王妃様からの言付け
翌日
昨日までとは打って変わり、罪人ではなく客人としての扱いに変わった。
食事も牢の中で食べた堅いパンと冷めた薄味のスープではなく以前滞在していた時と同じまともな食事に変わった。
まぁ〜今はそんなこと、どうでもイイ!問題は、このあと王様たちに会いスカムの面会ができるかどうかだ!
少し寛いだあとに侍女さんと騎士さんに案内され王様たちが待つ部屋へ……部屋に入ると城の重鎮たちが俺が到着するのを待っていた。
そして王様の顔を見れば顔色が真っ青じゃあないの!?思わず俺のヒーリングが効かず病気が再発したのかと思ったけど……顔色が悪いのは王様だけでは無くアルフたちもだ。
話を聞けば昨夜、俺と別れたあとにスカムについて話し合い親子で呑んでたとか……ただの二日酔いです。
一瞬焦るじゃあねーか!俺のヒーリング能力が落ちたと思ったぜ。しょーがねー親子だと思いつつヒーリングをかけ、二日酔いを解除!王族が二日酔いとかダメでしょーが!
「すまぬなイナリ殿」
「イナリすまん!」
「コレがイナリの回復魔法なのか!」
「凄い!二日酔いにも効くのか!?」
「ホントスゲーな!」
「ハイハイ、そんな事はどうでもイイからスカムには会えるのか?」
「うむ、余が許可をしよう」
とりあえず王様の許可も頂けたので早速スカムに会いに行くことに……って、やっぱ付いて来るんだね。
王様を筆頭にアルフたちも付いて来るみたい。
もちろん一緒に同行するものと思っていたので、スカムに会うための事前の打ち合わせと準備は怠っていない。
今回顔バレをしてしまったので正体を今さら隠すこともないので正直に本当の名前を伝えた。が、今さらイナリからアスラと言う名に呼び直すのも面倒らしく、これまで通りイナリと呼ぶらしい。
城内では、それで良いけど城の外でイナリって呼ぶのは是非ともやめてくれよ。
スカムに会うにあたり、俺は仮面なしで素顔で対面する。もちろん俺の声に聴き覚えがあってはマズイのでボイスチェンジャー付きのマフラーを装着!俺の職業は、お約束どおり霊能者だ!
因みにマナミは、部屋で大人しくお留守番担当だ。そしてマナミの世話をしてくれる若くて可愛いメイドさんは何故か4人付く事に?
おそらくだけど4人の可愛いメイドさんはアルフたちの彼女だろう。チクショー!リア充 爆ぜろ
まず無いと思うけどメイドさんたちが居る前で幼女から剣になるのは避けたいので、万が一の保険で魔力入りジュースをいくつかマナミ用に用意した。お腹が空いたら飲んでくれ
全ての準備が整ったので、王様に連れられてスカムが幽閉されている処へ。
宮殿のアル一室かと思ったんだけど宮殿から出て別棟に建てられている円柱の塔でした。建物の前には強そうな騎士の方が警護している。一応スカムも王族だからだろう。
マジマジと塔を見て、マンションでいう15階くらいの高さの塔だなと心に思った。
建物に入り、直ぐに目に付いたのは螺旋階段だ!それをグルグル回るように上がって行けば最上階へ到着。
上階に上がりスカムが幽閉されている部屋の前で待機している騎士の方に扉を開けてもらった。
施錠されている扉が開けば、なんと!鉄格子が設置されていて、中は少し豪華な部屋だが部屋と言う名の牢屋でした。
扉が開いたことに気づいたスカムがこちらへ向かってきた。
「スカムよ元気にしておったか?」
「父上お久しぶりです。私が無実だと知り解放にいらしてくださったのですね」
「スカムよ……まだその様な戯言を申しておるのか」
「私は無実です!嵌められたのです」
本当に反省してないや。懲りないヤツだな〜
「おいスカム、調べは既についている。己が仕出かした罪を悔い改めて反省をしなければ本当に死ぬまで一生幽閉されるのだぞ?」
「…………」
スカムのヤロー急に静かになって下を向いている。罪を認めたのかな?
「……フハ……フハッハハハハハハーッ!」
なんだコイツ?急に笑いだして。おや?……気のせいか。
「なにがおかしいスカム!?」
「フハハハハ!どうせ父上も兄上たちも、私の事をいい気味だと思っているのでしょう?母上を殺した私を憎くて憎くて仕方ないのでしょう?私が生まれて来なければ良かったのだと思っているのでしょう?私を恨んでいるのでしょう?そうですよ全て私が仕組んだ事です!さぁー憎くて仕方ない私を兄上の手で殺して下さいよー!さぁーさぁーさぁー!」
「なっ!!」
「スカムおまえっ!!」
「貴様ぁーッ!!」
「おまえの事は誰も憎んでも恨んでもいない!!」
やいのやいの!!やいのやいの!!
あーあ スカムのヤロー開きなおって好き勝手言いだしたよ……それにムキになって応戦するアルフたち……王様は……静かに目を閉じて黙って聞いている。
「やめんかあああーっ!バカものおおおーっ!!」
キ────────────────────ン
うぉ!急に大声で王様怒鳴りだしたよ。ビックリした!耳がキーンとするぅ〜。
「すっすまん親父!」
「フン!」
「今日はスカムを解放に来たのではない。其方に客人を連れて参ったのじゃ」
「客人……?」
「シュラ殿こちらへ」
「ハイ……」
王様たちには事前に霊能者シュラと紹介してくれと打ち合わせ済み。
「その者は何者ですか父上?」
「こちらの方は霊能者シュラ殿じゃ」
「霊能者だと……?」
「スカム王子、お初にお目にかかります。わたし流浪の霊能者シュラと申します」
言葉使いには気をつけてっと!
「その流浪の霊能者が私に何用だ?」
「ハイ今も述べたように、わたしには霊が見えますし、霊と会話も出来ます。先日、貴方様のお母様がわたしの前に現れまして、貴方様に伝言を言付かった次第です」
「はっ、母上からの伝言だとっ!?」
「ハイ。お母様の伝言では『私は貴方を産んだ事を後悔していません。だから……誰も恨まず真っ直ぐ生きてください。そして諦めず負けないで』と、言付かりました」
最初にコレを聞いた時は理解できるような、理解できないような?
「ハ…ハ…ハァ?貴様ぁあ!!私をバカにしているのか!誰がそんな事を信じられるものかーっ!!おおかたお人好しな父上と普段から何も考えいないバカな兄上たちに取り入り、散々都合の良い御託を並べた挙句、騙し大金を巻き上げる魂胆なのだろう!私は兄上たちの様なバカではない!騙されるものかっ!このペテン師!帰れっ!今すぐ立ち去れっ!父上の顔も兄上の顔も見たくはないっ!帰れーっ!」
うーわ、やっぱりね。こうなると予感はしてたんだよ、つーか王様たち酷い言われようだな、俺もペテン師とか言われちゃったし。
スカムのヤローがギャーギャー騒ぎだして話にならなくなったから取り敢えず建物から離れた。
王様もアルフたちも昨夜と同じようにガックリ肩を落とし、俺に申し訳ないと謝ってきた。
はぁああ〜〜結果的に最悪の展開だけど、王様とアルフたちの悲しげな顔は見たくないなぁ〜なんとかできないだろうか……。
その日の夜 捻くれたスカム、そして王とアルフたち親子を救う手を試行錯誤するアスラであった。