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エルフさんスマホ返してよ!

 俺達はエルフの森(仮)らしき所で拘束され大樹のある方向へと連れられている。あの大樹は、もしかして「世界樹」と言う名前なのかな?と、くだらない事を考えながらエルフ達に付いて歩いている。

 しかしそんな くだらない事はどうでもいい、俺のリュック(マジックバック)とスマホを返してくれ!

 返してくれなければマジでエルフと一戦交えないといけない事になる、そんな事は俺の本心ではないけれど、返してくれなければマジ切れるからな!

 それにしても拘束までされて、誰かと勘違いされてるのか?それとも人族に対して何かあるのかな?多分あれだな、領地拡大の為 森を荒らしたとか女性のエルフを捕まえて奴隷とかだろうな、このエルフ達も喋りかけても何も答えてくれないし、心を読むのも嫌だし。


「おい着いたぞ、誰か呼びに来るまで大人しく入っててもらおう」

 案内されたのは大樹じゃなく岩を削って出来た牢屋です。やっぱりね、だろうと思った。

 ココは大人しくいう事を聞いときますか。

「この牢には結界が張ってある妙な行動だけは、しない事だ」

「あの〜一つ聞いてもいいかな?」

「なんだ?」

「俺の荷物は返してもらえるんだろうか?」

「きさまの持ち物は一旦長老様達に預け調べてもらう、怪しい物が見つかれば没収される、森を彷徨っている きさまが悪いのだ悪く思うなよ」


 あらら好き勝手言っちゃって、大人しく牢屋には入ったけど結界張ってあるとか言ってたな、魔法が通用しないと言う事だよな多分。

「ヴォルフもう少し辛抱してな」

『ボクご主人様(ウォン)がイイって言うまで暴れないよ』

「お前はホント賢いな〜」ナデナデ

エヘヘ(ウォン)


 牢屋の中で待っているのも暇なので牢の見張りをしているエルフに話し掛けても無視されるし、初めてエルフを見て興奮したのもかなり急降下!印象悪いよ君達。

 仕方ないのでヴォルフと会話してたら何か視線が痛い!痛い子、いや哀れな子を見る視線だコレは!

 多分アレだよね 友達とか居ない寂しい奴が動物相手に一方的に話しをしてる可哀想な奴だと思ってるんだろうね、心を読まなくても視線で分かりますとも。

 もうね無視には無視でヴォルフと会話を楽しみましたよ…それからどれ位経ったのだろうか、知らないエルフがやって来た。


「出ろ、長老様がお会いするそうだ。だが妙な動きはするなよ」

「ヴォルフも、この銀狼も連れて行っていいかな?」

「それは承知出来ない」

 ですよね〜

「ヴォルフ、悪いけど俺が戻るまで大人しく待っててくれるか?」

ウン(ウォン)大人しく待ってるから、ご主人様帰ってきてネ』


 長老様というエルフに会う為に連れ(いや連行だな)られて大樹に取り付けられてる階段を上がり大きな窪みがある部屋らしい所へ連れて行かれた。

 こんな状況じゃなければ大樹を見て「スゲ〜」とか「近くで見たらデカイな〜」とか言ってるんだろうね多分ハァー。

 そこでは楕円形の大きな木のテーブルを囲み7名ほどの落ち着きがあると言うか貫禄があると言うかエルフ達が椅子に腰掛け、こちらをジッ見ている、辺りを見れば護衛らしいエルフも居るし下手な行動は取らない方が良さそうだと思った。

 勿論俺は両手を縛られて立ったまま、別にコレでもいいけどさ、俺の荷物を返してよ。


「そなたの名は?」

「アスラ!」

「如何なる目的があって、森に進入した?」

 ホント酷い言い方!進入だって!もう正直に話そうかな…

「え〜と、気付いたらと言うかマナの森の中で見つけたダンジョンから出たら、この地だったんだけど 信じてもらえるかな?」

「何!ダンジョンからだと!?」

 なんか一瞬周りがザワついてコソコソ話しをしてるし、信じてもらえないよな そんな話はハァー。


「一つ、そなたに質問がある」

「どうぞ」

「そなたは、マナの森に入っても平気なのかね?」

「あー、魔素の事ね信じてもらえないかもだけど全然平気だよ、森の中で生活しろって言われたら出来るし」

「人族でありながら森の魔素で魔力酔いを起こさないと…」ザワ ザワ

「あー」

 あー またザワザワしてコソコソ話し出したし、何なの一体このエルフ達は?


「質問を変えよう、次の質問だ。良く考えて答えるように」

「どうぞ」

 楕円形のテーブルの上に運ばれてきた俺のリュックとスマホを置いて、返してくれるのかな?違うよね、そんな訳ないよね。

「ここにある、そなたの荷物を調べさせてもらった。コレは、そなたの物かね?」

「そうだよ」

「何も入っていない背負い袋…」

 え、ちょっと待て!何も入っていないだと?

 もしかしたら神様が俺限定の粋な計らいかな?そうだと嬉しい。


「そして一番肝心なのがこちら」

 そう言ってエルフさんはスマホに指をさす。

「………」

 そりゃそうだよね〜スマホはこの世界のモノじゃないから気になるよね〜

「これは、そなたのモノかね?」

「そうだぜ俺の持ち物さ」

「どこかで手に入れた若くは、拾った物ではないと?それを証明する証拠は、あるかね?」

「おい、いい加減にしろよ。そうやって俺の物を奪うつもりなのか、エルフって野郎は!」

 今の一言で護衛のエルフが武器を構え出した!あーもう暴れちゃおうかな〜


「これは失礼、君の物を奪うつもりも無い。コレが凄く気になってね、コレの名前は一体何て名前なんだい?」

「ああ、名前?唯のスマホだろ」

「スマホ?」

「スマートフォンの略語でスマホだよ」

「護衛!この方の拘束を今すぐ解け!急げ」


 あれ、あれれ?なんだなんだ?拘束解かれて椅子まで用意されて、なんだなんだ?


「大変失礼したアスラ殿」

「え、これは一体何なんだ?」

「失礼ですが、これが最後の質問です、どうか正直にお答え下さい。この()()がスマホだと知っている貴方にしか答えれない質問です」

「ええ?」

 今エルフさん、スマホを機械と言ったよね?

「貴方は何処からやって来られたのですか?」

「………」何となくそんな気がしましたよ。

 ここは正直に答えときますかね。

「答えれませんか?」

「はー、正直に答えましょう。この世界じゃない異世界から、やって来ました!」


「「「「おー異世界から!」」」」

 なんだ?長老の人達えらい盛り上がってるんだけど?

「あの〜話しが全く見えないんだけど?」

「これは失礼したアスラ殿」

「それよりも俺の荷物を返して欲しいんだけどいいかな?」

「勿論ですよ、お返しします。どうぞ」

 リュックとスマホを返してもらいました、良かった。危うく暴れるところだった。


「話は戻るけど分かり易く説明して欲しいんだけど?」

「わたしが話そう」

 そう言って女性のエルフが語りだした。

 初めは森の進入者から話は始まり報告を受け、森に迷い込んだフリをしてエルフを攫いに来た人族だと俺は思われたようだ。

 唯何も入っていなさそうな軽いカバンと見た事の無い魔道具らしいモノを持っていた為、怪し過ぎると言う事で偵察者の判断で連行して調べる筈だったようだが、没収したスマホを見た一人の長老が慌てて全長老を集め緊急に会議を開き直接、質問を投げかけて俺を判断したかったようだ。


「で、俺が異世界人だと簡単に信じた訳?」

「いや簡単に信じた訳ではないよ、アスラ殿がダンジョンを突破し、この森にやって来れた事とスマホの名を言い当てた事、そして異世界と言うキーワードがあり、貴方が本当に異世界人だと判断したのだよ」

「え?あのダンジョンって?」

「通常人族では、まぁ獣人でも多少キツイのだがね、マナの森に長時間滞在するのは ほぼ自殺行為なんだよ、ましてあのダンジョンは魔素で形成された人工のダンジョンなんだ」


「え、ちょっと待て!人工のダンジョン?造られた?」

「そうあのダンジョンは五百年近く前に勇者カツヤ、賢者ケンジ、天才錬金術師リーレオンが我らエルフの為に試練のダンジョンとして造った人工ダンジョンなんだよ」

「試練のダンジョン?」

「若いエルフ達数名のパーティーで挑む成人の儀用として造られた、それが試練のダンジョンなんだよ」

「だから突破したら、この地へ戻る魔方陣が?」

「そう言う事だ、我らエルフ族は魔素の濃さは関係無い、逆に有難いくらいだ」

「俺がダンジョン突破した事の関係は?」

「当時ケンジが言っていた、このダンジョンを突破出来る人族が現れたら、そいつは異世界人だと。そしてもう一つ言っていた事が、その異世界人が この地を訪れた時悪しき者かは自分達で判断するようにと」

「俺はどっちだ?」

「こう見えても五百年以上生きていない、その者を見る目はある、貴方はあの頃のケンジやカツヤの様な良い目をしておられる。幼かった私達には懐かしい思い出だ」

 いや面と向かって美形に言われると結構ハズいんだけど…って、この人五百歳超えてるのー!全然見えねー恐るべしエルフ。


「アスラ殿、異世界よりの客人として折り入って頼みたい事があるのだけども聞いてもらえないだろうか?」

「頼みたい事?」

 あ〜このパターンは絶対厄介事の匂いがする


「わたしの、いやここにいる年老いた老い先短いエルフの頼みなんだ」

 年老いたって、全員見た目二十代から三十代じゃん!喋り方は爺婆言葉じゃないけど!

 みんなウンウン頷いてこっち見てるし…これは避けては通れない道なんだね〜

「俺で出来る事なら…」

「おー、聞いて頂けるか!頼みと言うのは、これなんだが」

 そ〜言いながら怪しいバックから何かをゴソゴソしながら取り出したモノを俺の前に差し出し老齢のエルフはこう言った。




「コレを直してもらえないだろうか?」


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