王都の夜は長かった?
「ーーじゃまたな!」シュン!
ガンッ!「いで!」ドスン
「き、君!どっから現れたんだ?!」
「え、あ、歩いてて躓いて転んだんです」
やべ!門番さんのとこへ落ちたのか!
「うん?そうか急に現れたのかと勘違いした、今から出国か?」
「はい、そうです」
あー何とか誤魔化せて外出れたよ。
しかし瞬間移動した瞬間見えない壁に当たったような?……「あ!結界かー!」成る程 外部からも内部からも、転移出来ないように障壁張ってあるのか、やるなヨハン爺さん。
俺も障壁くらい擦り抜けれるように力つけないと、万が一の為にも。
「しかしカッコつけて挨拶したのに、しまらねー!」
無事王都から抜け出したアスラは人気の無い場所まで移動しそこで再び瞬間移動を使い『仮称・始まりの森』へと移動した。
「到着!」
1日の距離短縮だな、さてここから 何処へ行こうかな?
「まぁ適当でイイか!」
歩くのも面倒だな、飛びながら進もう。
地上から人が直視出来ない距離まで飛び移動を開始するアスラ
「おーイイ眺め〜」
しかし王都離れたら何も無いなぁ景色はいいんだけど。
しばらく飛行するアスラが異変に気付く!
「あれ?あの黒いの何だろ?」
げっ!あれワイバーンじゃないの?
急いで逃げないと!
「あの木へ影へ」(テレポ)シュン!
「あーヤバかった!」
流石異世界、ワイバーン飛んでるとかファンタジー!
「あんなの飛んでたら飛行危なすぎ」
ここから歩いて進もう。
「うぁースッゲー高い崖だな〜」
お!崖の中腹辺りに窪みがあるな ニヤ
「休憩するには、中々イイスペース」
日も暮れてきたし、今日はここで野宿だな
「マスターの携帯食どんなのかな?」
そう言えばマスター『少ないけど、これも持ってけ』って、何だこの壺?
「おーこれ、塩じゃないか?」
ペロ、塩だ。この壺は……
「胡椒だ……」
異世界って塩も胡椒も貴重じゃないのか?
でも、感謝します。食料なくなっても狩りをして、これで簡単な調理できる。
「ありがとうマスター」
確かに、この世界では塩、胡椒など調味料系などは貴重だが、王都辺りだと交易も盛んな為、割と比較的簡単に塩、胡椒は手に入り易いのだ。
◇ ◇ ◇
その頃王都では…
「兄貴ーいるかー?」
「あ!ボブおじちゃん〜」ニコニコ
「ボブ君いらっしゃい。あら皆さんもお久しぶりです」ニコニコ
「「「お久しぶりです」」」ペコリ
「義姉さん今日はウチのメンバー(疾風の剣)が久々に兄貴の料理を食べたいって言うもんだから」
「あら!そうなの〜主人もきっと喜ぶわ」ニコニコ
「誰だ〜?表で騒がしいのは!」ニヤリ
「兄貴!今日はウチの……」
「「「「エエエエッ!?」」」」
「兄貴あしーっ!?」
「「マスターあしあし……」」
「あん?トムお前 足……治ったのか……?」
「ばかやろう!治ってなけりゃ杖なしで歩けるかってんだ!サッサと中入れ!」ニヤリ
「「クスクス」」
「サッ皆さん中入って聞きたい事が沢山あるでしょ?」
その夜やすらぎ亭でマスターの足が完治した経緯とアスラが王都を発った事が「疾風の剣」メンバー達に伝えられた。
◇ ◇ ◇
王宮へ既にアスラらしき人物が王都を発ったという報らせが入っていた。
「バカもーん」ガツン!
「痛!し、師匠!本当に申し訳ありません!!」
「お前は、もっと人を見る目も鍛えんかー!」ポカ!
「痛!」
「王妃殿下に呼ばれ来てみれば本当に情けない」
ポカ!ポカ!
「いた、いた!師匠反省してますから、頭殴らないでー!」
「陛下!王太子!全く二人も揃って!」
((ビクッ!!))
「ヨハン殿、陛下に失礼ですぞ」
「ニコル殿!それとギブソン殿もじゃ!」
((ヒィッ!!))
「爺 いやヨハン勘弁してくれ、もう余を含め皆反省しておるから」
ウンウン
「ワシも遅かれ早かれ小憎が王宮へ呼ばれる気はしまたが……まさか昨日の今日とは……ギブソン殿!」
「ヨハン殿すまぬ!私も姫様の事を思い気が焦ってしまった。いや言い訳だ、申し訳ない!」
「じいや、もうその辺で許してあげて」
「ムム!姫様がそうおっしゃるなら仕方ないですぞ、この爺!許しますぞ!」デレ
「相変わらず爺は、ユーリアに甘いね」
余も、そう思っておったぞ!
「王太子!何か、おっしゃいましたかな?」
「いえ!何も!」
「ヨハン殿、もうその辺で。それで先程の私の話を聞き入れて、もらえないでしょうか?」
「ハ!始めはお断りしようと思ったのじゃが姫様の笑顔を見たら断れませぬじゃ。王宮への相談役お受けしますじゃ」
「ヨハン殿ありがとうございます」
「師匠王宮へ戻ってこられるですか!」
「お前は少し黙っておれ」ポカ!
「ぃ!」
王妃からヨハンへ今回の件、余りにも不甲斐ないと言う事で相談役として王宮復帰を願いでたものである。
ここに居る者全員快くヨハン復帰を承諾した。
「ヨハン、余から一つ聞いてもよいか?」
「陛下何なりと」
「あの者の素性など存じておるか?」
「余り公けにしないと言う事なら話しますじゃ」
「うむ分かった。ここに居る者、心得たな?」
コクコク
「小憎本人の話によれば、外海から来たと言っておる」
「外海?」
「ふむ、恐らくじゃが……あの黒目黒髪、そして顔立ち、あくまでワシの予想じゃが日の和ノ国の者ではかいかと……」
「日の和ノ国とは、あの国交を持たない閉鎖的な国のことか?」
「そうですじゃ。小憎本人は、どういった手段でこの大陸に来たのかは言えないと言っておった。しかし魔海を航海するなど考えられんのじゃ」
「仮にその国の者として、航海以外に例えば転送魔方陣を使う手は考えられぬか?」
「無理ですじゃ。転送魔方陣を使ったとしても魔海の魔障壁に阻害されますじゃ」
ヴァルトリア王都南部地方は海に面した土地であり漁業などが盛んな地方である。
しかし漁業は近海のみと限定される。
ある一定の漁場を越えると海洋の魔物などが生息する地帯になる。
更に通常より濃度の濃い魔素が霧状に漂う。魔海と言われる由縁である。
「ふむ、あの者は他に、この大陸に来た理由などは言っておらぬか?」
「あの小憎本人は争い事をしに来た訳ではないと、世界を旅し 色々なモノを見たいと言っておったのじゃ」
「ふむ……今はその言葉を信じるしかないか」
「陛下、ワシからも一つよいですかな?」
「うむ 申してみよ」
「あの小憎に関して妙な接触は控える事ですじゃ。仮に王宮へ取り込もうとすれば、あの小憎 二度とこの国には、来なくなる」
「じいや!それはダメです!」
「姫様わかっておりますじゃ。無理に干渉、接触などしなければ、もう一度小憎も この国に来る筈ですじゃ」
「お分かりですかな?陛下、宰相殿」
「うむ、分かっておる」
「彼奴は、何の見返りも無く この老いぼれ爺、姫様を救ってくれた、心優しい青年なのじゃ」
「それは私も重々承知しておりますわ」
「仮に接触したいのであればワシか姫様の名前を出す事ですじゃ。勿論謝罪と感謝を込めてですじゃ」
「うむ次にアノ者、いや恩人殿に会う機会があれば誠心誠意謝罪と感謝を致す。皆も分かっておるな。
「「「「ハッ!」」」」
しかし あの小憎不思議な者じゃて、城に呼ばれ王宮の影を一瞬で取り除いていきよった……
この後ヨハンはユーリアにせがまれてアスラとの出会いからの事を話し出す。他の者達も興味深く聞き入っていた。
王宮の夜はこの後も長かった。