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英雄誕生?

 アルン夫妻が只今感動中真っ只中なので暫く落ち着くのを待つ事にしよう。

 感動の勢いで抱き合わず 手を握り合っているのは、お腹の赤ちゃんに配慮したからだろう、流石だ。


「アスラさん、お恥ずかしい所をお見せして申し訳ありません」

「アスラさん、ありがとうございます。私は奥で控えますね、ごゆっくりどうぞ」ペコ

「アスラさん今日は、どのような用件でしょうか?」


 やっと本題だな。

「え〜っと、家を買おうかと思ってアルンさんに相談に来たんだけど、アルンさんは、その辺の事情詳しい方かな?」

「ほう家を購入されるのですか、私も商売柄少しは齧っていますが、打って付けの人物を知っていますよ」

「打って付けの人物?」

「回りくどい言い方をしましたね、不動産屋ですよ 昔からの悪友で不動産を営んでる友人が居ます。ちょっと癖が有りますが、その者を紹介しましょう」


 癖?なんだろ?でもこの世界に不動産屋って、あるんだ。まぁあっても、おかしくないか。

「それは助かります」

「一応私も伺って宜しいですか、どのような物件をお探しですか?」

「ん〜取り敢えず家族3.4人が暮らせて一階部分に将来店を出せるような中古物件でも、あればいいかな〜って」

「ふむふむ成る程、しかし将来お店をと言うと?アスラさんが商売でも?」

「いや、ルチハが今料理の修業中で将来店を出したいと言った時用かなハハ」

「ほうルチハちゃんが料理をですか〜一度その腕前を披露して欲しいですね」


「それともう一つアルンさんに聞こうと思ってた事があって」

 バックから宝石を全部取り出した。

「おー!これは素晴らしい宝石の数々じゃないですか!」

「コレを換金出来る所を教えてもらおうと思って」

「あー、成る程コレを換金して家を購入する資金へと」

「そうそう」

「それなら私が適正な価格で換金しましょう、他所で足元を見られ騙される事があっては大変ですからね」

「じゃあアルンさんに任せますね」

「分かりました。では、お預かり致します」


 それからアルンさんと久々に会った事もあり色々と情報交換ではないが、話をした。


「そう言えばアスラさん、『ダマスー商会』を懲らしめたそうじゃないですか!」

「ダマスー商会?懲らしめた?」

「あ、アスラさんじゃ無いですね、()()()()()ですね。ダマスー商会は王都一の商会ですが裏でかなり阿漕な商売をしていましてね、同じ商売人としても許し難いものが有りますね」


 アルンさんの話では俺(イナリ先生)が以前妊娠を診てくれと訪れ屋敷で監禁されそうになった豪商の事らしい。


 そのダマスー商会は客に詐欺紛いの商売をしたり、同じ商売人の顧客を裏で手を回し奪ったり、かなり悪どい商売をしていたようだ。

 文句を言うにもゴロツキの護衛を何人も雇っていて誰も文句を言える状態ではなかったようだが、そんなのイナリ先生には関係ないから徹底的にフルボッコしたから、詐欺紛いにあった人達、客を奪われた商売人からしたら もの凄く気持ちいい思いだったみたい。


「でも今は大人しくしてても直ぐに力を付けて、また悪どい商売をするんじゃないですか?」

「それがですね、イナリ先生が暴れ立ち去った後に騒ぎを聞き付けた巡回の兵士が駆けつけたところ、屋敷内の者が殆ど戦意を無くしたり気を失ってる者ばかりでしてね巡回の兵士が不審に思い屋敷の中、倉庫などを調べた所、盗品やら非合法の物、人に至っては犯罪者などが出るわ出るわの大騒ぎになったようです」


「へ〜そんな大層な事に!じゃあイナリ先生が騒動の張本人ってバレたかな?」

「バレてますね〜あれだけの騒動ですからね、でもねアスラさん皆んな暗黙の了解で兵士には誰もイナリ先生だとは、喋っていないのですよ」


「え?」

 暗黙の了解で喋っていない?なんで?


「貴方は、ご存知ないようなので話しますがイナリ先生は下級層中級層の英雄なんですよ、そんな英雄に恩を仇で返すような者などいませんよ」

「え、英雄!」ヒクヒク

「いわば、庶民に取っての救世主ですかね、怪我や病気をしている庶民からは一切謝礼を頂かず、中級層からは報酬を取っていたようですが、我々からしたら良心的な金額以下、そして悪徳商人を懲らしめた!皆から英雄として崇められていますねフフ」

「賢者の次は英雄ですか…」ズドーーン


「まぁ今回は仮面を被っていたので、正体まではバレていませんよ」ニコニコ

「そ、そうですか…」

「でも活躍すればする程、上級層つまり野心があり今よりも力が欲しい、力を保持したい貴族達にイナリ先生を取り込もうとする者も現れるかも、しれませんね」

 アスラさんの摩訶不思議な能力は貴族の切り札には、もってこいですからね。


「その辺の事情はヨハン爺さんに聞いたので大丈夫ですよ」

「おー、それは良かった!」


 貴族も暇なのか?イナリを手に入れても己の力の象徴になんかならないと思うんだけどな?俺も暇なようで暇じゃないしな。


「そうそう王都以外でもアスラさんの噂は耳に入って来ていますよ」

「え、王都以外?」

「アスラさんが半年程王都を離れていた情報は、入っています。その旅先での事ですね、旅先では『隻眼の賢者』として活躍は耳にしていますね」ニコニコ

「隻眼の賢者!」

 なんだそれ?


「商売柄、商人同士の情報は共有する事もあるんですよ、噂では王都と同じように怪我病気に苦しんで居る者を助けたり、以前私が盗賊に襲われた時と同じように盗賊に襲われてる人達を助けたでしょう?しかも一度や二度ではなく多々、それらを助けた人物の特徴が隻眼で緑の髪をした人物、その話を耳にした時 私は心の中でニンマリ笑いながらアスラさんだと思いました」ニコニコ

「確かに心当たりは有るけど、もしかして途中で名乗るのが面倒になって立ち去ったから…」

 もしかして、やらかしたー!

「そうですね恐らくそれで、人々から”隻眼の賢者”と呼ばれるようになったんでしょうね」

「そ、そうですか」ガクリ


 ヴォルフを従魔にしてから、隻眼も緑髪も止めてて良かった!

 最悪の事態は、それで回避したかな?


「後もうひとつ」

「え!まだあるんですかー?」

 まだあるのかよ〜今度は何をやらかした?

「これはお伝えしようか少し迷っているのですが…う〜ん」

「アルンさん、そこまで言っているなら話して下さい」

 もう開き直るしか無い!

「そうですね、いずれ分かる事ですし王都ではイナリ・バージョンも流行るかもしれませんので、お話させてもらいます」


 え、なにそれ?イナリ・バージョン?


「王都には、まだ届いてないのですが吟遊詩人が”隻眼の賢者”を題材にした詩がですね隻眼の賢者が立ち寄った街などから詩われて流行って来ているんですよ。なので王都でイナリ先生の噂を聞き付けた吟遊詩人がイナリバージョンを詩にするのも時間の問題かもしれませんね」


「アルンさん、俺暫く大人しくしてます」

 もう無理!


「私は全然構わないのですよ、アスラさんが変装して正体さえバレなければ、寧ろ聴いてみたいじゃないですか”隻眼の賢者” ”英雄イナリ”の詩をアスラさんも聴いてみたいでしょ?」

「いえ全く…」





 自分の詩なんて恥ずかしくて聴ける訳が無い!俺は別に英雄に憧れてる訳でも、なりたい訳でも無い!普通がいいんです。

 王都で詩が流行る前に王都を脱出しなければ…





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