宿屋の親父
貴族から子供達を解放した俺は子供達を連れて宿屋に帰る事にした。
「親父〜帰ったぞ」
「おぉ!アスラ、無事子供ら解放出来たんだな、準備も出来てるぞ」
「みんなー聞いてくれ、今からこの宿の中庭に行って体の汚れを落としてもらうが、傷だらけの身体じゃ痛いだろうから順番に治していくぞ!」
「ルチハ、シャル」
「「はい」」
「治った子を中庭に案内な、お湯とタオルも用意してあるから」
「「はい」」
お兄ちゃんと おじさんの隠し事って、これだったんだ!
お兄ちゃん みんなを助けてくれてありがとう
「はーい、次の子〜」
順番に子供達にヒーリングとサイコセラピーを使い治療していく。
幸いにも この子ら身体の一部が欠損してないだけまだマシか……酷い子でも折れた腕や足が変な方へ曲がり固まってるくらいか。それなら一度のヒーリングで治せそうだ。
それでも酷いなこれは……ガリガリで目が死んでる子ばかりいる……
とりあえず、あと2人で治療も終わるな。
「お兄さん!オレは最後でいいから弟を先に治して!」
「あー任せろ んん?」
「弟治るの?少し前から反応無いし食事も摂らないんだ、グス」
「ぇ、頭の骨折れてる……酷いなこれ……」
「弟は死ぬのか?ねぇお兄さん!なんとか助けてええ うぅ」
「心配なのは分かるがすこ静かにしてろ」
奇跡的に生きているのか、獣人の生命力なのか……頭の骨折れて……脳にダメージか……
俺のヒーリングがどこまで効くのか……
ここまできて迷ってもしょうがないか。
「よし全力でヒーリングだ!」
お兄さんが弟の頭を包むように触れた瞬間!お兄さんの手が少し光だした!?こんな魔法見た事も無い。見てるこっちまで癒されてるような……いや実際オレの身体の傷も治っていってる!こ、これは奇跡なのか?お兄さんお願いします、弟に弟にも奇跡を!
「むむ!」
これは手強いな、徐々にだが傷も治って目の焦点も合ってきてる、もう少しだな。頑張れ弟君!負けるな弟君!こっちへ帰って来い弟君!
頑張れ俺!ぬおーヒーリング!サイコセラピーィィ!
「ぁ ぁ ぅぉ ああ」
「ジミー!オレだ お兄ちゃんだわかるか?」
「ぉにおに ぉにちん、ここはどこ?」
「もう大丈夫だろう」
あーよかった。
「うううぅ お兄さんありがとうグス グス」
「マイクにいちゃん何泣いてるの?ここはどこなの?」
キョロキョロ
「ジミーお前覚えてないのか」
「おい、ジミーの兄貴。弟は恐らく脳にダメージを負ってたから一時的に記憶が無いのかもしれない、兄貴のお前が狼狽えるなよ」
「うん、お兄さん!」
「マイクにいちゃん、さっき不思議な夢見たんだ」
「不思議な夢?」
「ボクね、ず〜〜と ず〜〜〜と暗い中に居たんだ、大声で呼んでも叫んでも誰も来てくれなくて1人で泣いてたら、いきなり目の前が光だして頑張れ弟君!って何度も何度も声がしたら目が覚めたんだ。あれは神様だったのかな?」
「え!」じ〜〜〜
「バカやろ、俺は神様じゃねえよ。兄貴の方も傷がないなら、弟を中庭まで連れてけ」
「う、うん ジミー行こうか…」
あのお兄さんは何者なんだろう……神…様?
中庭
「みんな身体はキレイになったか?」
「アシュラにぃみんなキレイなったよ」
「ルチハ、そこの木箱の中に服が入ってるから、みんなに合いそうな服渡してやってくれ」
「うん、分かった!うわぁ〜いっぱい服がはいってるー、みんな好きなのに着替えて〜」
ワーキャキャ ワー キャッキャ アハハ
ヒーリングとサイコセラピー同時掛けの効果でてるな、みんな子供らしくはしゃいじゃって フフ
「アスラお兄ちゃん、この服はいつの間に用意したの?」
「あー親父に相談して、まだ着れる古着集めてもらったんだ」
「おじさんも、お兄ちゃんと一緒で優しいね」
「んむ」
面と向かって言われると照れるなハハ
「おーいアスラー!飯の用意出来たぞー運ぶの手伝ってくれ!」
「ルチハ、シャル、それと皆んなも手伝ってくれ、今から中庭でバーベキューだ!」
《《《ワーワーキャキャ》》》
「いっぱい肉あるから好きなだけ焼いて食べてイイぞ〜」
《《《おいし〜〜いキャキャワイワイ》》》
暫く子供達の賑やかに楽しみながら食事をしてる姿を見ていると――
「アスラのマッサージも凄いけど回復魔法も凄いんだな、俺が食事の用意している間に全員治してしまうとは、実は医術師なのか?」
「いや医術師じゃないよ、少し回復魔法が使えるだけで、後は子供達の「生きたい」と言う生命力かもな」
「そんなもんかね?しかし最初にこの話、持ちかけられた時はビックリしたぞ、まさかあの噂の貴族から子供達を奴隷から解放するなんてな。どんな魔法使ったんだ?」
「あまり子供達に酷い事してると「呪い殺されるぞ」って忠告してやったんだよフフ」
「ハハ!いいなそれ、まぁ子供ら解放出来た事だし詳しい事は聞かない方がいいか」
「そうしてもらえると助かるフフ」
「しかし この人数どうするんだ?アスラ1人で養えるのか?養える当てでも有るのか?」
「ああ 当てはある」
「そうか……じゃあ前から話してたように明日この都市から出て行くんだな?」
「ああ、親父には色々世話になったな」
「水臭い事言うなって 誰もが分かってて手が出せなかった事を、普通に解決してしまうんだからな!少しくらい協力もするさ」
「所詮他人事なんだ、親父も その顔で凄く優しいし感謝してる」
「その顔は、余計だろ!俺は昔から優しい宿屋の店主なんだよワハハ」
その後も宿屋の親父も加わり楽しいバーベキューは夜までつづいた。
親父に仕事はイイのか?って聞いたら宿の店員に任してるから大丈夫だって!
親父も俺と一緒で かなりお人好しなんだな。
♢ ♢ ♢
翌朝
「もう行くのか?」
「あー色々世話になったな」
「それは構わないが身分証も無いこの子ら連れて都市から出れるのか?」
「あー問題ない」
「そうか……少し寂しくなるな」
「また、この都市来たら泊まらせてもらうさ。さぁみんな親父に挨拶して」
《《《おじさんありがとうございます》》》
「親父これ世話になったお礼だ」
「!」
アスラは俺の手を合わす様に握り
「じゃあな」シュン!
「え!き、消えた!」
人が目の前で消えるなんて……しかも全員……
握られた手の中には、金貨が5枚も……
奴は誰もが我が身かわいさで見て見ぬ振りをしてた事を……最初は獣人の姉妹を連れて来た時は、なんてバカなお人好しだと思っていたが……昔お伽話で聞いた……
アスラは……もしかして伝説の賢者様だったりしてな ……まさかな ハハハ