漫画好きな駄竜
アレからどれ位経ったのだろう、コイツ全然帰らしてくれないんだけど。
しかし流石と言うか、コイツが凄いのか五百年前に聞いた話をしっかりと覚えてやがる、ドラゴンにとって五百年なんて人間にしたら数年くらいの感覚なんだろ?
『アスラ次は、アノ話の続きを我は聞きたいぞ』
『あのなーアノじゃわからないだろ?どんな内容の話なんだ?』
『主の住む世界に居るニンジャとか言うモノの話だ、続きが気になる、さぁ話せ』
『あのな〜どこから続きを話せばいいんだ?思考を読んでもいいなら読むぞ?』
どう聞いたか知らないけど現代には、なんちゃって忍者しかいませんよ。
『グム、それは止めろ!今から思いだす、確か我の記憶では様々なニンジャが徒党を組んだ辺りだ』
『あ〜それか、じゃあ その話の手前くらいから話し出すぞ』
『有無、さぁ話せ!』
まぁ偉そーに!確かに竜では偉いんだろうけど、漫画好きの竜って威厳ねー!しかもそれが竜の頂点に立つ奴だから尚更だ唯の駄竜じゃねーか。
このモノを初めて見た時は、力無き小さきモノだったようだが、自らのステータスを隠蔽いや幻覚と言った方が良いかな、それをしておる。
我も危うく騙されるところだったわ!我を前にしても物怖じしない態度、初めてカツヤ、ケンジと会った時より堂々としておる、物語の語りも アノ二人より上手い!五百年待った甲斐がある。
戦闘に関しては、嘗ての友カツヤ、ケンジには、まだまだ到達出来るレベルではないが潜在能力は、彼奴らより上だ!然も底無しときておる……フハハハハ実に面白い!
今日も物語を聞いた後、しっかりアスラを鍛えてやろう フハハハハ!
しっかし人に”焦らすな”とか言っといて ”一日一物語な”とか、聞いてねーし!しかも頼んでいないのに主を鍛えてやろうとか勘弁してくれよ〜行き成り初日からワイバーンに挑めとか!死ぬって!一体だったから何とか倒せたけど普通死ぬって!確かに修行の旅をしようと思っていたけど、こんなの聞いてねーし、早く俺を解放してくれよ〜王都に残した人達が心配するって!
『ふむふむ、最終的に敵を倒し里の長になったのか、ふむふむ しかしアノ雌と番いになるとは思わなかったな、中々面白い物語だ!』
『あっそ、それは良かったね』
雌と番いとか言ってるし。
続編もあるけど面倒だから黙っておこう、どうせバレないし、話も途中だしね。
『さて今日の物語も終了した、では主を鍛えてやろう!今日はワイバーンの亜種三体だ!』
『え!マジで?そんなもん死んでしまうって!駄ハムートも手伝ってくれるのか?』
あのな簡単にワイバーンとか言うけど飛んでる敵を倒すの結構ムズいんだぞ!
『誰がダハムートだ!我の名はバハムート!天空の覇者バハムートだ!』
『ハイハイ、それで手伝ってくれるのか?』
お前は漫画好きの駄竜だっつーの!
『我は遠くで観戦するのみ!が、然し行き成りワイバーンとは言え亜種三体は、きつかろう、我の眷族を一体付けてやろう!』
『お!』
駄竜って言ってゴメンな、いいとこあるじゃん! 眷族と言うからにはドラゴンだよなぁ〜どんなドラゴンを助っ人にしてくれるか楽しみだ。
「うぉおおおおおおおおおおお!」
騙されたぁぁぁぁぁぁぁぁあ!
眷族とか言っても”ドラゴンパピー”じゃねーか!翼が有っても飛べないドラゴンはドラゴンじゃねー!
『フハハハハ!そのパピーは腹を空かしておる、早々に倒して早く餌を与えろ!パピーに危害が加わらないよう守りながら闘えフハハハハ!余所見をせずに、しっかり獲物に集中しろ!フハハハハ!』
「ハァハァハァ…結局俺一人で倒す羽目とか勘弁してよぉぉぉぉぉぉぉお!」
お前のお陰で集中でけんわ!
「キュイキュイ?」
「お前は呑気でいいよな」
「キュイキュイ?」
ギュルルル〜
「腹の音鳴ってるし食べていいぞ」
「キュイキュイ!」
ガツガツガツ
「そうだ!この機会だから お前に名前を付けてやろう」
名前を付けてやろうとか言ったけど…う〜ん、いい名前が浮かんでこない、う〜ん う〜ん。
「キュ?」
「お前は全体的に黒くてテカってるから…漆黒…ジェット・ブラック…スマホの名前みたい…良し決めた!お前の名前は”ジェット”な、今日からジェットだ!」
「キュイキュイ!」パタパタ
「そうか嬉しいか?折角翼があるんだから早く飛べれるように成れよ」ナデナデ
「キュイキュイ!!」パタパタ
「ハハ」
ヴォルフの小さい時を思いだすな。
それから数日 飛べないドラゴン”ジェット”を相棒に毎日訓練という名のジェットの”お守り”をしながら戦闘に励んだ!ドラゴンは通常数百年からエンシェントドラゴン(古竜)なら数千年生きるようなので毎日バクバク食べても、目に見える成長に関しては然程変化が見られない。
ヴォルフの成長が早過ぎたのかな?まぁ途中で怪しい実も食べたしな。
「今日は”グリフォン”を沢山狩れたから、好きなだけ食べていいぞ!」
「キュ〜イキュ〜イ!」
グリフォンを解体しても食べる気が起きない…食べるのはジェットに任せた!
ハァー今日も疲れた〜俺も飯にしよう。
ここでの生活に順応する自分が怖い…最初は携帯食が持つか不安だったけど、この山ってマナの森より食べ物が豊富なんだな、出てくる魔獣も強いことは強いんだけど解体して食べてみたら俺の下手な料理でも美味いんですよ…ハァーでも帰りたい、唯一良かった事は魔物を倒した後に魔石をゲット出来た事くらいかな。
◇ ◇ ◇
数日後
『なぁバハムート、そろそろ家に帰ってもいいか?』
『ム!そんなに帰りたいのか?』
『そりゃ帰りたいよ、家族に何も言わずに、出て来てるんだぞ』
『主を帰すと我に物語を語るモノが居なくなるではないか!』
『あ〜それな、このまま語ってもいいだけど、うろ覚えの部分もあるから少し落ち着いた場所で頭を冷やして思い出したいし、一気に話をして話す事が無くなったら また次の異世界人が、この世界に現れるまで何十年 何百年と待つ事になるぞ?それでもいいのか?』
『ムム!主の言う事にも一理あるな…ここは暫く我慢するか…』
ふふふ!上手く丸め込めそうだぜ!ここは煽てながら話を進めよう。
『そうそう、次に会う時までに鮮明に思い出しとくから、それまで我慢してくれ!なんせ天空を統べるバハムートだから、たかが数ヶ月くらい我慢出来るだろう!』
『主も漸く我の凄さを認めたか!帰っても良いぞ!』
『じゃあ帰るな!』
こいつの気が変わらない内に帰ろう。
『アスラ!我の背に乗れ!送ってやろう』
『あ〜いいよ歩いて帰る』
『ム!?早く帰りたいのだろう?』
『マーキングしながら座標を確認したいんだ、じゃないと ここまで瞬時に来れないだろ?俺の住む処へバハムートが迎えに来たら町中パニックになりそうだからな』
『そういう事なら気を付けて帰るのだぞ』
『ダハムート、マナの森の方向は、どっちになるんだ?』
『あちらの向きだ』
『サンキューじゃあまたな!』
『有無』
”タタタタタタタタタタタタタタッ”
よっしゃー!帰るぞー!麓までは既にマーキング済み(テレポ)シュン!
”スタッ”
一気に麓へ到着!ホントは早く帰りたいけど、結構な月日が経ってる筈だから今更慌てても仕方ないしな、開き直って今後の為にマーキングしてる方が良いからな。
あ!ジェットに別れの挨拶するの忘れた!まぁ〜いいか。




