞かせてやってくれまいか?」

「ハイ!分かりました。女帝殿!貴女様の心遣い本当に感謝致します!」




 予想もしていなかった展開になり、何とか一件落着したようだ…クズ王子を除く一行は数日アマゾーン国へ疲れを取るために滞在する様子、その後はクズ王子を連行してランバー国へ帰国するとか、俺もこの国の用事を早急に済ませ合流しようかな?間に合えば合流しよう、どの道ブラッドの妹も治療しに行く予定だしね。


 今日は朝から色々あったけど、予定通り(予定より少しズレたけど)乳房の治療を闘技場で行いました。先ずは年配者からの治療、もうね、服を脱がなくてもいいって言ってるのに、何故に服を脱ぐ!ババアの裸なんか見たくないって!絶対に先先代様が何か吹き込んだに違いない!まぁ狐面をしてるから目を閉じているのもバレないし…エッ?何故狐面をしてるかって?そりゃランバー国の医術師、薬術師達が何処かで話を聞き付けて治療を見たいって付いて来ちゃったからだよ、皆んな暇なのか、仕事熱心何だろね?俺の素顔を知らない人の前ではイナリに成っておかないとな。


 流石に午後からの治療と欠損部分の治療なので70人程しか治療出来なかったね、明日は朝から治療開始だな、ランバー国の医術師、薬術師なんか凄く食い入るように見て、「奇跡だ!」とか「有り得ない!」とか「イナリ殿は神の化身なのか?」とか色々好き勝手言ってたね、まぁいつものように無視してたけど。

 因みにクズ王子は一行がアマゾーン国を発つまで牢屋送りです。ざまー!


 夜は夜でエロイに一言暴走し過ぎだと文句の一つでも言ってやろうと思い、警護のアマゾネスさんに連れられてエロイの部屋へ行って見れば、先客が居ました。

 お馴染みのクレアさんと先先代様が!俺が一言文句を言う前に二人に今日の暴走振りを説教されていましたね〜俺に気付いたエロイが俺に助けを求める視線をしてたけど、一言「今日はお疲れ〜明日も早いから寝ます、じゃおやすみー」っと、言い残しサッサと自分の部屋へ戻って来たよ、哀れエロイ!


 じゃマジ寝ますか、おやすみ〜。










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