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目指せランクアップ!

 朝早くにアルフ達は俺に軽い挨拶をし各所の砦まで向かって行った。


 アルフには俺の説明が悪かったのか全ての装備が壊れ全く無いと勘違いされて、俺の自慢の装備を貸すと言われたが丁重にお断りした。だってアイツの装備って、どうせ騎士装備だろうし、そうじゃなくても派手なイメージがありそうだからね。

 まぁ消し炭の装備は駄ハムートの手甲と安全靴くらいだし、ドワーフ親子には地竜のお姉さんに頂いたアダマンタイトで新たな装備の依頼だった訳で、他にも代えの装備はいくらでも有るからね。


 そしてアルフ達が城から居なくなったのを確認した俺は王様に断りを得て町の宿屋に移動する事へ。


 王様はランバー国を発つまでの間は城で寝泊まりして良いと言われたが、これも丁重にお断りした。だって暫く冒険者ギルドに通うのに城を出たり入ったりするのはね〜どの宿屋に泊まるのかは連絡するので至急な用事がある時は宿屋に言付け宜しくと伝えた。


 宿泊する宿も確保できたし、早速冒険者ギルドへ行こうと思う。


 マナミには昨夜の内に冒険者ギルドの依頼をするのを話したんだけど返ってきた返事は一緒に着いて行くとか。ただ、流石に幼女を連れて冒険者ギルドに行くのはなぁ〜と、悩んでいたらマナミからの返答はバッグの中で静かに待っているとの返答だった。

 俺としては必要以外に魔剣の姿に戻すのはなぁ〜と思っていたら、あっさり気にしないでと言う返事だった。

 俺が一人で気にしすぎなのかな?まぁマナミの意見を尊重することにした。変に俺が帰って来るまで宿屋の一室で待たすよりバッグの中とはいえ一緒に行動している方が安心だからね。


 てな訳でランバー国の冒険者ギルドへ到着。


 冒険者ギルドはランバー国王都支部の冒険者ギルドらしく中は広々としており一階部分は食事も出来るようで酒なども飲めるのかバーカウンターまである。職員などが出入りする二階部分とは別の中二階部分にはロフト風の冒険者専用の休憩場所まで設置されている。


 朝も早い段階で冒険者ギルドへ入れば初めて見る顔だろうか?ジロジロと見られたけどテンプレ的なお約束は無かった。

 そりゃそうだよね、依頼は朝一掲示板に一斉に貼り出されるので、俺みたいな奴にいちいち構ってる暇はないよな。まぁ〜みんな必死だよね、少しでも条件の良い依頼を奪い合いだもんね。

 そんな様子を見ていたら、一応は上下関係はあるようだ。一概に早い者勝ちではないみたい。


 まぁ俺は所詮Dランクだし、それ以上の依頼は受けれないしパーティーも組んでいる訳でもないから余った依頼限定だ。とりあえず人が捌けるのを待ちながら張り出された依頼でも吟味しますかね。


 漸く高ランクの人達が居なくなったので、のんびりどんな依頼があるのを眺めた。


 採取系はパスでっと、手っ取り早くランクを上げるのには、やっぱ討伐系の依頼だよね?かと言って張り出された依頼を見れば【ホーンラビット】とか【ワイルドウルフ】とかの依頼ばかり。

 ウサギと野良の狼かよ!って文句を言ってもランクがランクなだけに仕方ないよね、ランクを放ったらかしにした俺が悪いんだから。


 ランクに見合った残り物の討伐依頼を確認し、その足で空いている受け付けカウンターへ向かい【ホーンラビット】と【ワイルドウルフ】の討伐依頼を受けた。

 その際、この二匹がどの辺りに出没するのを受け付けのおばちゃんに聞いた。受け付けのおばちゃんは優しく丁寧に説明してくれた。

 因みに混んでいるカウンターは綺麗な受付嬢や可愛い受付嬢だ。


「気をつけて行っといで無茶だけはしないようにね」

「おばちゃんありがとう。じゃあ行って来る」


 アスラはギルドの受付嬢おばちゃんに聞いた通り西門から出て数キロ離れた荒野へ訪れた。


 現在のアスラのレベル(実力)ならばホーンラビット(一角兎)ワイルドウルフ(野良犬)も雑魚同然なので難無く規定の数をこなし討伐しているようだ。


 ズシャ!「ギャウン……」

「おっし!これで依頼分達成だな」


 討伐したワイルドウルフの片耳を切り取り討伐の証しである部位の採取に勤しんでいる。もちろんホーンラビットは額から突き出る角である。


「しかしワイルドウルフって大層な名前(野生狼)なんだけど、唯の野犬なんだよねコイツらって」

 まぁ野犬って言っても群れて一般の人を襲う危険性もあるしね、ホーンラビットなんかも不意打ちで額の角に刺さったら致死傷間違いないし正しく討伐対象だ。


 鍛錬を兼ねて討伐依頼をこなしたアスラであったが既にこの手の獣ではアスラにとって雑魚同然なので、あっという間に討伐が完了してしまった。


「んー!意外と早く討伐しちゃったよ。まだ昼には早すぎるし……一旦ギルドへ戻って報告してから別の依頼でも受け直すかな」


 一旦ギルドへ戻り討伐達成の報告後に新たな依頼を受けるようだ。


 再度冒険者ギルドに到着したアスラはギルド内で()()()()が目についたが気にしないようにスルーし、受付カウンターへ依頼達成の報告をした。


「おやまーアンタは今朝の。もう依頼を達成して来たのかい?」

「ハハ…偶々運良く群の溜まり場に遭遇したからね。これ一応討伐依頼の部位だ、確認してもらえるかな?」


 アスラは町で購入した大きめの背負い袋から討伐対象のホーンラビットの角とワイルドウルフの片耳を討伐証明として、その部位を取り出した。

 アスラがあらかじめ背負い袋を用意したかは、マジックバッグの所持を隠す為だ。最低限のトラブルを避ける為だろう。


 受付嬢(おばちゃん)が部位の確認をしている時、やはり先ほど目に付いたものが気になるのかチラチラ見ていると受付嬢(おばちゃん)が小声でアスラに語りかける。


「やめときな、あの子には可哀想だけど見なかった事におし」

「ん?」

 おばちゃんは何を言ってるんだ?可哀想ってなんだ?



 アスラが先ほどから気になったのは別の受付カウンターに何かを話している子供のようである。歳の頃はシャルと同じような歳頃だと思ったようで、アスラは冒険者ギルドでも子供向けのお使いクエでも有るのか?と気になり眺めていた模様、その際、これならマナミを連れて冒険者ギルドに入っても、大丈夫じゃん!と安易に考えていたようだ。


「あの子には気の毒だけど、アンタも関わらないようにおし」

「全く話が見えないんだけど?いや俺はギルドでも、あんな小さい子供向けのお使い依頼でもあるのかなぁ〜って思っていただけだぞ?」


 アスラが受付嬢(おばちゃん)に一体何なのか事情を聞こうとした時――


「おいガキ!いい加減帰りやがれ。ここはガキの遊び場じゃねーぞ!」

「そーだぞ!プルシーさん(受付嬢)も困ってるだろ!ガキはサッサと帰れ!」


 と、必死で受付嬢(プルシー)に何かを懇願している子供に荒くれ冒険者の二人が子供相手に大人げなく怒鳴り始めた。

 “ヒィ”っと身を縮めた子供だったが後ろを振り返り、今度は荒くれ冒険者に必死に縋り付き何かを懇願しだした。


 俺はキャッシーさん(おばちゃんの名前)に何なのか事情を聞いたところ、何でもあの子の兄が昨日から家に帰って来ないとか。そんな事でいちいち冒険者ギルドに来るのかと疑問に思い、もう少しキャッシーさんに詳しく聞けば、昨日冒険者ギルドの依頼でCランク1人Dランク3人Eランク1人の5人パーティー編成でゴブリン討伐の依頼を受け、昨日から帰還してないらしい。

 更に詳しく聞けば、そのゴブリン討伐自体も数匹のゴブリン退治らしく遅くとも日帰りで帰還できる内容のようだ。


 ゴブリン退治が上手く行き、近くの町か村でのんびりしてから帰って来るんじゃないの?と思ったが、この子の話では、その日の内に帰って来ると約束していたらしく今まで、その兄が約束を破った事がないらしい。


「偶にあるんだよあの子のように身内を心配してね。あの子には悪いけど、ギルドも慈善事業で経営している訳じゃないからね、1日やそこらで帰って来ないくらいでそう簡単にギルドも動かないよ。仮に何かあったとしても、それは自己責任だからね。それこそギルドが()()()()()()()()事でも無い限りはね。アンタも見なかった事にしてくれるかい?」

 私も長いこと冒険者達を見ているからね、アンタの眼を見れば分かるよ。


「ふ〜む」

 確かにキャッシーさんの言い分にも納得出来る。ギルド内に居る周りの冒険者達も我関せずという態度を取り傍観している。

 生きるか死ぬかは自己責任だからね。それこそこの世界に有るのか分からないけど警察みたいな機関に相談する事だしな。

 まぁ警察みたいな機関なんて無いよな……


「ガキー!いい加減に離しやがれ!」

「冒険者のおじさん!お願いします。お兄ちゃんを捜して下さい!」

「あん?誰がおじさんだっ!」


 俗に言うアレである。小さい子供が悪気も無く、おじさんおばさんと言った一言に急に怒り出すアレである。この冒険者も、おじさんと言われた一言に、よほど腹が立ったのか荒くれ冒険者が縋り付く子供相手に手を上げようとした!


 流石にそれは見過ごせないと思ったアスラは荒くれ冒険者を止めようと一歩踏み込もうとした。


 と、その瞬間ロフト風の中二階で傍観していた冒険者が飛び降り、荒くれ冒険者が振り上げた手を掴みあげ、更に関節を極めた。


(イッ)!?」

「ちょっとー貴方達、やめなさい!」


 中二階から飛び降りて来た冒険者は女性のようだ。アスラは、その女性冒険者を見て“おや?この人、どこかで会ったような?”と、首を傾げている。


「リ、リーン!腕を離してくれ。このガキが聞き分けねーからよ。なっ、なっ」

「そうだぜリーン。ここに居る皆んなも困っているだろ?」

「それで子供相手に手を上げるの?しかもこの子は女の子なのよ」

「イヤだってよー、口で言っても分からねーガキにゃコレしかねーだろ?」

「もういいわ貴方達は引っ込んでなさい。私がこの子に説明するから。貴方達も、そんなんだから彼女の一人もできないのよ」


 最後の一言がショックだったのか、渋々引き退る荒くれ冒険者達。この冒険者二人よりも、このリーンと名乗る女性冒険者の方がランクも実力も上のようだ。


「おねえちゃんがお兄ちゃんを捜してくれるの?」


 そう問いかけられたリーンは、子供の目線に合わすよう両膝をつき優しく子供にも分かりやすく論するよう語りかける。

 それでも「お願いします。お願いします」と、引き下がらない子供に困ってしまうリーン。


「そんなに、兄貴が心配なら英雄様にお願いしろよガキ!」

「そうだそうだ!英雄イナリ様は弱い奴の味方だからな、英雄様に頼みやがれガキッ!」


 リーンの説得にも一向に応じない子供に対しイライラしたのか先ほど渋々引き退った荒くれ供が、そう口を開いた。


「ちょっとー!貴方達は黙ってて。だいたい彼はこの国に居ないでしょ!今いる奴等なんか、みーんな彼の名を騙る偽物ばかりじゃないの!貴方達、知ってて態と言っているの?」


 呆れてモノも言えないと、荒くれ供に不快にジト目をするリーン。

 一方傍らで話を聞いてたアスラは英雄イナリの名が出た瞬間、リーンと名乗る女性に“ピン”ときたようだ。



 あっ!この人、偽イナリ事件の時に遭遇した冒険者の人だ!なるほど〜だからどっかで会った事があると思ったんだ〜納得。


「おねえちゃんは、お兄ちゃんを捜してくれないの?」

「んー困ったわねー。いーいよく聞いてね、捜索依頼でも無い限りあなたのお兄さんは捜せないの?それにはお金がいっぱい要るの?分かるでしょ?」

「うん。お金ならあるよ」


 そう言ってポケットから徐ろにお金を取り出す少女。その手のひらには僅かばかりの小銅貨がある。

 それを見たリーンは、眉間にしわを寄せ更に困り果てる。「ブファ!」リーンの後ろでは指を指し笑い転げる荒くれ供。

 キッ!っと荒くれ供を睨むリーンであったが、困り果てた事には変わりは無い。さて、どう説明しようかと悩んでいると――


「なぁ、その子の依頼、俺が受けようか?」


 そう呟く男にギルド内の視線が一点に集中した。もちろんアスラその人にである。

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