大切な伝言
無事にマナミも発見できたし、俺が本物のイナリだと信じてくれたので一件落着!
積もる話をしようということで別室に場所を移した。場所を変えるのは良いとして、酒なんかどうでもイイから早く飯を飯を食わせてくれ〜〜!
いきなり乾杯の音頭が始まり酒を飲まされたー!(ウッ)空きっ腹に酒なんか飲んじゃったから急に酔いが!。
クラクラする〜ヤベーこうなったらバレないようコッソリヒーリングを掛け回避。ようやく食事が届いたので何とか生き延びれたぜ。
没収されたバッグも無事に帰ってきたし、良かった。この中には色々と収納されてるからね一先ず安心。ホッ
「イナリ!」
「あん?なんだ?」モグモグ
「獣人の国での話を聞かせてくれ」
「俺も気になる聞かせてくれ」
「そうだなやはり直接本人に聞くのが間違いない」
「聞かせてくれ英雄伝説を!」
「英雄伝説なんか知らん!それよか どうして俺が死んだ事になっているのか聞かせてくれ」
「ん?評判の悪い勇者から死の呪いを受けて死んだのじゃないのか?」
「俺もそう解釈したが、どうなんだ?」
「イヤ違うだろ?獣人たちを守る為、空から舞い落ちる巨岩を破壊して壮絶な死を迎えたんだよな?」
「そうだぜ!逃げ去り際に奴らの放った炎を纏う巨岩を破壊し灰になって死んだんだよな?」
「なんだそれ?」モグモグ
合ってるような合ってないような?ってか、完全に死んだ事になってるじゃん。
もう一度、確かめる為に吟遊詩人の詩がどのように語られたか聞いてみたところ、勇者が隕石を召喚し逃亡した辺りで終わっている……つまりだ、その後の話は客観的に見てる想像と言うか、こうなったであろうと言う話で完結してるんじゃないのか?
アルフの話では俺の死が信じられなかったようで、その詩を作った者が誰なのか真実なのか、吟遊詩人組合に確認したところ獣国の闘技場で勇者討伐に参加していたエルフの目撃で作られた詩と聞き納得せざるを得ないと……。
確かにあの時に冒険者風のエルフ数名が勇者討伐に参加していたような……隕石落下の直前に闘技場から一斉に皆んなが避難して最後の結末の時にはエルフは居なかったはず。
なるほどね、それでか。だから地竜のお姉さんの事とかマナミの事とかの話がカットされていたんだ。
戦いが終わり改めて闘技場に入って来たとしても、俺が身につけている物も焼け落ち、赤く染めた髪の毛も黒髪に生え変わり、最終的に俺が隻眼の賢者だと気づかれなかったんだろうな。
或いは一部の情報を獣王様が……。
「それより早く獣国であった話を詳しく聞かせてくれ」
「勇者と闘ってどうだった?強かったのか?」
「イナリ!焦らさず早く話してくれ!勇者って噂通りの奴らだったのか?」
「そうだぜ早く英雄伝説を俺たちに聞かせてくれ」
「ハァ〜〜〜」
仕方ない。腹も満腹になったし当たり障りのない程度に話をしてやるか。めんどくせー!
そう思っていたら、いきなり部屋のドアがバーンと開き!?
「イナリどのおおおおおおーっ!!」
1人の男が涙を流しながら こちらに駆け寄り抱きついて来た!
「ラ、ランズさん」
「生きて居られたのですね!よくぞご無事で!私はイナリ殿が生きていると信じていましたよ!英雄イナリが死ぬはずがないと!」
「ハハ……」
王様とクレイグさんが気を利かせ呼んだようだ。クレイグさんの話では王様と同じように俺の死を知り、かなり落ち込んでたみたい。
生きてるって信じてた割には、かなり落ち込んでいたんだね。
「ワッハッハ!イナリ殿。ランズも来たようじゃし改めて獣国であった話を是非聞かせてくれぬか」
「ハァ〜〜話すのはイイけど、そんなに面白くないぜ?」
話をする前にマナミだけ何も飲み食いしていなくて可哀相だと思い、俺お手製の魔力入り炭酸飲料を作って与えた。(嬉しそうに飲んでる飲んでる)
案の定!アルフたちに突っ込まれたけどね。
そんな事を無視して獣人の国で起きた事を話した―――――――――――――――――――。
話をし終えたのはイイんだけど、コイツらって話の途中で必要以上に割り込んできたりとかして話しづらいっつーの!やれ竜が出てきたのかとか、あの場面で魔剣がどーのこーのとか……人の話を静かに聞けって。
「ふむふむ。そのような事が獣国では起こっておったんじゃな。改めて申すがイナリ殿、死にかけたとは言え、よくぞ無事に生還してきたのじゃ」
「そうだな、一歩間違えてたら本当に死んでたからね。周りの人の協力のおかげだよ」
そこからは何故か?質問タイムに!?そんなの受け付けてないのに!だから話をしたくなかったんだよな〜。
―――――――――――――――――――――
「じゃあランズさんの質問で最後な」
「イナリ殿、今後隻眼の賢者はどうされるのですか?」
「あ〜それね、吟遊詩人の詩であったように死んだ事にしておくよ。俺的にもその方が都合イイし」
「左様ですか……少し残念ですね。イナリ殿(隻眼の賢者)の活躍を少しでも多く聞きたかったのですが」
「ハハ……」
別に注目や活躍したくてやってるんじゃないんだけどね。やっぱ派手な行動は控えよう。
マナミを見ればいつの間にかスヤスヤと寝ちゃってるよ、ホント相変わらずマイペースだこと。
マナミが居なくなったと聞いた時には一瞬冷やっとしたけど、今思えば物分かりも良いし勝手な行動をする子じゃないんだよね。
そんな事を思いながらマナミの寝顔を見ていて、思い出したことがある。
おっと!大事な話をするの忘れかけた!
皆さん色々と勇者についてワイワイガヤガヤ話しているとこ悪いんだけど、こっちの話の方が重大と違うかな?
「ちょっとイイかな?勇者の話で盛り上がってるとこ悪いけど、王様とアルフたちに大事な話があるんだ」
「ふむ、何かなイナリ殿?」
「なんだイナリ、大事な話って?」
「ん?大事な話?」
「勇者の話題以外に大事な話があるのか?」
「それってアレか?素顔がバレたから黙っててほしいとかか?」
「いや、それはどうでもイイ!大事な話と言うか、伝言だ」
今さらバレたものは、しょーがない。
「伝言とな?」
「そうそう伝言。説明が面倒だか らぶっちゃけて言うけど、王様は早く引退して次の代に王位を継がせろって言ってたぞ、それとアルフたちには早く結婚して王様を楽にしなさいって言ってたぜ」
「なっ!?」
「「「「はぁああ?」」」」
「イッ、イナリ殿!今のは誰からの伝言なのかの?」
「え〜とロバートさんって人とオードリーさんって人だ。多分王様の親父と王妃様じゃあないのか?」
「「「「はぁああ?」」」」
「おいおいイナリ!冗談が過ぎるぞ?そのロバートさんって俺たちのじいさん、つまり親父の親父じゃないだろうな?」
「そうだぜ、王様の親父さんからの伝言だぜ」
「なに言ってんだイナリ。俺たちのじいさんは、俺たちが生まれる前に死んだんだぞ!それにお袋だって……」
「だからその死んだじいさんと、お袋さんの伝言だって言ってるだろ」
ハァ〜最終的に説明しないとダメなパターンかよ。
「アルフ!少し黙っておれ。今の話は例の能力なのかな?」
「そうそう。俺はそんな気は無かったんだけど、向こうから話しかけられてな」
「「「「例の能力?」」」」
なんだその例の能力とは?イナリは死人とも話ができるのか?
「イナリ殿、他には余の親父殿は何か言っておらなかったのかの?」
「え〜と、ワシが早くにこの世を去り幼いお前に心配と苦労をかけたと、だから成長した孫に次の代を譲り第二の人生を楽しめと、言ってだぜ」
「ふむ……イナリ殿の話、信じよう」
「親父ー!信じようって、何を言ってるんだ!」
「黙らぬかアルフ!イナリ殿、差し支えなければイナリ殿の能力をバカ息子たちに話してくれぬか?」
「しょーがないなぁ、あまり俺の能力をベラベラ話したくないんだけど。仕方ない!俺には霊能力があるんだ」
多分だけど、この世界にも霊能力者が居るだろうから、この返答が一番無難だよな?
「マジか!イナリは死んだ人間と会話ができるのか?」
「いや普段はできないぞ。一時的に肉体から魂が離れた状態になった時だけだ!」
今のアルフの返答だと霊能力者は、やっぱ居るんだ。
「なるほど!あの牢で死んだと思った時って」
「そーゆーコト」
「イナリスゲーな」
「本当にイナリは伝説級にスゲー」
「つーコトで俺の話を信じてくれたか?お前らのお袋さんから聞いた話じゃあ、既に密かに付き合ってる相手は居るんだろ?」
「本当なのか?お前たち」
「いや居るには居るが……」
「………」
王様がアルフたちを問い詰めて聞いたところ、ポツリポツリと話し出した。
アルフたちが好きになった相手は公爵家とかの高貴な令嬢とかじゃなく男爵家のお嬢さん。つまりこの城で働いている侍女さんたちみたいだ。
流石に第一王子が男爵家のしかも城で働くメイドと結ばれることなど……しかも第二も第三、第四までもそんな有様だから王に報告も出来ず、仮に報告しても色々な方面から反対もされるだとうと……まぁ俺にはぶっちゃけ、関係のない話なんだけどね。
アルフたちの話を聞いた、王様曰く本当に真剣な気持ちがあるのなら反対はしないと言っているし、反対をする者が現れるのなら王という権力を使い阻止するとか……それを使ってもイイのかな?まぁイイか。
「ちなみに王様」
「何かなイナリ殿」
「亡くなられた王妃様がアルフたちが好きになった娘は、とても良い娘って言ってたぜ。だからなにも心配ないと」
「なんと!オードリーがその様な事を!」
今の一言で王様にメラメラ火がついたよ。王様の話じゃ王妃様は、人を見る目が確かだと。
こりゃ近いうちにアルフたち結婚できそうだね、しかし揃いもそろってメイドさんを好きになるとは……あー裏山(羨ましい)!