噂話と勘違い
一夜明け事態は少しずつ急変しだした……
囚人用に与えられた朝食を食べ終え、やることもなく、これからどうしようかと考えている矢先に兵士が、やって来てマナミを連れて行った!?
兵士にマナミを何処へ連れて行くのか尋ねてみれば王子の命令で連れて行くとか……?
でもどうしてマナミだけを連れて行くのか分からないが王子たち(アルフたち)ならマナミに対して手荒なまねは、しないだろう。
それにマナミに俺のことを調べるために聴取しようとしても何も話さないだろうし会話は……恐らく成立しないと思う。多分
そして事態の急変はと言うと、その日の昼飯も晩飯も出なくなった……何故に?
他の囚人たちも飯を与えられないのなら何らかの罰だと思うんだけど、俺だけ飯抜きってどんな罰ゲームだよ。ったく!
そして次の日も飯抜きの罰が与えられる中、別の牢に入れられている者たちが次々と刑を受けるために牢から連れ出されて行く。
夜中に、こっそり別の囚人から得た情報で、つい最近の話なんだが、この国で【英雄イナリ】の名を騙る行為は刑罰を与える新たな法が制定されたとか(つまりイナリの名を利用し治療行為などで不当な金品の請求を阻止?)まぁ確かにアノ一件、偽イナリが現れて大変な騒ぎが起きてたからな……それでかな?多分そうだろうな、営利目的でイナリの名を利用されては迷惑だからね。
しかし今 捕まってるコイツらもバカじゃあねーの?そんな情報を得ているのに治療目的とは言えイナリの名を使ってボロ儲けしようとか、そりゃ目を付けられて捕まるって!それってある意味詐欺だしな。
しかし腹減ったよ。
まぁ1日くらいなら飯抜きでも我慢できるけど、流石に2日3日となれば話も変わるっつーの!
俺だけ飯抜きに納得いかなかったので兵士に声を掛け、どう言う事か説明してくれと尋ねれば、なんと!!王子たちの命令だと返事が返ってきたよ。
命令と言われても納得いかない俺は、もっと詳しく説明してくれと兵士に尋ねれば、兵士から『自分の胸に手を当てて聞いてみろ!』と、えらい剣幕で怒鳴られたよ。なんだそれ?
夜中に空腹で眠れない時に別の牢の囚人に小声で、こんなことを言われた。
『そりゃーだってよーニーちゃん、妹に食事を与えず一人で食べてたから目を付けられたんだろう』と……たしかに一人でマナミの分も食べてたけど……まさかマナミが魔剣で魔力が食事です。なんて言えないし信じてもらえないしなぁ〜しっかしドンドン悪い方へ流れて行くなぁ〜。ったく
しょうがない。飢え死に(袈裟だけど!)する前に何とかするかな。さて、騒ぎにならないように行動するにはと――――
◇ ◇ ◇
「兄貴!あの子の様子は、どうなんだ?」
「んーそれがな保護してから一口も食事に手を付けてない。食事をせずに眠りについた」
「やはりそうか。俺も気になって あの子の様子を見に行ったが食事を食べることをしないんだ。それで侍女に お菓子を届けさしたんだがそれも一切手を付けないと報告があったぞ」
「あのニセモノに脅されて食事をしないとかか?」
「イヤ兄貴!それは無いと思うぜ!保護してから、あの子の様子を伺ってたが、俺たちに保護されて喜ぶ様子も無いし、ニセモノに対しても怯える様子も無かったぜ」
「それは本当か?」
「本当だぜ」
「そうそう。俺も気になって侍女に頼んであの子のカラダに外傷か痣が無いか確認してもらったんだが、擦り傷すら一切無かったと報告を得ているぞ。つまりそういった虐待行為すら一切無い」
「しかし……一体どういうことだ?」
あの女の子に対して虐待している素ぶりすら無い……ただ食事を与えないだけ?しかも俺たちに保護されても自分から食事を食べようとしない……んー何が何だかサッパリ分からん。
「しかしあのニセモノ、遠目で見たが本当にイナリに雰囲気そっくりだな」
「そうだな俺もニセモノに気づかれないよう牢屋越しに兵士とニセモノが話す様子を聞いてたが、話し方や声まで似てやがる」
「クソー!あのニセモノが本物なら……」
「もうよせ!それは有り得ん話だ!それよりも お前たち、他にはあの子からどんな情報を得た?」
「そうだな〜何を聞いても頷くか首を振るだけだけど、血の繋がりは無いが兄妹らしい。それにニセモノの名を聞いたがイナリで間違いないようだぜ?」
「「「ふ〜む」」」
まさかとは思うが偶然にも名が一緒で俺たちが知っていたイナリ違いなのか?しかし何故王城へ訪れたのだ?
「それで兄貴、これからどうする?」
「そうだな……あの子の食事の件もあることだし、夜ふけだがヤツに、どういった理由で王城へ訪れたか聞いてみよう。お前たちは、どうする?」
「「「そーゆーことなら俺たちも付いて行くぜ!!」」」
◇ ◇ ◇
さ〜てと、誰のトコへ行こうかなっと!マナミの事も気になるけど居場所が分からないしな。
アルフのトコ……って、アイツの部屋なんか行ったことがないから知らんし!王様の部屋なら分かる。どのみち王様の様子も知りたいから王様の部屋へ行くか。夜分遅くだから王様寝てるかな?
まぁ〜イイや行ってみよう、しかしアストラル.コントロールって何度やっても苦手だわ〜見たくないモノまで見えるし聞きたくない声まで聞こえるからね、あまり多用したくないんだな。気を抜けば憑いてくるし……
確か、この部屋が王様の部屋だよね?よし入ろう!夜分遅くにお邪魔しまぁ〜す。
さすがに時間が遅いか、王様就寝中みたいだ。んー心なしか顔色がすぐれないようだ。やっぱ病気かな?一応声を掛けて見よう。
『王様、王様、起きて』
「う、うぅ」
『王様、王様』
「うぅ……だ、誰じゃ?余を呼ぶのは?」
おっ!やっと起きた。
『王様、俺だよイナリだよ。あまり騒がず俺の話を聞いてくれるかな?』
「なっ!イナリ殿じゃと!?」
『そうそう俺だよ。イナリだよ』
「イッ、イナリ殿!どこじゃ?どこに居られる?」キョロキョロ
『ハハ…ごめん。今の俺は魂だけの状態だから多分、姿までは見えないと思うんだ。巷の噂で王様の調子が悪いって聞いたから会いに来たんだ』
王様に霊感とか有れば見えると思うけど、見えないって言う事は王様には霊感無いみたいだね。
「なっ!!……やはり……そうであったか……」ガックリ
『やはり??』
どゆこと?
「そうか、イナリ殿は死して尚 余の身を案じ、魂の姿のまま余のもとへ訪れてくれたのじゃな。そうかそうか……イナリ殿!余の事は何も心配は要らぬ!安らかに逝ってくれぬか!最後に余に会いに来てくれた事、真っこと心から感謝致す!」
『ちょっ!ちょちょちょっ王様‼︎ まってまって!全然話が見えないんですけどっ!?俺の説明不足もあるけど俺はしっかり生きてるって!生きてるから!魂の状態で訪れたのは幽体離脱って言う俺の特殊能力なんだってっ!』
「なっ!なんと‼︎イナリ殿は本当に生きて居られるのか!?では、あの噂は嘘だと申すのか?」
『ん?噂?何それ?』
噂を聞きつけて来たのは俺の方なんだけど?他にも噂があるの?
「ひとつ聞いて良いかのイナリ殿?」
『ん?なんだい王様?』
「イナリ殿は以前、隻眼の賢者もイナリ本人だと申しておったが事実かの?」
『あーそうだぜ。隻眼の賢者も俺本人だぜ。それがどうしたの?』
「ふむ。噂と申すのは1週間程前に来た吟遊詩人の詩なのじゃ」
『吟遊詩人の詩?』
俺は王様から詳しい話を聞いてみた。――なんと!その話には吟遊詩人の詩によるものらしい。
この国にとって英雄イナリは絶大な人気が有るとか!(ヒィー恥ずかし)俺が王様に隻眼の賢者も俺って言うのをバラしているから(国民にはバラしてないようだ)吟遊詩人の詩、つまり【英雄イナリ】【隻眼の賢者】の活躍の詩をいち早く国民に提供出来るように手配していたのだが……あの一件、勇者とのバトルの一件での話で《隻眼の賢者は獣人の国を護るべく勇敢にも悪しき勇者と闘い死んだ》と吟遊詩人の詩にあったようだ。
なるほど、確かに言われて見れば隻眼の賢者はあの時に……
ってか、ついこの前の出来事がこんなにも早くランバー国へ流れるとは想像してなかったな、吟遊詩人組合の組織力ってスゲーな。
王様もヨハンの爺さんと同じく元々心臓が悪かったようだが隻眼の賢者の死を聞いてショックで倒れたようだ。んーなんか悪い事をしたかな。
そして隻眼の賢者とイナリが同一人物と知るバカ息子たちがイナリの名を汚さない為に【英雄イナリ】の名を騙る輩が出ないよう新たに法を制定しんだって。
隻眼の賢者=イナリ=俺の死亡と言う事でカン違いしちゃったんだな。
王様には俺が本当に生きてるって信じてもらえるよう、ちょっと話が長くなるけど王様に獣国での出来事を詳しく話して納得してもらった。
「では本当にイナリ殿は生きて居られるのじゃな?」
『マジマジ。マジで生きてるって』
「今は何処に居られるのじゃ?」
『あーそれね、誰のせいとか誰が悪いとかじゃ無いけど、今この城の地下牢に入れられてるんだ』
「なっ!なんじゃと!?」
『できたら、すぐにでも出たいんだけど?王様ぁ〜なんとかできないかな?』
「そういう事なら任せられよ!準備が出来次第イナリ殿を牢から解放に行くでな!」
『王様!急に起きて大丈夫なのか?』
「大丈夫じゃ!何か有ればイナリ殿に治してもらうでのファッハッハ!」
『ハハ!じゃあ俺は先に牢に帰ってるから解放よろしく!』
「うむ!任せられよ」
ハハ!王様って、さっきまで顔色悪かったけどヒーリング掛けてないのに急に元気になっちゃったよ。
さぁーってと、俺もサッサと肉体に戻らないと本当に還らぬ人になっちゃうからね。