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真の首謀者

 エロイとクレアさんとの話もまとまり再度男達の元へ向かった。

 牢屋へたどり着けば、牢の中で一人の男が蹲るように泣きながら他の男達に何かを訴えている。

 エロイとクレアさんは何事かと、牢番に状況の説明を尋ねている、俺は別に尋ねなくても解るから暫く様子を伺う事にした、もし危ない状況なら瞬時に動けるように…暫く様子を見ていると男達が俺に気づいた様子だ。


「狐の旦那来てたのか?」

「あぁ…」

 狐の旦那って!まぁ好きに呼んでくれ

「こいつが病気を運んで来た野郎だ」

「あぁ 判っている。自分から名乗り出たんだな…」

「あー最初はみんな、怒りで殺してやろうかと思ったんだが…」

「身体の不自由な妹の為に自らを犠牲にし、バカな王子の命令を引き受けたと?」

「旦那何故それを!って真実を見極める事が出来るんだな…腹も立ったのは事実だが…なんと説明していいやら」


 俺と男が話している姿に気付いた当事者が柵を隔て俺の元へ近づく。


「イナリさん!俺だ、俺が全てやったんだ!だから他のみんなは助けてくれ!俺はどんな処罰でも受ける!殺してくれても構わない!だからだから…ううぅぅ」


 自らの罪を認め再度蹲り泣き出す男…周りの男達の思考を読めば、今すぐ殺してやりたいほど腹は立つ、腹は立つのだが男に対しての同情心で、どうしていいか判らない状態か…


「お前が死んだら残された家族 妹は、どうなるんだ?恐らく お前に命令したクズ王子は約束など守らないだろう?」

「そ、それは…じゃあどうしたら、俺はどうしたらいいんだ!?ううぅぅ」


 命令とは言え、ここまでの騒ぎに成るとは本人も思っていなく、真実を打ち明ける勇気もなくズルズルと今に至った訳だが、真逆全く関係ない者が死ぬとは思わなかったようだ…そして良心の呵責に耐えられず罪を打ち明けた…


「そうだな…取り敢えず謝れ!話はその後だ」


 男はまず初めに俺の背後に居るエロイに そして今ここに居るアマゾネス達に謝罪し、再度牢の中に居る男達に謝罪した。

 謝罪も一通り終わるのを見届けて、場の雰囲気が落ち着くのを待ってから男達の治療を開始する。


「今から お前達の病気の治療をしたいと思う」

「ほ、本当か!?」

「治るのか!この病気は!?」

 ザワ ザワ ザワ


「あ〜治るとも、ここに私が作った特製の丸薬が有る、一見飴玉に見えるが即効性の有る薬だ。私の事が信じられる者は丸薬を渡そう」

 以前アルン商会で購入した、ドングリ飴擬きだけどね。変にヒーリングで目立たないよう飴玉(丸薬)の登場だ!


「信じる!信じるから薬をくれ!」

「おれもだ!信じるからそれを!薬をください!」

 ザワ ザワ ホントに治るのか?


「心配せずとも全員分ある…が、まだ疑っている者も居るようだな…おい お前!覗き魔 試しに毒味をしてみろ」

「ちょ!狐の旦那、覗き魔はないぜ俺の名はドリーだ!毒味って毒じゃないよな?」

「あー、毒じゃない。信じる者は救われるぞ」

 覗き魔でいいじゃん。

「わ、分かった旦那を信じよう」

 徐ろに渡された丸薬は一見普通の飴玉のようだ?…しかしここで狐の旦那を疑っても仕方がない、勇気を振り絞り丸薬を口の中に放り込んだ…あ〜甘い、薬とは思えないほど甘い薬だ…高級な飴玉を食べている気分だ…するとどうだ!口の中で甘味が広かった途端!カラダがカラダが癒えていく!カラダにできた発疹もシコリの様なモノも!アノむず痒さも消えていく!身体中に感じた全ての違和感が全て無くなった!


「オレにもくれー!」

「俺もだ!」

「頼む!早く早くくれー!」

 やいのやいの ザワ ザワ


「心配しなくとも全員に渡す」

 丸薬を口に含んだ者からドンドン治療をしていき治療が終わってない者は今回の当事者のみ。


「お前にもコレを渡す」

「いやしかし俺は罰を受けないと…」

「謝罪も反省もしているのではないか?生きて家族の元、妹の元に帰らなくていいのか?」

「謝罪も反省もしている…でも罪に対しての罰を受けていない…」

「女帝殿!このように、こ奴は言っているが、どうする?」

「ふむ…全て其方に一任しておる、其方の好きにするが良いのぉ」

「そう言う事だ。お前には罪を償ってもらう、その前にカラダを治してからだ」


 俺はイナリさんの言われるがまま、薬を口に含んだ、見る見る内にカラダが癒えていく…不思議な薬だ?この薬は妹には効かないのだろうか?いやその前に今回犯した罪を償わければ…


「女帝殿、無実な罪に囚われた者達の処遇を頼む」

「ふむ解った。クレア!」

「ハ!承知しました」


 男達はエロイの指示の元 アマゾネス達に付いて牢から出ていく。

 残されたのは俺とエロイ、そしてこの件の当事者ブラッド。


「イナリさん!俺はどう罪を償えばいいんだ?無関係な青年まで死なせてしまい、罪を償うだけで俺は許されるのか?」

「それは問題無い!」

「そんな…問題無いって、イナリさんにとっては他人事だろうけど…」

「いや他人事じゃない、その青年と言うのは私の事だからな」

「エッ!?」

「お前 いやブラッドと、この場所でしか会ってないから素顔を見せても本人だとは判らないだろうが私がその青年だ」

「ま、まさか?じゃあ死んだと言うのは嘘…」

「あー嘘だ!なぁ女帝殿」

「あぁそうじゃのぉ、妾は殺したなどと一言も言っておらぬ、ブラッドとやら」

「何故そんな嘘を…」

「ブラッドを試したんだよ。自分のやった事に対して罪の意識も無いようなら、そのまま女帝殿に突き出して処刑してもらおと思ったからな、ブラッドの事情は理解したがそれに値する者か判断したかったのだ」


 まぁ判断する前に思考を読んだからな、こうなるのは解っていたよ。


「仮に青年がイナリさんだとしても、俺は この国の女達に病気をバラ撒いた張本人だ、アマゾネス達の会話を聞く限り薬が足らないと聞いた…今も病気で苦しんでいる者の事を考えたら…」

「それは既に解決している」

「えっ?じゃ あの丸薬でイナリさんが治したのか?」

「丸薬は使っていないが、別の治療法で病気に感染していた全てのアマゾネスを治療した」

「す、全ての!?」

 凄い!どんな治療法を使ったのか解らないけど…もしかしたらイナリさんなら妹を…


「この話は、ここまでだ。ブラッドに償ってもらう罰を与えよう」

「どんな罰も受けます!」

「イナリ、どんな罰を与えるのかえ?」

「フフ、この国に病気をバラ撒いた真の首謀者を捕まえて、ここへ連れて来る事だ!」

「なっ!」

「それは良いのぉ」ニヤ

「エロイーナ様、戻って参りました!何やら楽しそうな話をしていますね」ニヤ


 お!クレアさん戻って来たな。エロイも楽しそうにクレアさんに話してるし。


「心配しなくても私が、いや俺が捕まえてやる、ブラッドはランバー国への道案内だけだ。…ん〜そうだな道案内をしてくれる報酬に、ブラッドの妹を治してやろうか?どうだ」

「し、しかし相手は王族…」

「犯罪を企てる奴に王族もヘッタクレもあるか!ブラッドは、クズ王子と妹 どっちが大切なんだ?」

「そ、それは…」

「明日に返事を聞こう、クレア殿 彼を頼む」

「分かりましたイナリ殿!」


 ブラッドをクレアさんに任せ、エロイと牢のある場所から離れ歩きながら話をする。


「その狐の面は、工房で作らした物かえ?」

「あ!コレか?コレは元々俺の物だぞ」

 狐面外すの忘れてた!バックに仕舞っておこう。

「ほ〜中々良い面よのぉ、して先程のイナリと言う名はなにかえ?」

「あ〜それな、狐面で治療して回っている時の仮の名前がイナリなんだ」

「ほ〜そうなのかえ」

「ここでは素顔で治療したけど、余り目立つ行動は、したくないからな、だから狐面のイナリの登場なんだ」


「なるほどのぉ〜然しアスラ、其方は甘いのぉ」

「そうか?」

「優しすぎると言うか甘いのぉ、(いず)れその甘さに足を掬われねば良いがのぉ」

「ハハ、自分で蒔いた種なら自分で刈り取るだけさ!それで俺にじゃなく、俺の身近に居る者に手を出すようなら容赦はしない!」

 勇者だろうと魔王だろうと身内を傷付ける奴にはな。


「お〜怖いのぉ〜妾は敵では無く其方の身近におりたいのぉ」

「何言ってんだ!俺よりエロイナの方が強いし容赦なく怖いって!」

 容赦無く耳チョンパだったからな!

「妾を負かしたのに皮肉よのぉ」

「まぁ冗談は、それ位にして明日 予定通り乳房の治療を始めていいんだな?」

「予定通りじゃ!明日の昼食後からで、お願いできるかえ?」

「お!昼からか、じゃあ明日に備えてゆっくり休むとするかな」


 部屋の前でエロイと別れ明日に備えて万全な体制にしないとな、明日の治療は欠損部だから病気より時間が掛かるかも知れないし体調を整えておくに越した事はない!

 男達の件も終了したし、少し気が楽になったかな。


 じゃあ寝ますか〜。




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