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往診?

 出産の騒動から何事も無く三日が経った、新生児ヤマトは泣いてはミルクを飲み寝ての繰り返しだが毎日元気が良くて、それを見ていたら こっちまで微笑ましくなってくる。

 出産の日にヴォルフの相手をしてやれなかったので、次の日は朝早くから起きて一緒にランニングと言う散歩をし、その後材木を購入して簡単な寝床を作ってやった。これで雨風は凌れるだろう。


 そして、あの夜シャルにツッコミを入れらてから王宮へは行っていない、いや恥ずかしくて ほとぼりが冷めるまで行く気が起きないのが正直な話。

 お姫様には会いたいけど、俺の気持ちも分かっているだろうと思い、放置している。

 次の日も、何故かやる気が起きないのでヴォルフを連れ、まだ知らない王都の街をブラブラ歩きなが散歩し、その日はヴォルフと王都見物を楽しみながら終了した。


 そして今日も早起きをしヴォルフとの朝の散歩を日課にしようと思いヴォルフを連れ、まだ朝靄がある中 一緒にランニングをし軽く身体を動かした後、宿へ帰りヴォルフに朝食を与えた後、着替え直し一階の食堂へ行き朝食を食べていると、マリーさんが苦笑いをしながら俺に客が来たと言ってきた。

 因みにマリーさんとポアンさんは、暫く 女将さん達が落ち着くまで『やすらぎ亭』で働くそうだ。


「俺に客って誰だろ?」

 まさか爺さんじゃないだろうな…

「それがね〜…取り敢えずこっち来て〜」

「あ、あー」

 なんだろ、マリーさん困ったような顔をして…そして、宿の玄関先へ行けば、あれ?あの人は…

「若いの、朝早くからスマンの〜」

「は、はぁー…」

 そう俺への客はマリーさんの、お婆ちゃん!マリン婆さんでした。


「アスラ君ゴメンね〜マリンお婆ちゃんが、どうしてもって言うから〜」

「で、こんな朝っぱらからマリーさんのお婆ちゃんが俺に何の用事かな?」

「少しなアタシに付き合って欲しいんじゃよ」

「付き合う?」

 相手は婆さんだからデートのお誘いでは無いだろうし、逆にデートなら俺はお断り!

「アスラ君、マリンお婆ちゃんが一緒にね〜今受け持っている妊婦さんの様子を〜、一緒に診て欲しいんだって〜」

「ハァ?何で俺が?」


 何でも、女将さんの出産の時に使った俺の能力が普通で考えたら奇跡に近い事らしい、あの時は、女将さんとヤマトを助ける為無我夢中で能力を使い捲ったからなぁ〜、魔法じゃなく別の能力ってバレたのか…そこで俺の能力に目を付けたマリン婆さんが今受け持っている妊婦さんを診て欲しいとの事。

 因みに出産に立ち会えじゃなく、事前に逆子の妊婦さんが居れば俺の能力で、何とかして欲しとか…


「マリン婆さん、俺余り目立ちたくないんだけど、派手に動きすぎて変な噂に成るの嫌だしな」

「その辺の事情はマリーから聞いているから大丈夫じゃよ」ニマニマ

「ゴメンね〜アスラ君、マリンお婆ちゃんには逆らえないの〜その代わり、いい物を用意したから〜」

 そう言ってマリーさんは、自分のバッグから真新しい白ローブと仮面を取り出した。


「ハァ?これは?」

「前にアスラ君、変装用に仮面とかの話しをしてたでしょ〜それで思い付いて作ったの〜」

 そのマスク風な仮面を受け取って見ると鼻から上が仮面、口元だけ開いてるモノだった。

「何故に狐の仮面なんだ?」

 何となく分かるけど…

「それね〜ルチハちゃんとシャルちゃんを見て思い付いたの〜」

「あ、やっぱり」

 ですよね〜

「それと少し医術師らしく白ローブにしたのじゃよ」

「はぁ〜成る程ね」

 仕方ないので早速装着してみました。ローブは、フード付きなので被れば、側から見て俺と分からないらしい。


「アスラく〜ん、良く似合ってるわ〜」

 また適当な事を誰が身に着けても一緒だっつ〜の!

 仕方無しにマリン婆さんの後に付いて訪問診療と言うか往診と言うか、どっちでもいいや、取り敢えず一軒ずつ妊婦さんの居る所へ行く事になった。

 まぁそれで安全で安心な出産が出来るのなら俺としても悪い気はしないので一人ずつ診ましょう。

 アスラと言う名前を伏せると言う事で、また名前を考えなければいけなくなり、狐で思い浮かぶ名前と言えば「フォックス」「北狐」伏見」「稲荷」くらいしか出て来ません。

 もう「イナリ」で、いいや!と言う事でイナリに決定しました。


「じゃあ、イナリ先生行こうかの」

「あ、あー」

 いきなり先生かよ!


 出産が、近い妊婦さんから診に行く事になり順番に診察を開始する。いきなり狐面の先生が登場したら妊婦さんも驚くだろうと言う事で先にマリン婆さんが説明した後に登場する、なんて面倒くさい事をと思いながら妊婦さんを透視しながら診て行った。

 マリン婆さんの話しでは、自分の受け持っている妊婦さんは三十名程居るとか、結構多いじゃないの今日中に診れないような予感がする。


 そして三人目まで問題なかったんだけど四人目で逆子を発見!妊婦さんに断りを入れて、優しくお腹に手を当てて細心の注意を払い逆子を治して行く。

 マリン婆さんの誘いに乗って正解だったのかもしれない。帰る間際に「イナリ先生ありがとうございます」と、お礼を言われ、それを見ていたマリン婆さんがニマニマ笑っている、しかも近い内にイナリ先生を連れて、しっかり逆子が治っているか様子を診に来るとか、こっちの予定も聞かず勝手に約束してます!


 まぁ〜いいけどさ、取り分け急ぎの用事も無いから…一人ずつ訪問しての診察なので、歩きと言うのもあり結構時間掛かるね、五人目の診察の前に昼飯を食べる事になり、マリン婆さんの馴染みの店へ行き食事を摂る事になった。

 食事を食べながらマリン婆さんと色々話しをしていて分かった事は、昔は一流の冒険者で若い頃ブイブイ言わしてたって!どっかで聞いた事がある話しだ。

 何でも魔法が得意で然も薬術師でもあるってよ、凄いね〜冒険者を引退後は薬術師と言う手に職があるので、まぁ簡単に言えば薬屋を営み、その傍らで産婆もしてるとか、今は薬屋の方は息子夫婦に任せ、のんびり産婆をしながら孫のマリーさんに魔法と産婆の指導をしてるらしい。

 マリーさん、まだ魔法の勉強中かよ。

 食事も終わり五人目の妊婦さんの元へ。


「ゴホ、ゴホ」

「アンタ、あれほど体には気を付けてと言ったじゃないかい。お腹の赤ちゃんに、もし影響したらどうするんだい」

「ゴホ、ゴホ、マリンさんゴメンなさいゴホ、気を付けてたんだけどゴホ、無理しちゃてゴホ、ゴホ」

「仕方ないね〜今薬切らしてるから明日持って来てあげるよ、それまで辛抱おし」

「ゴホ、ゴホ、マリンさん、ありがとうゴホ」


 あらまー妊婦さん風邪かな?少し苦しそうだ、然し薬って、妊婦に薬っていいのか?抗生物質が入っていない漢方薬みたいな物だから、いいのかな?


「マリン婆さん、俺が診ようか?」

「おや、イナリ先生は薬を持ってるのかい?」

「いや、持ってないぞ」

「症状を診るのかい?唯の風邪じゃと思うんじゃがね?」

「まぁ、見てて」

「うむ、イナリ先生に任せるかいの」


「風邪を拗らせたのかな?」

「はい、二、三日前から熱っぽくて、ゴホ、朝方からゴホ、咳までゴホ、ゴホ」

「あー、もう喋らなくていいよ」

 妊婦さんの背中を摩りながら唱える!

『癒しの女神様、この者を癒したまえ〜ヒール』

「はい終了!」

「え?イナリ先生今のは?」

「俺にしか扱えない魔法だから気にしないでいいよ」

「おやま〜咳が止まったようだけど、アンタ大丈夫かい?」

「あ!ホントだ、咳が待ってる!」

「次は気をつけて」

「はい、イナリ先生ありがとうございます。イナリ先生治療費は、お幾らですか?」

「ん〜その治療費で赤ちゃんの為に栄養を取ってくれたらいいよ、じゃあマリン婆さん次行こうか」

「イナリ先生本当に、ありがとうございます」ペコ


 次の妊婦さんへ向かう途中マリン婆さんが何か呟いている。

 ニマニマ「お前さんの魔法は凄いね〜病気を治してしまうのかい?」ニマニマ

「あー、俺にしか使えない特別な魔法だからな、余り突っ込まず流してくれたら助かる」

「分かったよ余り詮索は、しないでおくよ」ニマ




 伝説の賢者様の噂の真相は、本当の事だったんだね、アタシはそれが間近で見れて嬉しいよ、暫くイナリ先生の為にも、誰にも話さず見守らせてもらおうかい。

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