サトリ・サトラレ
さてと、クリスになんて説明しようか?
しかしまさかよりによってクリスにサトリとサトラレが芽生えてるとは思わなかった。まいったな〜
てっきり普通にテレパシーだと勘違いしちゃったよ。
サトリといえば人の思考を読み取る能力、コレは通常のテレパシーとなんら変わりない。多分
しかし未熟な能力者ではコントロール出来ず、自分の意思とは関係無しで相手の思考が頭の中に流れ込んでくる。
しかも近くに居る複数人の思考が同時に頭の中へ勝手に飛び込んで来るから、たまったものじゃないと聞く。漫画の世界ではそうだったはず…?
救いなのは、コントロール出来れば自分の意思で人の思考を読み取る事が可能性もあることかな。
逆に言えば問題なのはサトラレだよな……サトラレは能力者の是非に関係無く常に解放状態。
対象者も指定出来ず発動範囲内に居る全ての者に自分の思考が流れていく。
しかもそれが自分の思考だけならまだしも、サトリで得た相手の思考をそのまま反映するから、発動範囲内に居る者は、コレまたたまったもんじゃないときてる。
余程の理解者が傍に居ないと使用者の自我が崩壊する恐れもある。
ん〜困ったな。
「イナリ先生どうかなさいました?」
「ああゴメン、ちょっと考え事をしてた」
さてと……どうしようか…誤魔化すか?イヤここは正直に打ち明けるべきだな。中途半端に誤魔化しても何の解決もしないし。
「クリス」
「はい」
「正直に話すな。さっき俺がクリスのスキルはテレパシーと言ったよな」
「はい。そう仰られていましたね」
「アレな、俺の勘違いだわ」スマン!
「えっ!?」
「あーっ!勘違いって言っても、一応テレパシーの一種っつーか何つーか、ちょっと厄介なスキルなんだわコレが」
「厄介なスキル?」
「ん〜…順を追って説明するな。現状のクリスのスキルは――」
俺は正直に打ち明けることにした。【サトリ】と【サトラレ】についてもどんな能力なのか分かりやすくクリスに説明した。
説明が終わったあとのクリスはガックリ肩を落とし暗い顔になった。そりゃそうだろう、俺の早とちりで一時は自分の意思でスキルを上手く制御出来れば、使いたくもないスキルを発動しなくて済んでいたのだから。ホント申し訳ない
「そ、そうですか……」
「ゴメンな、なんか期待さすようなコト言って」
「いえイナリ先生のせいではないので……」
ちょっと可哀想すぎるな、スッゲー落ち込んでるよ。さてとどうしたもんか……制御するにもサトリは兎も角サトラレはな……制御出来ないんじゃどーしようもないよな?アレが効くかは分からないけど一応試してみるか?
まぁ試す価値はあるな。ウン挑戦してみよう。
「クリス」
「はい」
「一応確認な。サトリは自分の努力次第で制御可能だと思うんだ」
「はい」
「但しサトラレは、そう言う訳にはいかないんだ。その辺は理解出来るよな?」
「はい理解しております。ですが私には両方とも必要のないスキルです」
「うん分かった。上手くいくか分からないけど何とかしてみせる。但し二度と、このスキルは使えないと心掛けてくれ」
「なっ治るのですかっ!?」
「ん〜治すと言うより、消すと言った方かな?まぁ上手くいったらの話だけどな」
「消す……?」
「そうスキル自体を消し去る。もう一度言うけど消しても後悔は無いな?」
「はい!私には不用なスキルです。もしスキルが消え去っても私には後悔はありません!」
さてとクリスからの確認もとれた。この世界に来て早々に使ったあアレが上手く効くかは分からないけど、サトリもサトラレも超能力の一種と信じて使ってみるか。
「アンチ・サイ!」
唯一超能力に対して有効なスキル、アンチ・サイ。
如何なる超能力における現象をも一時的に無効化することの出来るこのスキルは能力者の実力がもろに影響する。
未熟な能力者がこの能力を使えば、相手の能力を消し去る前に自らの能力も消し飛んでしまう恐れがある極めてとても危険なスキルだ。
俺も以前面白がって何度か使い、一週間ほど超能力が使用出来ない状況に陥った事がある。アレはかなりまいったし、かなり焦ったよ。
時間と共に能力が復帰するのならまだ良いが、ヘタをすれば超能力自体が一生使えなくなる可能性もあるとても危険な能力だ。
漫画やアニメで観た、アンチのみの能力者に未だ俺は出会した事がない。仮にそんな奴がこの世界に居たら俺にとって最強の天敵になるだろうな。まぁ敢えて口には出さないけど。フラグが立つからね
さてと現状のクリスのステータスはと――
サトリ(阻害停止中)サトラレ(阻害停止中)
と、表記が出た。一応はアンチ・サイが効いているのは分かるけど、これでは発動を一時的に無効化したに過ぎない。時間が経過すればアンチ・サイの効力も失い、活動が復帰するな……完全にこのスキルを跡形も無く消し去らなきゃダメだ。
「イナリ先生いまのは?」
「あ〜今のはアンチ・サイって言うスキルで、超能力を無効化するものなんだ」
「私のスキルは消えたのですか?」
「んーまだ消えていない。一応は現状無効化しているからサトリもサトラレも発動はしていないぞ」
「本当ですか!」
「あー本当だ。だからクリスが今考えている事も流れて来ないぞ」
一時的に消えただけだのに、メチャ喜んでいる。
その喜びをずっと笑顔のままにしてやらないとな、やると決めたからには中途半端に終わらせれないや。
次はもっと強く念じてみよう。
「クリス、もう一度アンチ・サイを掛けてみる」
「はい、よろしくお願いします」
「っと、その前に、ちょっと準備をさせてくれ」
「準備ですか?」
俺はクリスに羽ペンみたいな物を持っているなら貸して欲しいと頼んだ。クリスに羽ペンを借りた俺はテーブルの上に羽ペンを置き、念動を使いテーブルの上に置いた羽ペンを宙に浮かした。
「イナリ先生コレはっ!?」
「コレも超能力の一種さ。まぁ気にしないでくれ」
「はい…」
気にしないように言ったけど、すごく気になるようだ。不思議そうに羽ペンをじっと見つめている。俺は先ほどよりも、もっと強くアンチ・サイを心で念じた(アンチ・サイ!!)
更にもう一度(アンチ・サイ!!)
何度も何度も只管にアンチ・サイを強く念じ、何十回目か分からないアンチ・サイを心で念じたところで宙に浮かした羽ペンがポトリとテーブルに落ちた。
つまり、俺自身の超能力もアンチ・サイによって無効化されたんだろう。
この時点でクリスのステータスを見れないのは少し残念だけど、数日はサトリもサトラレも発動を停止してるだろうと思う。あわよくば消えていればラッキーなんだけどな。
「クリス」
「はい」
「一応今日の処置は終わりだ。だけどクリスのスキルを消し去ったかどうかは現段階じゃ分からないんだ」
クリスに再度先ほどの処置をどのように施したか説明した。それでも例え数日だろうとサトリ、サトラレが発動しない事に心から喜んでいる。
⦅ピロロ〜ン⦆
「えっ!?」
何?このふざけた音は!?一体何の音?
「イナリ先生驚かないで下さい。今の音は呼び鈴の音ですよ。フフ」
「呼び鈴?」
なるほど、扉に設置されていた魔道具の呼び出し音かよ。しっかしセンスが無い音だね
⦅お嬢様イナリ様、昼食の準備が整いました。イナリ様の食事も此方へ御運び致しますか?如何致しましょう⦆
「そうですね。バトラー……今日はダイニングでいただきます」
⦅ハ!畏まりましたっ!⦆
おっ!バトラーさんが気を利かせてココへ食事を用意するって言ってたけど、クリスが今日は皆んなと食事をするようだ。その返事でバトラーさんも心なしか声が喜んでいるように聞こえたな。
まぁ今まで一人淋しく食事をしてただろうし一時的にとはいえスキルが発動していない今が皆んなと会えるチャンスだからね。
とりあえず、食事をしながら現状報告だね。