行方不明の妹
アルフ先導のもと、とりあえずマナミが保護されていた部屋へ俺たちは向かう事に。
王様も一緒について行くと言い出したので、体調が万全じゃない状態で引っ張り回すのもアレなんでヒーリングをかけておこう。いくら顔色が良くなったといっても病気自体は治ってないからね。移動中に体調不良で倒れられても俺も困るけど皆んなも困るし。
聞いた話では王様は心臓が悪いとか、ちょうど医術師のクレイグさんがその場に居合わせたているので確認してみると本当に心臓が悪いらしい。
普段の生活では問題ないようだけど心臓に負担がかかるような事態に直面した時などに発作が出るとか……医師に関する者からしたら超反則行為だけど俺のヒーリングで念入りに心臓を中心に全ての悪いトコを完治させてしまおう。
「なんと!コレが噂に聞くイナリ殿の癒しの能力なのか!?」
身体のあちこちが心地よく温かい!しかも先程までの心臓への負担が軽減していく、イヤ!負担が一切感じられぬ!身体全体も軽い!すっ、素晴らしいではないか!コレがイナリ殿の究極の癒し能力。
他にも余に見せたアノ肉体から魂だけの姿になる能力、以前この国を去る時に見せた転移……イヤ、余計な事は考えるのはよそう。イナリ殿の癒しの力を待ち望む苦しむ人々の為にも……
久しぶりにイナリ殿の不思議な能力を目の当たりにするが……なんとも素晴らしい!
私も医術師の端くれ、陛下の様子を見れば一目に分かる。完全に完治している!前にも増して若々しくも伺えるほどだ。
やはり私の目の前に居られる御仁こそイナリ殿本人に間違いない。
さてと王様の治療も無事終わったし行方不明のマナミ探索だね。
マナミの居たという部屋への移行中、チラチラバカ兄弟たちが俺を見ている……まだ俺が本物のイナリだと疑っているのか?聞いてみよう。
「お前らまだ俺が本人なのか疑っているのか?」
「兄貴たちは、どうか知らないが俺はイナリ本人だと信じているぜ」
「あ!おまえ卑怯だぞ!俺だってイナリ本人だと思ってる」
「俺だってそうだ!」
「もちろん俺も今はイナリ本人だと信じているし、生きていた事に対しても嬉しい。しかしだ、何故おまえの妹に食事を与えないかも疑問に思っている……」
「あ〜その事か。それはマナミが見つかり次第、詳しく話すな。それまでのお楽しみにしていてくれ」
「なんだ?その意味深な言い方は?」
「ハハ心配しなくても、ちゃんと話すさ」
一応はアルフの所持していた魔剣だしな。
そんな会話をしながら移動しているとマナミが保護をされていた部屋へ到着。アルフが部屋の前で待機していた兵士にマナミが帰って来ているか確認を取っているがまだ帰って来ていないようだ。
マナミ〜一体どこへ行ったんだ〜。
部屋の前で悩んでいても仕方ないので何か部屋の中に手掛かりがないか確認してみる事に。書き置きでも有れば良いのだが……。
部屋へ入り、一応どこかに隠れていないか透視を発動。って、しっかり居るじゃあないの!
「クソー!やはり何処にも居ない」
一体どこへ
「兄貴!シーツの下に剣が置いてあるぞ!?」
「その剣は!!」
「コレってアルフ兄貴がイナリに託した魔剣だよな?エエッ!?何故ベッドに?」
「間違ない!俺がイナリにやった剣だ。イナリ!コレは一体どういう事だ?」
一斉に俺を見るバカ兄弟たち。仕方ない話してやるかー!っと、その前に申し訳ないけど部屋には関係者だけにして兵士と騎士の方には部屋から退出してもらおう。クレイグさんは……残ってもらってもいいかな。
「お前ら、俺の妹が行方不明になって迷惑かけてるだろうけど安心しろ、問題解決だ」
「はぁ?なに言ってるんだイナリ!何が問題解決だ?お前は妹が居なくなって心配じゃないのか?」
「居なくなったと聞いた時は心配だったけど、今は全然心配じゃない。だってこの部屋にずっと居てたしな」
「「「「はぁ?ずっと居てた〜?」」」」
「イナリ殿。余には全く分からぬ、どういう事か説明してくれぬか?その魔剣と何か繋がりがあるのかの?」
イナリ殿の余裕の笑みが凄く気になる。
王様ってイイ感してるぜ。俺は魔剣を受け取り、心の中で問いかける(マナミ食事の時間だ)恐らくマナミは俺が居ない間、魔力補給が出来ず人の姿を維持出来なかったんだろうと、さぁー腹一杯魔力を食え。
アスラが心の中で感じていた通り、マナミは魔力補給が出来ず人の姿を維持出来なかったようだ。
「おおっ!コレはっ!!!?」
イナリ殿が魔剣マナイーターを手にした途端!魔剣が!魔剣が!幼い女の子の姿に変化していくではないか!!
「「「「エ───────ッ!」」」」
「イナリ殿には、何時もの事ながら驚かされますねー。いやはやなんとも楽しい」
イナリ殿のお許しが頂けるなら後でランズにも教えてやらねば。
「イナリー!コレは一体どういう事だっ!!」
「さっき、お楽しみって言っただろ?コレがそうさ。この子は、元アルフが所持していた魔剣マナイーターだ。俺が所持する事により、人の姿に顕現できるようになったみたいだぜ」
「「「「顕現!?」」」」
「イッ、イナリ殿!もっと詳しく分かり易く説明してくれぬか?」
「あーイイぜ。その代わり他言無用でお願いできるかな?」
「もちろんじゃ!お前たちも分かっておろうな?」
一斉に全員頷く
「マナミもイイか?魔剣について話すけど?」
"コクコク"
俺はマナミについて、と言うか魔剣についてを駄ハムートから聞きかじった話を皆んなにした。一部言ってはダメかな〜って言う話は省いたけど。
まぁザックリ契約の事とか形態変化とかだね。
「フムフムなるほどの〜魔剣には秘めた力が隠れていたのじゃな」
「そうみたいだぜ。魔剣についての文献みたいな物が残っていたら良かったのにね。もしかしたら何処かの国には密かに魔剣についての文献みたいな物が有るかもね」
「イナリ!ちょっと待て!この子が食事をしないのは何故なんだ?」
「しないじゃなく、できないんだ。マナミの食事は魔力なんだ、だから通常の食事ができないって言う事だよ。今のマナミは人の姿をしているが剣で有って人じゃないんだ」
と、言っても俺は極力人として接しようと思っているけど。俺が魔剣について話し終わる頃には皆さん理解をしていたと思う。多分
「なるほど!理解したぜイナリ。おまえが人の道を外れた行為をしているのじゃないことは分かった」
「イナリ!ちょっといいか?その子の食事は魔力だと分かったが、仮にだぞ、仮に魔剣を手に入れ契約に成功した場合、他の魔剣はどうなんだ?この子と同じように常に魔力を補給しないとダメなのか?」
「ん〜確か〜魔力が主だけど魔剣の特性で魔力+強い呪いと言うか怨念みたいなものとか、ごく稀に生気やら寿命とかも有るって聞いたぞ。だから単純に契約できたからってラッキーとは一概には言えないのと違うか?強力な力を手に入れるにはメリット、デメリットは有ると思った方がイイ!」
「なるほどだからアルフ兄貴は魔剣を使用中ぶっ倒れていたんだな」
「確か……何度か倒れてたような気がする。てっきり張り切り過ぎて疲れて倒れていたものと思ったが……」
「だからだろ?扱いきれなくてイナリに魔剣を託したのは?」ニヤニヤ
「バッ、バカヤロー!扱いきれなくてじゃない!勝負の約束だ!それに俺より強いイナリなら剣の力を発揮できると思ったんだ!」
「ホントか〜?デリックの言う通り扱いきれなくて厄介払いしたのじゃないのか?マナミもそう思うだろ?」ジト〜
"コクコク"
「ち、違うぞ本当だからな信じてくれ」アセアセ
「ワッハッハ!愉快じゃ。お前たちとイナリ殿のやりとりを見ておると楽しいの〜」
「本当ですね陛下」
「なぁメシ抜きの罰ゲームは、もうイイだろ?何か食べ物をくれよ〜流石に2日もメシ抜きは辛いって!」
ホント腹へり過ぎて倒れそう。そうじゃなくても普段滅多に使わない幽体離脱やらマナミの魔力補給やらでヘトヘトなんだわ。
「なっ、なんじゃとーッ!!お前たちイナリ殿に何をしておるかーッ!!」
「「「「ヒィィ!!」」」」
アララどえらい剣幕でアルフたち王様に怒られてるよ。部屋の外で待機していた騎士さんも何事かと飛び込んで来てるし。
クレイグさんなんて笑いを堪えるの必死だし……
王様の説教も終わり、深夜遅くになってしまったけど、とりあえず食事の用意をしてくれるとか、場所もマナミが保護をされた部屋より更に広い部屋に移り、酒を交わしながら積もる話をしようと決まった。
俺は別に積もる話はないんだけど伝えておかないとダメな話があるから、まぁイイか。